【特集】「市販化されるべきだったコンセプトカー」を振り返る(前編)
モーターショーのブースで輝きを放つコンセプトカーは、可能性はあるがまだ実現されていないデザイン、テクノロジー、パフォーマンスを我々に垣間見せてくれる。だが、その役目が終わると、他の試作車や実験車と共に、倉庫で埃を被りながら余生を送る、あるいは解体されて破棄されることになるのが世の常だ。

我々もこれまで多くのコンセプトカーを目にしてきたが、その中には心から市販化を願ったクルマもあった。非常にクールなクルマもあったし、単にメーカーが時機を逸したため生産化されなかったクルマもあった。そんな忘れられたコンセプトカーにもう一度、光を当ようというのが今回の企画だ。

Concept cars that should have been built
ジャガー「C-X75」(2010)
非常に速くて美しく、革新的テクノロジーを備えたC-X75は、自動車業界におけるジャガーの地位を押し上げることができたかもしれない。そして、かつて世界トップ・レベルの速さを誇った「XJ220」の跡を継ぐことができたことはずだ。ジャガーの上層部はそれを分かっていたので、250台の限定生産を決め、それに相応な約1億円前後という価格を設定した。

しかし、その後も不況が続く世界経済の影響を受け、ジャガーはC-X75の量産化をキャンセル。裕福なエンスージアストにいつかC-X75を所有することができるという希望を与えた直後のことだった。

ところがそれから数年後、C-X75は思わぬ形で我々の前に再び姿を見せる。2015年に公開された映画『007 スペクター』で悪役のMr.ヒンクスが運転し、ジェームズ・ボンドのアストンマーティンとカーチェイスを演じたのだ。ジャガーはこの撮影のために、スタント用も含めて7台のC-X75を製作したが、その中身はプラグイン・ハイブリッドのコンセプトカーとは全く違うものになっていた。

Concept cars that should have been built
スバル「B9スクランブラー」(2003)
スバルが2003年の東京モーターショーで発表した「B9スクランブラー」コンセプトを見て、マツダの首脳陣は黙ったと言われている。このクールなオープントップ・スポーツカーは、マツダ「ロードスター」のライバルとなることを目指して登場しては消えていった数多いクルマの1台だ。だが、スバルがそれらの多くと違うのは、同社得意のAWD(全輪駆動)技術を採用していたことである。しかもそのパワートレインは、街中などの低速域では出力100kWの電気モーターのみで走行し、高負荷時にはこれを水平対向4気筒エンジンがアシスト、高速走行時にはエンジンによる駆動に切り替わるというユニークなハイブリッド・システムを搭載していた。

アルファ ロメオからやってきたアンドレアス・ザパティナスがデザインを手掛けたB9スクランブラーは、スバルの次のデザイン言語を示すという役目を果たした。しかし、スバルがB9スクランブラーの市販化を真剣に検討するような姿勢はほとんど見られなかった。2005年にスバルはSUVの「トライベッカ」でB9の名前を復活させ、2012年に「BRZ」でコンパクト・スポーツカー・セグメントに参入した。


Concept cars that should have been built
ルノー「フィフティ」(1996)
ルノーは4CVの誕生50周年を記念して、このフィフティを単にレトロ・スタイルのデザイン・スタディとして製作した。後から考えてみると、ルノーはフォルクスワーゲン(VW)「ニュー・ビートル」の購買層を狙って、フィフティをすぐさま市販化するべきだった。このスタイリングのまま、エンジンをフロントに変更し、既存モデルのプラットフォームやドライブトレインを流用すれば、ドイツのライバルに対し機先を制することができたかもしれない。


Concept cars that should have been built
アウディ「クワトロ・スパイダー」(1991)
AWDでミドシップ・エンジンのアウディ「クワトロ・スパイダー」コンセプトは、1990年代にはまだ存在していなかった「R8」の前身と言える。すぐにでも量産できそうなボディの下には、最高出力172psを発生する2.8リッターV型6気筒エンジンが搭載されていた。R8ほど速くはないが、コンパクトで機敏なスポーツ・クーペであったはずだ。

このクアトロ・スパイダーは、アウディのカタログに掲載される直前で、生産計画部による目標設定販売価格10万ドイツマルク(ちなみに1991年のレートでは約814万円)に達することができなかったため、市販化はキャンセルとなったと、後に内部関係者が明かしている。


By AUTOBLOG STAFF
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

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