【論説】自動車業界でも有能な経営者の1人、カルロス・ゴーン氏が残したもの
「ボブ・ラッツは(中略)日産のオペレーションを遂行するのは、ルノーにとって、50億ドルをコンテナ船に投じ、その船を大海の真ん中に沈めるようなものだとの見解を語った」

カルロス・ゴーン氏は、2004年末に米国で出版された著書『SHIFT: Inside Nissan's Historic Revival』に、このように記している。

この見解から2つのことが分かる。

まず、それが自動車業界の重鎮であるラッツ氏の「間違いは時々あるが、決して迷わない」というモットー通りであったこと。

そして、財政破たん寸前だった日産を(ルノーや最近では三菱アライアンスを結びながらも)一線級の自動車メーカーの1つへと導いたゴーン元会長が、優れた経営者であったということ。

1999年、ゴーン元会長は「日産リバイバル(復興)プラン」と名付けた計画を打ち立てた。それは「日産リサシテーション(蘇生)プラン」と呼んでもいいほどだった。状況はそれほど悪かったのだ。

そして今、ゴーン元会長は財政上の不正に関する罪に問われ、法的な問題の渦中にいる。この一件がフォルクスワーゲン・グループで起きた不祥事の規模に匹敵すると示す兆候はない。しかしそこには違法行為があった。そう違法行為だ。

これでゴーン元会長のキャリアも終わることになりそうだが、御年64歳、この四半世紀近くを主に飛行機の中で過ごした人物が、舞台を去るにはいい潮時なのかもしれない。同氏の次の動きについてはまだ分からない。それが法廷になるのか刑務所になるのかも。

だが、2000年代初期に破綻を防ぐために特効薬が必要だった日産とルノーの変革におけるゴーン元会長の功績によって(フランス政府が下支えするのに最善を尽くしたのではないかと思う人もいるにせよ)、同氏はほぼ間違いなく、自動車業界史上最も有名な経営者と言える人物となった。

ゴーン元会長はフランスと日本の両国で工場を閉鎖し、日産の"系列"と呼ばれるグループ企業のネットワークを解体するために尽力したが、それは当時、全く想像もできないことだった。

同氏は、「200憶フラン削減計画」のように、その名前の中に高い目標を持った計画を打ち立てた。そして、その計画の発表に伴い反発が起きようとも、彼の支持者たちと目標達成のために協力し合った。

ゴーン元会長は『SHIFT』の中で、次のように回想している。「『ゴーンは感情的だ。どうかしている。ルノーでは、なし得る最も保守的な目標を設定したからこそ、確実に達成できたことを彼は知らないのか?』と言う人もいました。このような考えに対する私の答えは、『求めた分しか得られない。ハードルを目一杯低く設定すれば、低いレベルの仕事しかできない。でもハードルを高めに上げれば、それだけ、より良い結果を生み出すチャンスを得られる』というものでした。私は馬鹿だと思われていたでしょう」。

彼は馬鹿ではなかった。

ゴーン元会長は簡素化へと突き進み、明確な指標を作り上げた。組織を通して部門の枠を越えたチームを編成し、状況が悪い方へ行った場合に責任追及が起こらないようにした。収益性を上げるために、危機感を持つために、戦略とそれを遂行するための目標を作り出すために、疲れを知らないかのように、ハードに働き続けた。

まだ何か見落としがないかと『SHIFT』を読み返した筆者は、ある一文に心を打たれた。「当然の結果というものは存在しない、そして勝負は決して終わらない」


By GARY S. VASILASH
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

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