【試乗記】ホンダ「NSX」2019モデル 誰もが乗れるスーパースポーツを目指して再び進化
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ホンダのスーパースポーツ、「NSX」の2019年モデルが発売された。2016年8月に発表以来、2年目での商品改良だ。短時間ながら試乗会で触れることができたのでその印象をレポートする。

◇エボリューショナルNSXの誕生
2代目NSXの日本での年間計画販売台数は100台。この2年間で約400台を受注したということなので、予想の倍と好調だ。今回の改良では初代NSXが持っていた"誰もが乗ることができるスーパースポーツ"というコンセプトをより強調する方向が取られている。

本田技術研究所四輪R&DセンターNSX開発責任者の水上聡さんは、1990年にデビューした初代NSXについて、「人間中心のスーパースポーツとして世の中にホンダが示したモデル」とし、「今振り返ると、先進的なコンセプト。今のスーパースポーツはどのクルマもその方向だ」という。確かに例えばイタリアやドイツのスーパースポーツカーは実はとても乗りやすく、そこを目指して開発されているので、そこに間違いはなかったということだ。

Honda NSX
この思いは2代目NSXにも引き継がれ、そのヘリテージである人間中心のスーパースポーツを持ちながら、「いち早く電動化技術を使い、新しい走りの体験という価値を提供。それがニュースポーツエクスペリエンス二代目NSXだ」とした。そして、「NSXは操る喜びを進化し続ける。それが使命であり宿命だ」とし、19モデルは「人間中心のスーパースポーツとしてダイナミックとデザインの両面を磨き上げたエボリューショナルNSXだ」とした。

そのためにまずダイナミック面では、「ドライバーとクルマの一体感をさらに上げるために、操作に対するクルマの動きとつながりの良さを求めた。また日常からサーキットドライブも含めた非日常を含めて、そのポテンシャルを上げるために限界域の高さとコントロール性の向上を行った」という。さらに、「その個性を表現するデザインについてもテコ入れした」と説明した。

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◇より低く、よりワイドに
そのデザインは、より低くよりワイドに見せるため、フロントグリルをボディと同色化。フロントとリアのバンパーのメッシュパーツをグロス化することで、ボディからの繋がりと質感の向上を表現。またカーボンパーツにおいてもグロス仕上げすることでスポーツカーとしての佇まい、質感を向上させた。

また、サーマルオレンジパールという新色を追加。これは初代のイモラオレンジパールのインスピレーションを受け、NSXのエキサイティングな部分を表現するという意味で、高彩度で高明度、より明るい新しい色が提案された。インテリアはインディゴというブルー系の内装を追加。セミアリニンレザーとアルカンターラの組み合わせのシートにより、「静寂を表し、運転に集中できる空間を提案した」と水上さんはいう。

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◇タイヤまで変更し乗りやすさとコントロール性を追求
ダイナミック面では、「限界の高さとコントロール性を含めたポテンシャルを上げること、そしてドライバーとクルマとの一体感の向上に向けて、クルマの姿勢を整え、また、走行軌跡を綺麗にコントロールすることを目指して開発を進めた」と説明。

NSXのキーテクノロジーとなるスポーツハイブリッドSH-AWDは、フロントのツインモーターユニット、リアのダイレクトドライブモーター、3.5リッターV6エンジン、9速デュアルクラッチトランスミッションから構成され、トータル出力はシステム全体で581psと変更はない。

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このパワーユニットをベースに駆動力特性を変更することで、ドライバビリティを向上させた。まずひとつは加速時の一体感を得るためにドライバーのアクセル操作に対して、外乱等があってもピーキーに動かず、アクセルに集中してコントロールできるようになった。またコーナー立ち上がりにおいても、トラクションをアクセルのオンオフで自在にコントロールをしながら加速させるという、よりリニアなアクセルに忠実な特性とされた。

また旋回性能においては、安定性とコントロール性を上げるためにタイヤも変更された。コンチネンタルスポーツコンタクト6のパターンをもとに、ブロックのアウター側の剛性を中心に上げるとともに、コンパウンドでの最大横力をアップさせることでのパフォーマンスを向上。それらをNSX専用チューニングで作り上げたものだ。

これらの出力特性とタイヤ特性をより生かすために、各部のサスペンションの基本性能も向上させた。人間の感度の高いロールに着目し、前後のスタビライザーの剛性を上げ、またリアをしっかりさせたいということからリアコントロールアームブッシュの剛性をアップ。かつリアベアリングハブの剛性を上げることで、「各部の剛性をきっちり使い、なおかつタイヤも生かすというサスペンションの基本性能の進化を図った」と述べる。

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アクティブダンパーシステムは、従来通り磁性流体式を使用しながらも、初期のロールの部分、フラットライドな姿勢を保つ部分、路面に追従させる部分の減衰力特性と、各減衰領域を見直した。初期のロールにおいては前後のスタビライザー剛性を上げることで、ロール剛性を高め、低速域の減衰については逆に低く抑えた。フラットライドにおいては、モーションコントロールする制振領域でフラットライドを追求できるような減衰を付与。また路面追従の領域においては、遮断領域の減衰を抑えることで路面追従性を向上させた。

そして曲がる領域では一体感のあるステアフィールを進化。電動パワーステアリングの制御パラメーターを最適化することにより、操舵初期の切り始めはスムーズに切りやすく、切っていくにつれて手応えが増しダイレクト感を表現。メリハリと一体感のあるステアフィールへと進化させた。

