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ホンダの初代「インサイト」は、オーナーが楽しそうなはしゃぎ声をあげていたことから分かるように、たくさんの愛情を集めたものだ。彼らは真新しいインサイトに乗って初めてハイウェイを走った時、きっとよだれを垂らしていたに違いない。自動車の歴史の転換点に、楽観主義的な未来を具現化したような初代インサイトにはキラキラとした輝きがあり(特にあのリアホイールスカートはすごかった)、見るだけで脳内のドーパミンがあふれ出るようだった。


だからこそ、2代目インサイトには失望させられた。プリウスの顧客を狙い、風変わりな雰囲気を捨てて室内は少し広くなったが、個性や運転性能といった面においては、完全に鋭さを失ってしまった。ホンダは、小型ながら元気いっぱいだった「CR-Z」(ハイブリッド・パワートレインとスポーティなニュアンスを併せ持ち、あのファンタスティックなマニュアル・トランスミッション。筆者は大好きだった。誰も同意してくれなくてもね)など、エンターテインメント性の高いクルマを作り続けてきた。だが2代目インサイトは、そのホンダのDNAを最小限しか受け継いでいなかったように思えた。2代目インサイトが消えてしまっても特に寂しくもなかったが、このクルマがホンダの名前に泥を塗ったことを我々は嫌悪した。


しかし今、状況は一変した。「クラリティ」によってホンダが環境性能を優先させるグリーンカーの開発に正しいやり方で邁進できるようになったこと、そして高品質なインテリアを作ることができるようになったことが証明された。「アコード」と「シビック」は運転が楽しく、新しいデザイン言語はラインアップを通して上手く表現されている。ホンダが機能性の高いスタイリングを確立し、それを広範囲に拡大しようとしていることを我々は嬉しく思う。このようなホンダの本格的な復活の真っ只中に、生まれ変わった3代目インサイトは登場した。この米国では6月29日発売の新型車に、我々は大きな期待を抱いていた。そして試乗するためにミネアポリスに到着したとき、このクルマにワクワクしたものを感じた。初代インサイトには遠く及ばないことはわかっていたが、せめて初代が築き上げた名前を復活させるに相応しいクルマであることを願い、期待すらしていた。そう、2代目インサイトによって作られた感情的な汚点の上に、新しい壁紙を貼って隠してくれるに違いないと思ったのだ。



皆さんも、「シビック ハイブリッド」が、もはや存在しないことにお気づきだろう。インサイトはラインアップ上では本質的に、シビック ハイブリッドの後継と言えるが(プラットフォームもシビックから流用している)、ホンダは明らかにインサイトにおいて、シビックの「スポーティな若々しさ」とは差別化を図ろうとしている。顔つきは確かに馴染み深いものだが、それ以外はより大きく、保守的で、成熟した印象を受ける。ホンダはもっとファンキーなクルマに仕立てることもできたはずだが、この控えめな雰囲気は好ましい。ワイルドで奇抜なスタイリングを採用しなくとも、新型インサイトはより親しみやすく、魅力的なルックスに仕上がっている。(おまえのことを言ってるんだ、トヨタ プリウス。)


新型インサイトで最上級グレードとなる「ツーリング」のインテリアは、最近のホンダ車の室内空間の中で、より優れたものの1つと言える。もっとも、クラリティのインテリアは次元が違うけれど。シートはかなり快適で、スポーティというよりは安楽な方(あるいはそれを目指している)だが、サポート性は維持されている。わずかにシボ加工が施された黒い樹脂が、ステッチの入ったレザー張りのシートやダッシュボード、ドアトリムとよく調和している。見た目も良く設定変更が可能なインフォテインメント・システムのインターフェイスは、1年ほど前に乗って使いやすかったホンダ オデッセイと同じタイプだ。情報を入力すると素早く反応してくれるし、動作もきびきびしていて、画面も鮮明で、よくできている。メニュー画面から簡単に切り替えて、今欲しい情報を表示したりエンターテインメントを楽しむことができる。


