【試乗記】スバル「アセント」 3列シート・クロスオーバーの熾烈な市場で雪辱を期す
新型スバル「アセント」は"マリガン"と呼ぶに相応しい。アマチュア・ゴルファーたちが、この言葉を使うのを聞いたことがあるかもしれない。そう、マリガンとは、ゴルファーがティーショットをミスした時にもう一度打つことが許されるルールのことだ。しかし、スバル史上最大のクルマであるアセントの場合、この日本の自動車メーカーが、米国でもう一度、3列シートのクロスオーバーを成功させるチャンスを得た、ということを意味している。

スバルの社員たちは、あの人気がなくて売れ行きも悪かった「トライベッカ」の大失敗を忘れようとするのではなく、その経験を教訓として念頭に置いてきたのだろう。そしてスバルのエンジニアとプロダクト・プランナーは、今度は自信を持って渾身のティーショットを放ったのだ。たとえそれがペブルビーチのような有名なゴルフ・コースではなく、米国の郊外に数千は存在している手頃な料金のコースの1つだったとしても。


アセントはクロスオーバーというパズルにおいて全てのピースが正しくはまっている。7人乗り(オプションで8人乗りも可能)、広大な荷室、標準装備の全輪駆動、このクラスとして適切な推定燃費。しかし、アセントはスバル車だ。目標を達成する方法は、多くのライバル車とは大きく異なる。ホンダ「パイロット」トヨタ「ハイランダー」に見られるような、自然吸気V型6気筒エンジンの代わりに、ターボチャージャー付き水平対向4気筒エンジンが搭載されている。実用性を少しばかり犠牲にして人目を引く流麗なスタイルをまとう代わりに、四角くて背が高い、つまりちょっと退屈なスタイリングが採用されている。


個人的にアセントは、「アウトバック」の形をした風船を膨れませ過ぎたように見える。特大のグリルの両側には、フロント上部に大きなヘッドライトが並び、その下にはマットブラックの樹脂で成型されたダミーのエアインテークが備わる。特に面白みのない、堅実なデザインだが、初期型のB9トライベッカの顔が悲惨な結果を招いた後となれば、当たり障りのないデザインで失敗する方がまだマシだ、とスバルが考えたのも無理はない。確かに強い血縁関係を感じさせるアウトバックとよく似ているが、違いもまた多いので、ショールームでこの2台を見て混乱することはないだろう。


アセントのボディ側面には、面白い折り目や曲面があり、これをプレス加工する前にはどれほど大きくて平面な金属板だったのだろうかと興味がわく。1990年代半ばに初代アウトバックに使用して以来、人気となり広まっていった樹脂製のアンダーボディ・クラッディングを、今回スバルが控えめにしたことは褒めるべきだろう。ガラスと金属がほどよい比率で配備されているので、室内は開放感があり明るい雰囲気だ。3列目シートには、大きくて四角いリア・ドアから簡単に乗り込むことができる。


アセントの後方にまわって見ると、左右の大きなテールライト・クラスターを水平のクロームストリップがつないでいる。垂直に立った後部ウィンドウのお陰で、3列目シート後方の荷室を最大限に活用することができる。ボディの両サイドには樹脂製のクラッディングが装着されなかったが、後部バンパーはプラスチックで覆われてしまっている。しかし、その中央部分は、オプションとして装備されるトレーラー・ヒッチを上手く隠すことに成功している。


運転席に座ると、アセントのパッケージングには、スバルのカーデザインに対する実用主義が反映されていることが分かる。すべての計器類は見やすくて、一目で確認できる。ノブやボタンは、ステアリング・ホイールやセンター・スタックに備わる物理的なボタンも、インフォテイメント・システムのタッチスクリーンに表示されるソフトウェアによる画面上のボタンも、どちらも分かりやすく操作しやすい位置にある。だが、アセントでは快適なドライビング・ポジションを見つけるのに、普段よりも時間がかかってしまった。結局、通常よりもステアリングをダッシュボードから離れた位置に引き出し、シートの背もたれは起こさなければならなかった。我々はどうにか良いポジションが得られたが、背の低いドライバーは、身体が大きなドライバーよりもドライビング・ポジションを決めるのが大変ではないかと感じた。


