【試乗記】フォルクスワーゲンのコンパクトミニバン「トゥーラン」にもディーゼル搭載。1000km走ってわかったことは主張しない好ましさ
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フォルクスワーゲン(VW)の7人乗りのミニバン「トゥーラン」にディーゼル・モデルの「TDI」が10月1日より追加された。これによりVWは日本市場においても「パサート」のセダンとワゴン、SUVの「ティグアン」とともに、ほとんどのボディ・バリエーションでディーゼルが揃うことになった。日本に導入されるトゥーラン TDIのグレードは「コンフォートライン」(369万9,000円)と「ハイライン」(407万9,000円)の2種類で、そのうちのハイラインを1,000kmほどテストに連れ出すことに成功したので、その印象をレポートする。

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■日本のディーゼル市場は拡大基調

試乗に出る前に現在のディーゼル市場の状況を見てみたい。ヨーロッパ市場は全体でおよそ45%、ドイツ国内でも約39%がディーゼルで占めている。一方電動化車両に目を向けると、ピュアEVだけではなく、PHEV等のハイブリッドを含めてもドイツ国内では4%に過ぎないのが現状だ。つまり、これからも各メーカーは内燃機関の開発に力を入れていかなければいけないのだ(数値はいずれもACEA-European Automobile Manufacturers' Association調べ)。

確かに今年に入り欧州でのディーゼルはマイナス基調だ。この点についてフォルクスワーゲン グループ ジャパン広報部製品広報の池畑浩氏は、「ヨーロッパ、特にドイツなどではガソリンの新燃費基準が施行になったので、その(施行)前にガソリン・モデルを中心に販売されたことが挙げられます。このような外的要因でディーゼルの比率が下がっていることもありますので、まだ比較的多くの需要があるというのが実状です」と分析する。

一方日本市場ではどうか。クリーンディーゼル協議会の資料を見ると、登録車と軽自動車の合算とそれに占めるディーゼルの比率は5.3%。輸入車に限ると約22%となる。昨年は20年ぶりに30万台を超える輸入乗用車販売があり、それを大きく支えたのがディーゼル・モデルともいえるだろう。現在輸入各ブランドを合わせると60モデルぐらいのディーゼルが導入されており、日本市場に限ってみればディーゼル市場はまだまだ堅調に推移していきそうだ。

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■走りと安全性、そして経済性を兼ね備えたモデル

さて、トゥーランは2004年から日本導入が開始され、これまでの5万2,000台が販売された。VWにはサイズがより大きい「シャラン」もあるが、こちらの方が購入年齢層は若い。その理由はスライドドアであることから、小さな子供がいるファミリー層が購入しているからだ。従って、トゥーランはヒンジドアであるため、少し大きな子供がいる層が購入しているという。

これらのユーザー層を鑑み池畑氏は、「ファミリー層の需要が多いので、クラストップレベルの安全性や積載量(137L~1,857L)は大きな購入動機となるだろう。また日々の燃料代を含めたランニングコストも低く抑えられる。さらに、『ゴルフ』譲りのしっかりとした走りが楽しめるクルマであることに加え、ディーゼルらしいトルク豊かな走りもが加わったのがこのトゥーラン TDIだ」とその魅力を語った。

今回投入されるトゥーラン TDIに搭載されるパワートレインは、2.0リッター直列4気筒ディーゼルターボで、最高出力150ps、最大トルク340Nmを発揮。これはパサートやティグアンに搭載されたものと同じEA288型で、高圧と低圧のEGRと尿素、そしてディーゼルフィルターを採用することでポスト新長期に対応している。なおパサートの190ps、400Nmに対しては若干パワー、トルクとも抑えられている。

組み合わされるトランスミッションは湿式6速DSGを採用(ティグアンは湿式7速DSG)。JC08モードは19.3km/Lを記録している。

安全運転支援システムとしては、渋滞時追従支援システム"Traffic Assist"やレーンチェンジアシストシステム"Side Assist Plus"、駐車支援システム"Park Assist"、荷物を積み込む際に便利な"パワーテールゲート(挟み込み防止機能、"Easy Open"機能付)"などが採用(コンフォートラインは一部オプション)され、ミニバンユーザーの疲労軽減・安全性を向上しているという。

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■少し古いエンジン故の欠点

しっかりとしたドアを開け室内に乗り込むと、他のVWと同様の景色が広がる。たとえそれが「ポロ」であろうと「ゴルフ」であろうとスイッチ類の配置を含め基本的には変わらない。ただ唯一トゥーランが他のモデルと違うと感じさせるのは、ヒップポイントが高めなことと、ステアリングが若干アップライト気味であることだ。当初このステアリングの位置は気になったものだが、しばらく運転するうちに自然と慣れてしまったので、それほど気にする必要はないだろう。

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センターコンソール右側にある、しっかりとしたクリック感を持つエンジンスタート/ストップスイッチを押し込むと、カラカラというディーゼル独特の音とともにエンジンはスタートした。外で聞くとなかなか大きな音をしているが、室内ではそれほど気になることはない。