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インテグレーテッドダイナミックシステムについても最適化され、11個のパラメーターを制御することによって、クワイエットモード、市街地・スポーツモード、スポーツプラス・ワインディング、サーキットを含めたトラックというシーンに応じた4つの車両特性を作ることができる。クワイエットモードは、EV走行を継続して走れるということはもちろんのこと、滑らかなアクセル操作と快適性を向上させることで周囲に配慮した走行が可能となる。スポーツはデフォルトで、市街地や高速道路での軽快なハンドリングと、フラットライドな乗り心地を体感できるモード。スポーツプラスは、郊外のワインディング等でのドライバー操作に対するリニアリティを追求し、"意のままマックス"なモードだ。そしてトラックモードは、限界域の高さとコントロール性の向上によりサーキットでも楽しんでもらえるモードになっている。


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◇乗りやすく、きめ細やかな心配り
このように、細かいところまでこだわり変更された19年モデルのNSXで走り出してみよう。今回も短時間であったことから、基本的には第一印象ということをお断りしておく。

テスト車はサーマルオレンジパールにインディゴが組み合わされた新仕様だ。若干大柄だが、それでも新色によりしまった印象を与えてくれる。

ドアをゆっくりと開け、室内に乗り込むとインディゴの内装色は説明のとおり落ち着いた印象を与えてくれる。センターにあるナビ画面の右手に赤いスタートストップボタンがあり、それを押し込むことでエンジンはスタート...するかと思いきや、このクルマの場合はそれで準備完了、つまり、EVでスタートするのだ。ホンダのハイブリッドモデルは全て共通のシフトレイアウトで、丸いD/Mボタンを押すことでドライブモードが選択され、スタートできる。最初のタイヤの半転がり程度は電気で走り始めるが、すぐにエンジンがかかる。そのときの違和感は全くといっていいほど感じられない。さらにハイブリッドでよく感じられるブレーキング時の違和感もないのはスポーツカーにとって非常に重要なことだ。

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そういったことを考えながら、しばらく走らせてふと気づいたことは、とても乗りやすいということだ。確かに目線は低く、エンジンサウンドもそこそこ聞こえてくるが、普通に走らせている分に気を遣うことは何もないといっていいだろう。さらに、乗り心地がいいことも驚きだ。このハイパワーを受け止めるためにしっかりとした足回りなのだが、直接身体にショックを伝えてくることはなく、高いボディ剛性により、しっかりとサスペンションが機能していることがうかがえた。例えば同じシーンをランボルギーニ アヴェンタドールで走る場合には、乗りやすいクルマではあるものの、よりスパルタンであることから、よし乗るぞと覚悟をしてからドライビングを始めるのだが、NSXの場合には、気楽にちょっとそこまでと乗ることが可能なのだ。もちろん、どちらが良いかというのではなく、目指す方向が違っているということだ。

さて、せっかくなので少しアクセルを強く踏み込むと、スポーティでわくわくするエンジン音とともにぐいぐいと加速が始まる。そこでも荒々しさは感じられず、極めて洗練された印象だ。ワインディングに足を踏み入れても、その印象は変わらない。特にコーナー進入時から出口で一気に加速体制に入るまでの姿勢が常に安定していてアクセルコントロールがダイレクトにクルマに伝わり、ドライバーの意思に素早く反応してくれるのでその楽しさは倍増する。

そういったときにステアリングフィールが曖昧だとがっかりしてしまうものだが、今回の改良もあり、思った通りのコントロールが可能だった。

その一方、パドルシフトの操作感が非常に安っぽく感じ、プラスチッキーなフィールは少々興ざめであった。例えばアルミなどを使い、触感や操作感にもこだわったフィールを望みたい。

さて、NSXの特徴のひとつインテグレーテッドダイナミックシステムを試してみよう。ナビ画面下の丸いダイヤルで操作するのだが、クワイエットモードではEV走行が可能なので、深夜や早朝の住宅街での走行では気を使わなくて済む、非常に便利なポジションだ。デフォルトはスポーツで、スポーツプラスにスイッチすると、足回りが大分固められ、エンジンサウンドも変化。荒々しさが増してくるので走りを楽しみたい場合には好ましいが、街中では少々スパルタンすぎるきらいもあった。

Honda NSX
撮影をしながらワインディングや街中を走らせたNSXの印象は、まさに万人向けのスーパーカー、皆が乗れるスーパーカーであった。確かにハイパワーなのできちんと手綱を引き締めておかないと危険なシーンも当然出てくるので、いきなり初心者が乗るというのはお勧めしない。しかし、そういう人が何らかの理由で乗らなければならない場合でも、あれ?と思うくらい乗りやすいと思うだろう。しかも、手練れが乗ったとしても十分に堪能できるクルマであり、まさにNSXが目指している世界観が表現されていると感じた。さらに、インテグレーテッドダイナミックシステムは日本的な細やかな制御がなされ、日本車ならではといえるだろう。もし、もう一歩望むなら、それぞれを個別でセッティングできる、例えばエンジンサウンドは大人しく、でもステアリングや足回り等はスポーツプラスでなどができるポジションがあればなおよいだろう。


文・写真:内田俊一(text & photo by Shunichi UCHIDA)

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