同クラスのライバルであり、ベストセラー車でもある2台、ホンダ パイロットとトヨタ ハイランダーと比べると、アセントはまさにスペック上は「理想通りのサイズ」という感じがする。足元の広さや背もたれの角度調整ができる2列目シートには、実際に身長180cmの人が乗っても十分な余裕がある。上級グレードであれば、2人用のキャプテンシートか3人掛けベンチシートのどちらかを選ぶこともできる。どちらも価格は変わらないので、本当に必要な方を選べばよい。我々は両方とも乗ってみたが、快適性は同等だと思いながらクルマを降りた。


アセントの3列目は、他のライバル車に比べればマシだ(特にトヨタ ハイランダーの3列目は極度に狭い)。2列目の乗員がシートを少し前にスライドさせれば、身長180cmの乗員でも背もたれに体を預けて十分に足を置けるスペースがある。ちょっとの時間であれば、標準的な体格の大人2人が乗っても大丈夫だが、ずっと頭部を天井にこすりつけてしまうことになるだろう。現実的に考えれば、3列目は子供が座る方が適している。たくさんのカップホルダーやタブレットホルダー、USB充電器などが装備されているから、ロングドライブもあっという間に感じてしまうだろう。キャビン内にはカップホルダーがなんと合計19個もある。その数を聞いて最初は「馬鹿げている」と思うかもしれない。でも後に、これがカップだけでなく、他にもいろいろなアイテムを置くことができるとても便利なホルダーであることが分かってもらえるだろう。



7人乗りクロスオーバーを購入しようとする人たちは、走行性能を最終的な購入の決め手にすることは少ないだろう。しかし、スバルはアセントにも運転の楽しさを盛り込んでいる。ステアリングは予想通り軽い(「運転の楽しさ」に関してはクラスNo.1基準のマツダ「CX-9」よりも、はるかに軽い)。しかし、ステアリングのギア比はクイックで、十分に道路の感触を伝える。変な反力は感じられなかったが、濡れた路面のコーナーを走り抜けたときに、タイヤの滑りを感じた。全体的に、アセントは確かな安定性と信頼感が感じられる。主に家族や荷物を載せるためのクルマとして相応しいと言えるだろう。

アセントにはスポーツ・モードがなく、基本的な設定のままだ。だが、私たちにはそれで十分だった。これはスポーティなクルマではないのだから、たったひとつのセットアップを慎重に考え抜き、設定したことは理に適っている。荒れた舗装の路面でも乗り心地は快適だが、サスペンションがソフトでコーナーを抜ける時に揺れ過ぎるというわけではない。少なくともドライバーと助手席に1人だけ乗車していた際には問題なかった。



アセントのエンジンはたったひとつの種類しか設定がない。最高出力260hpと最大トルク375Nmを発生する2.4リッター水平対向4気筒ターボ・エンジンが、CVTとの組み合わせで4輪を駆動する。ホンダ パイロットやトヨタ ハイランダーのようなライバル車には、消費者がカタログを見て喜びそうな巨大なV6エンジンが用意されているが、実際にはスバルの4気筒ターボ・エンジンの方がパンチ力に長けている。その点をよく理解してもらおうと、スバルは独自のテストに基づく0-60mph(約96km/h)加速のデータを公開している。その加速を実際に検証することはできなかったが、スバルのデータが正しければ、アセントの0-60mph加速7.4秒というパフォーマンスは、パイロットには及ばないものの、V6搭載のハイランダーや日産「パスファインダー」よりも速いことになる。とはいえ、我々の試乗中にはエンジンにもたつきを感じ、ターボが回転を上げるまで一瞬待たされることが何度かあった。しかし、出力は十分だと感じながら試乗を終えた。

