日本での知名度は皆無に等しいが、旧東側諸国や中近東、アフリカなどの発展途上国で確固たる市場を持つロシアのクロスカントリー車専門メーカーのUAZ。筆者はそんな同社が製造したUAZ(ワズ/ウアズ)-3909に試乗した経験がある(残念ながらオフロード走行は試せなかったが)。前回に引き続き、日本国内に50台しか存在しない稀少なUAZのキャブオーバーバンを紹介する。

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【今週の名車・番外編】60年前から作り続けられているロシア製バン「UAZ-3909」(前編)

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『ポンキッキ』に出てくるガチャピンそっくりのフロントマスクを持つエクステリアは、アグリーではあるものののほほんとした愛嬌のある顔つきで、目尻のつり上がった異形ヘッドランプによる最近の商用車に比べてかわいらしく見える。だが、ディティールを見て行くとフィニッシュはお世辞にも丁寧とは言えず、ボディパネルは微妙に波打ち、チリ(散り:垂直なふたつの面の段差)はまるで合っていない...というかそうした概念がそもそも存在しないかのようだ。1950年代に登場したクロスカントリー・ヴィークルとしては、なかなか優れた設計を持つ同車であるが、こと製造クオリティという点では中国や東南アジアのクルマの水準にもない。ウインドウガラスはフロントスクリーンを除いてすべて平面ガラスとなり、ドアヒンジは外付け式、リアバンパーはスチール製と、エンジニアリングレベルも登場当時のまま進化を否定しているかの印象を受ける。


インテリアもエクステリアと同様で、インナーパネルはすべて金属むき出しのままだ。パッド類はダッシュボードを含めて存在しない。ステアリングホイールは最近では見なくなった径の大きなエボナイト製のものが装着されている。ハンドルから手を伸ばした位置にシフトレバーとハンドブレーキがあるのだが、副変速機のレバーは助手席側に大きく手を伸ばさないと届かない。ただ、メーター類の視認性は思いのほか良好で、4連メーターは左から燃料計、水温計、油圧計、電圧計となる。ライトやワイパースイッチの配置も悪くはなく、これはこれで使い勝手が良い。


昨年同乗試乗した車輛はオーナー車ということで実際にステアリングを握ることはなかったが、助手席から田中さんの運転を見ている限り、筆者が数年前に試乗した時とドライブフィールに変わりはないように見受けられた。

記憶を頼りにUAZ-3909のインプレッションを記すと、ステアリングを含めて操作系はどれも重く、不正確で、運転感覚はほとんど「昭和30年代の商用車」そのものなのだが、意外なことに操作に体力を使うものの運転自体はまったく難しくない。旧車やジープに慣れた人なら、すぐに自在に扱えるようにハズだ。基本的に武人の蛮勇に耐え得る丈夫なクルマなので、シフトが渋ければ殴るように乱暴に入れても平気だし、ドアの締まりが悪いときには叩き付けるようにして閉めても構わない。というよりも、各部品に当たりがついていないときなどは、むしろそのように操作しないと正しく動いてはくれない。物の本には「大戦中のロシアの主力戦車・T-34はギアシフトが大変渋く、ギアチェンジの際にシフトノブをハンマーで殴って操作した」と書かれている。UAZはそこまで酷くはないにしても、これがこの時代のロシアンクオリティとして納得するしかないようだ。


乗り心地はロイヤルサルーン並とは言わないものの、前後リーフリジットということを考えればそう悪いものではない。たしかに路面の凹凸をよく拾うし、突き上げ感もあるのだが、設計の優れたサスペンションがそれなりにショックを吸収してくれるし、戦車の路外機動にも追随できるという悪路走破性や、過酷な悪路でもけっしてへこたれず、僻地でトラブルが発生しても簡単に修理が効く生存性の高さを考えれば、充分に短所を補ってあまりある優れた足廻りと言えるだろう。


UAZはパワステやクーラーなどの快適装備を無論持たないが(装着車も機能は期待できない)、悪路の走破性能は極めて高く、車内空間は広大で、クルマとしての成り立ちは古典的だが実用車として考えるとそう悪いものではない。

快適で便利な現代のクルマしか知らない大多数のユーザーにとって、UAZ-3909のような原始的なクルマはおそらく評価の対象外であろうし、仮にステアリングを握ることがあっても高い評価を得ることはできないだろう。だが、それでは「UAZが悪いクルマなのか?」と言えばけっしてそんなことはない。何よりも最近のクルマから失われた機械としてのプリミティブな魅力があるし、運転そのものも楽しさがあった。

現在、UAZ-3909はいっそう厳しくなった日本の排ガス規制・安全基準に適合しないために輸入がストップしている。だが、岩本モータースではそう遠くないうちに新規制に適合させたニューモデルの導入を計画していると聞く。価格は規制適合のためのコストアップにより400万円前後になる模様だ。レトロで独特の魅力を持つUAZ-3909が欲しい人には朗報だろう。


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【今週の名車・番外編】60年前から作り続けられているロシア製バン「UAZ-3909」(前編)

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UAZジャポン 公式サイト
http://www.uaz.jp

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