ステアリング・ホイールの背後に備わるデジタル・ディスプレイは見やすく、ドライバーは目線を前方から動かさずに、重要な情報を正確に知ることができる。我々は、インストゥルメント・パネルの左半分の表示を色々と切り替えて(ナビゲーション、走行データ、エネルギーの流れ)楽しんだ。このインストゥルメント・パネルや、ステアリングに装備された様々なコントローラー、センタースタック、コンソールは、写真だとゴチャゴチャして見えるかもしれないが、運転席に座ってみると、とても自然に感じられる。従来の伝統的なレバーの代わりに設置されたボタン式のシフト・セレクターさえも、結局は慣れてしまった。そうしている間にも、助手席に座った同乗者は、遮るものがなくすっきりした視界が楽しめる。


ホンダは、バッテリーを2列目シートの下に置くことで、ラゲッジスペースの最大化に成功した。 エントリー・グレードの「LX」と中間グレードの「EX」では15.1立方フィート(428リッター)、ツーリング・モデルでは14.7立法フィート(416リッター)の荷室容量を実現している。リアシートをフラットに倒せば、さらに広いラゲッジスペースを確保できる。個人的にとても印象に残っているのは、車体とほぼ同じ幅と高さの巨大なトランクのドアだ。これなら荷物の積み降ろしがラクにできるだろう。


インサイトのパワートレインは、ガソリン・エンジン、リチウムイオン・バッテリー、2つの電動モーターによって構成されている。1.5リッターのアトキンソンサイクル・エンジンが、107hpの出力と134Nmのトルクを生み出す。電動モーターの1つが、129hpの出力と267Nmのトルクを供給しながら車輪を駆動し、もうひとつのモーターは駆動用モーターまたはバッテリーパックに電流を供給するのだが、車輪を直接駆動することはない。システム総合の最高出力は151hp、最大トルクは電気モーターによって267Nmに制御される。

ほとんどの場合、インサイトはバッテリーまたはガソリン・エンジンが電気モーターに電力を供給し、その電気モーターで車輪を駆動する。つまり、シリーズ式ハイブリッドのように機能するわけだ。日常的なほとんど全ての運転状況において、ガソリン・エンジンは単なる発電機として機能する。しかし、高速走行時には、ある時点から(つまりその方が効率が良いとなった時点から)エンジンがモーター/ジェネレーターをバイパスして、直接車輪を駆動するようになる。トランスミッションはなく、特定の速度になるとクラッチがガソリン・エンジンと駆動輪をつなぎ、エンジンのパワーを駆動輪に直接伝える。同時に、電気モーターはエンジンのサポートを提供するが、プリウスなど他のハイブリッド車とは違って、電気モーターとガソリン・エンジンの両方または一方がトランスミッションを介して車輪を駆動することはない。複雑に聞こえるかもしれないが心配は要らない。速度域を問わず、我々は異なるパワーユニットによるフィールの違いに気付くことはなかった。


インサイトのパワートレインは、燃費にその成果を存分に発揮している。17インチ・ホイールと215/50R17タイヤを装着するツーリングの燃費は、街中21.7km/L、高速道路19.1km/L 、複合20.4km/L。16インチ・ホイールと215/55R16タイヤになるLXとEXは、23.4km/L、20.8km/L、22.2km/Lとさらに良好だ。トヨタ「プリウス エコ」やヒュンダイ「アイオニック ハイブリッド」ほど省燃費ではないが、効率性を少し犠牲にしただけで、もっと高品質なインテリアと、明らかなパワーの増強を手にすることができる。

インサイトは十分元気に走るが、穏やかに加速していくとガソリン・エンジンが高回転で唸り出す。ハイブリッドなら予期されることだが、このクルマでは余計にそれが気になった。ホンダがエンジンの遮音対策を十分に施していないためか、あるいはそれ以外の面が洗練されているため、このクルマに対する高い期待値の反映でそう感じるのか。いずれにせよ、今後登場する競合車にとっては格好の餌になる。エンジンの唸り音と路面からのタイヤ・ノイズは、他の静かなクルマと比べたら気に障る。