アセントと直接競合するクロスオーバーで、4気筒ターボチャージャー・エンジンを搭載しているモデルは他にもある。最も有名なのが2.3リッター「エコブースト」エンジンのフォード「エクスプローラー」と、マツダ CX-9だ。しかし、マツダは420Nmという強力な最大トルクを発揮する一方で、レギュラー・ガソリンでは最高出力227hpに過ぎず、250hpを引き出すためにはハイオク・ガソリンを入れる必要がある。そしてフォードには、アセントが誇る5,000ポンド(2268kg)もの牽引力がない。


私たちは実際に、5,000ポンドを少し下回るエアストリーム社のトレーラーをアセントで牽引させてみることができた。そして速度を上げたり下げたりしても、何の問題もないことが分かった。スバルの社内テストでは、アセントがV6エンジン搭載したほとんどのライバル車よりも、5,000ポンドの牽引中に優れた追い越し加速を発揮することが確認されたという。次に我々は駐車場にコーンを並べて、20mph(32km/h)を超える程度のスピードでスラローム走行を行った。数字を見ると遅いと思われるかもしれないが、突発的な状況...例えば目の前にパンクしたタイヤの残骸が現れてそれを避けるなんて場合を除けば、現実の路上でこんな走り方をする時はもっと遅いはずだ。いずれにせよ、荷物が正しく積載されたトレーラーやボートをアセントに括り付けて牽引するのであれば、最大5,000ポンドまでの牽引力で何の問題もないだろう。ただし、ベース・グレードのアセントにはオイル・クーラーが装備されていないので、2,000ポンド(907kg)程度の牽引でも立ち往生してしまう可能性があることは留意しておくべきだろう。

アセントには4気筒エンジンしかないために、購入をやめてしまうクロスオーバーの顧客がきっとたくさんいるはずだ。ラインナップに選択肢として6気筒エンジンがないことは、消費者が購入を躊躇するポイントの1つだし、スバルはアセントより小型のアウトバックにさえ、3.6リッター6気筒エンジンを用意しているほどである(ただし、このエンジンが次世代型アウトバックでは廃止されたとしても、それほど驚かないだろう)。十分な数の顧客が、排気量の大きな6気筒エンジンの代わりに4気筒ターボ・エンジンを受け入れるかどうかは、時が経ってみないと分からない。しかし、アセントを購入した人は、それが十分なパワーを提供することに気付くはずだ。


同様に、以前CVTトランスミッションで嫌な思いをしたため、アセントに試乗する気になれないドライバーも中にはいるだろう。競合車の多くは従来型のトルコン式オートマチックを採用しているとなればなおさらだ。不必要に回転数が上下したり、回転数が固定されている時に不快な騒音が続いたりなど、性能の悪いCVTのクルマを我々もずいぶん運転してきたので、その口をつぐみたくなる気持ちは理解できる。しかし、スバルはCVTが変速する際に、従来のオートマチックのように感じられるようなプログラミングを施すことでCVTの悪癖を解決しようとした。有段変速のトランスミッションを模した擬似的なギアを設定し、歯切れ良くシフトするようにあらかじめプログラムされているのだ。実際に走らせてみても、このトランスミッションはうまく機能し、快適なドライビング体験を邪魔することはなかった。これが自動的に行われるのが嫌なら、ステアリングの後ろに標準装備されているパドルシフトを使って、8段の仮想ギアをマニュアル・モードでシフト・チェンジすることもできる。