ゆっくりとアクセルを踏みスタートをすると、340Nmというトルクほどの力強さがそれほど感じられない。そこでもう少し強めに踏み込んでやると、しっかりと回転を上げながらディーゼルらしいトルクフルな加速が開始された。ここで気になったことは2点。ひとつはドライビング・ポジションだ。ステアリングに関しては前述したとおりだが、アクセルの角度が悪いため、足首が疲れやすいこと。そしてもうひとつは、これは致し方ないのだが、エンジンの基本設計が古いので、最新のディーゼルを知っているものとしては少々雑な、ざらついたフィーリングを感じた。また、出足に関しては6速DSGではなく、7速DSGを採用し、1速のギア比を適切化すれば解決するものと思われる。

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■高いボディ剛性と良く出来たシート

さすがはフォルクスワーゲンと感じたのはボディ剛性の高さだ。開口部が多く大きいミニバンタイプでは、どうしても剛性が弱くなりがちだが、トゥーランは決してそういうことはなく、がっしりとした印象をドライバーや乗員に与え、安心感をもたらしてくれた。

これは、高速走行時でも同様で、この剛性から直進安定性も高く、フロア周りからのロードノイズの侵入も少なく快適であった。この快適さに貢献しているのがシートだ。見た目は普通なのだが、座ってみると硬すぎず柔らかすぎず、ちょうど良い"塩梅"で、名古屋往復くらいは軽くこなす優秀なものであった。

一方、足回りは若干固めで、ちょっとした段差などでの突き上げを感じた。当然フル乗車も想定しセッティングされているが、それでもかなりの固さなのだ。これはテスト車が1,000kmにも満たない車両であったことは考慮しなければならないが、履いていたタイヤが215/55R17(コンチネンタル・コンチプレミアムコンタクト)であったので、コンフォートラインの205/60R16であれば、かなり印象は変わったと思われる。

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■優秀なアダプティブクルーズコントロール

高速利用時は積極的にアダプティブクルーズコントロール(ACC)などを利用した。レーンキープや追従機能はスムーズで安心して利用できる。特筆すべきは前方車に追いつき、走行車線から追い越し車線へ出ようとウインカーをつけると、わずかだが加速体制に入り、車線変更がスムーズに行われるようアシストする点だ。これまではどうしてもそういったときに2テンポぐらい遅れる傾向にあり、ついつい自分でアクセルを踏んでいたものだが、トゥーランではそういったことがなくなったのは歓迎したい。さらに前方車が別の車線に移動した際、その前にクルマがいると、おとなしく加速し、他のACC搭載車のように急激に加速しない点も評価に値する。

ただし、前述したパワーとトルクに関しては、1人乗車であれば過不足ないのだが、それでも談合坂などの長く若干勾配の強い坂道では、より深くアクセルを踏み込み、場合によっては1速落として登るようなこともあった。従って4人以上乗車した場合には高速では少々アンダーパワーを感じてしまうかもしれない。

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■シートレイアウトは重く少々大変

使い勝手に目を向けると、この点に関してはやはりというか想像通りというか、日本車にはかなわない。シートレイアウトなどはよく考えられており、2列目は3人分のシートそれぞれが倒せるなど様々なレイアウトが可能となっているが、いかんせんその操作が重く、はっきりいって操作が面倒になってしまった。確かに剛性や座り心地を考えるとシートそのものも重くなり、それに伴いそのシートを動かすために力が必要になることはわかる。しかし、そこを上手く力をかけずに操作ができるようにならなければ、さすがに日本では受け入れられないだろう。

また、ナビに関しても苦言を呈したい。これはアウディも共通なのだが、目的地のセットそのものが非常にやりにくく、音声入力で成功すれば一番早いが、そうでない場合は、複数の検索方法から試さねばならず、かつ、そのいずれもが手間のかかるものなので、よりユーザーの視点で使いやすさを検討してもらいたい。また、指でのタッチコントロールが可能なのだが、例えば地図をピンチアウトして拡大しようとしても、スケールは変わっても実際の画面は変わらないなどのトラブルがあった。

最後に燃費についてお知らせしておこう。混んだ市街地では12.9km/L、郊外路は18.3km/L、高速では19.3km/Lであった。高速で20km/Lに届かなかったのは残念だ。せめてもう2割ほど伸びてほしいと感じた。

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■クルマが主語ではない、控えめなクルマ

トゥーランを3日間、およそ1,000km使ってみて、その印象は、全てにおいて穏やかなクルマであり、当然それはクルマの性格に合っているものといえる。積極的に走ろうというものではなく、高速を家族とともに淡々と移動し、行った先で元気よく遊び、帰路は遊び疲れた体を良く出来たシートに身を任せ、再び淡々と帰宅するという、クルマが主語ではなく、家族とのお出かけが主語で、そこに影になりそっと寄り添い支えているクルマがこのトゥーラン TDIだと感じた。


Text/Photo:内田俊一(Shunichi Uchida)

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