インサイトの回生ブレーキは、ステアリング・ホイールの後ろに備わるパドルによって強弱を調整できる。しかし、再びアクセル・ペダルを踏み込むと、回生の強さはゼロに戻ってしまい、好みの設定で固定できないことに不満を感じた。これはクラリティでも同じだったので、ホンダがそのような選択をしたことに疑問を感じた。それについて質問すると、ホンダの社員たちは「強くて連続的な回生ブレーキの感覚に慣れていない人たちに、違和感を与えたくないからです」と説明した。これは内燃エンジンを搭載するマニュアル・トランスミッションのクルマで、坂道を下るときにエンジン・ブレーキを効かせるためにシフトダウンするのとよく似た効果を電気的に行う仕掛けだ。しかし インサイトでは、再びアクセルを踏むとシフトが勝手に戻ってしまうようなものである。ホンダの社員は、「スポーツ」モードを選べば回生ブレーキの強さを維持できますと言う。しかし、我々はこれを「エコ」モードでも使いたいのだ。それに今どきの消費者は十分賢く使いこなせると思う。


デフォルト設定の「ノーマル」ドライブ・モードに加えて、インサイトには他に3つドライブ・モードがあり、ボタンで選択できる。エコ・モードはスロットル・レスポンスを弱めて燃費効率を最大化する。スポーツ・モードはこの逆で、アクセル・ペダルの入力に対してもっと機敏に反応する。そして「EV」モードは、限られた時間ではあるが、100%電気走行を可能にしている。

新型インサイトは全ての操作系から受ける感覚が印象的だ。ステアリングは非常に軽くて、振動やキックバックを感じない。このリーズナブルなクルマを、まるでゆったりとした高級車のように思わせる。だが反応は素早く、狭い都市の道路でも軽快に走ることができる。アクセルは、どのモードでも自然な感じだ。また、4分の3ほど踏み込んだところに明らかに分かるポイントがあり、ノロノロとした運転の防止に役立つだろう。ブレーキの感覚は確実に進化を遂げた。踏力に合わせて徐々に制動が増していき、奇妙な回生の癖は感じられない。


インサイトはエントリー・グレードでも「ホンダセンシング」(衝突被害軽減ブレーキ、車線維持支援システム、路外逸脱抑制機能)が装備されている。全グレードにアダプティブ・クルーズ・コントロール、車線維持支援システム、自動ハイビーム、ドライバーアテンションモニター、交通標識認識システムは標準で装備され、さらにEXとツーリングには助手席側の死角になる部分をカメラで投影し、中央のタッチスクリーンに表示してくれる「レーン・ウォッチ」も備わる。これは車線変更時や自転車レーンを横切る右折時、または平行駐車の際に役に立つ。


価格の面でも評価できる。最も安価なLXの価格は輸送費込みで23,725ドル(約260万円)から。EXは24,995ドル(約275万円)で、リモートスタート、レーンウォッチ、Apple CarPlayとAndroid Autoに対応した8インチ・タッチスクリーン、LEDフォグライト、ウォークアウェイ・オートロックなどの機能が追加される。ツーリングは28,985ドル(約318万円)からで、パワームーンルーフを含む全ての装備が付く。この金額で、ライバルに比べて燃費は劣るものの、素敵なルックスと大人のためのインテリア、そして賞賛に値するパワーが手に入るのだ。


2019年型インサイトは、そのネームプレートを引き継ぐべく、大幅な改良がおこなわれた最新のクルマだ。それは初代インサイトのように私たちの想像力を超えることはできなかったが、2代目のように失望させられることもなかった。代わりに、パワーを完全に犠牲にすることなく効率的なハイブリッドを、リーズナブルな価格で手に入れることができる。端正で実用性に優れ、心から快適と言えるクルマだ。やんちゃな青春の日々とその後の有給休暇を経て、インサイトは遂に成長した。ホンダは、成功と失敗から学び、インサイトを復活させたのだ。

スペック
エンジン:1.5リッター直列4気筒+電気モーター(2基)
最高出力:151hp
最大トルク:267Nm
駆動方式:前輪駆動
エンジン位置:フロント
車両重量:1,355kg
座席:2座 + 3座
トランク容量 : 428リッター
燃費:市街地23.4km/h/高速道路20.8km/h
基本価格: 23,725ドル(約260万円)
テスト車両価格: 28,985ドル(約320万円)

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