アセントのEPA(米国環境保護庁)による推定燃費基準は、街中8.9km/L/高速道路11.5km/L /複合9.8km/L (18インチ・ホイールの場合)となっている。これはアセントよりも2気筒多い6気筒エンジンのホンダ パイロットやトヨタ ハイランダーよりも0.5〜1km/Lほど低燃費だ。他のターボチャージャー付き4気筒エンジンを搭載するクロスオーバーと比較しても、アセントはCX-9に匹敵し、フォード エクスプローラー(街中7.6km/L /高速道路10.6km/L /複合8.9km/L )を簡単に打ち負かしてしまう(とは言え、エクスプローラーの方がパワーは上だが)。


ドライビング・テストの最終行程として、我々はオレゴン州の田舎にある採石場へとアセントを駆り出し、軽いオフロード走行と、スバルが「X-Mode」と呼ぶシステムのテストを行った。これは雪道や泥濘などトラクションの掛かりにくい場所で、自動的にスロットルやブレーキ、駆動力配分などを制御してくれる機能だ。下の動画でご覧の通り、我々はアセントで特にハードコアなオフロードを走破したわけではない(ジープ「ラングラー」なら全く問題にならない場所だ)。しかし、このクルマのオーナーは、遠く離れたキャンプ場まで行く過程の轍だらけの泥道や、雪で覆われた郊外の市街地を、何の問題もなく走ることができるだろうと確信した。事前に我々がアセントに期待していたよりも、はるかに荒れた地形でも走破することができたのだ。



スバルは、アセントを平均的な市場価格に設定した。ベース・モデルの3万2,970ドル(約375万円)という価格は、前輪駆動のホンダ パイロットよりも高いが、全輪駆動のパイロットに比べればかなり安い。この価格でも、プリクラッシュブレーキ、全車速追従機能付クルーズコントロール、車線逸脱抑制、ふらつき警報を含むスバルの「アイサイト」ドライバー・アシスト・パッケージが標準装備されている。Android AutoとApple CarPlayにも標準で対応する。ベース・モデルより1つ上位グレードの「アセント プレミアム」は3万5,170ドル(約400万円)で、8.0インチのインフォテイメント・スクリーン、後部座席用エアコンが装備される。3万9,970ドル(約455万円)の「アセント リミテッド」には、20インチ・ホイール、レザーシート、LEDヘッドライトなどが含まれる。最上級グレードの「アセント ツーリング」は4万5,670ドル(約520万円)で、特別なジャワ・ブラウンのレザー張りインテリア、ヒーター内臓ステアリング、冷暖房機能内蔵フロント・シート、アップグレードされたHarman Kardonオーディオ・システム、マット仕上げのウッド・トリムなどが追加される。

アセントには、販売で成功するだけの十分な性能が備わっている。急成長中の3列ミッドサイズ・クロスオーバー市場に参入し、多くの手強いライバル相手に勝負を挑もうとしているのだ。現在、クロスオーバーを買おうとする人の中に、あの悲劇的なトライベッカを覚えている人はほとんどいないだろうし、スバルは中・小型クロスオーバーでは全体的に成功を収めている。V6がないことを大目に見てアセントに試乗した顧客は、良い意味で驚くだろう。それはとても素晴らしいことだ。なぜなら、人生で1度目の失敗を経験した人が2度目のチャンスをものにするという話はみんな大好きだからだ。スバルが消費者を納得させ、マリガンで見事にナイスショットを決める可能性は高い。


スペック
エンジン:2.4リッター水平対向4気筒ターボ
最高出力:260hp
最大トルク:38.3kgm
トランスミッション:CVT
駆動方式:全輪駆動
エンジン位置:フロント
座席:2名+3名+3名
燃費:街中8.9km/L/高速道路11.5km/L /複合9.8km/L
ベース価格: 3万2,970ドル(約375万円)から
テスト車両価格: 3万9,970ドル(約455万円)

評価:7点
実用的でパワフルな4気筒ターボ・エンジンを搭載するアセントは、スバリストのための3列シート車だ。だが、他のブランドに対しても目を開けば、魅力的な選択肢は他にも存在する。

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