いよいよ2018年のル・マン24時間耐久レースが始まります。この記事は「F1はよく見るけど、あまりル・マンは見たことがなかった」なという方や、「よくわからないけどトヨタが初優勝しそうなの?」といった方々に、ル・マンとはどんなレースかを知っていただきたく企画しました。もしよろしければ、テレビやネット観戦のお供にしていただければと思います。

■ル・マン24時間耐久レースとは


ル・マン24時間レースとは、その名のとおりフランスはル・マン近郊にあるサルトサーキットで開催される耐久レース。初開催は1923年で、戦争などによる中止を挟みつつも現在まで続く伝統ある耐久レースです。

耐久レースというのはもともとは自動車メーカーが自社製品の信頼性、つまり壊れにくさを宣伝するために市販車を基本とするマシンではじめたとも言われ、長時間を走り切って勝つための研究開発を市販車にフィードバックすることで、信頼性と性能を向上させるという相乗効果を生み出しました。

長い歴史で最も勝利を重ねたメーカーはドイツのポルシェで通算19回。ワークス参戦後はプライベーターにマシンを供給するのがかつてのポルシェのスタイルで、1980~90年代のグループC時代には956/962系マシンで耐久レースのサーキットがあふれかえりました。現在でもあらゆるGT系のカテゴリーでポルシェのマシンを見ることができます。

ル・マンには日本のメーカーも長く参戦してきましたが、日本車による勝利は1991年のマツダ787Bが唯一。日本人ドライバーとしては1995年の関谷正徳選手がマクラーレンF1 GTRで、2004年には荒聖治選手がアウディR8で総合優勝を飾っています。

■2018年のル・マンは


2018年のル・マン24時間レースは世界耐久選手権(WEC)シリーズの第2戦として開催されます。ただし、今年のWECはおよそ1年半にわたって続く"スーパーシーズン"。このスーパーシーズンは2019年のル・マン24時間レースまで続き、1シーズン内に2度もメインイベントがある、ちょっと不思議なシーズンでもあります。

■コース


ル・マン24時間レースの舞台となるサルトサーキットは1周が13.629kmもあり、パーマネントコース区間と一般公道区間を組み合わせた構成となっています。パーマネントコース区間ではフラットな路面とグラベルや芝生のランオフエリアがあるものの、一般公道区間はコース脇すぐの位置にガードレール、路面には滑りやすい白線、さらに舗装断面が雨水処理のためカマボコ状...という、レーシングカーにとっては非常に走りづらい区間となります。

"ユノディエール"と呼ばれるバックストレートは、かつては6kmもある超ロングストレートでした。しかし1988年に405km/hというとんでもない速度が記録されるにいたり、さすがにこれでは危ないということから、1990年以降はストレートを2つのシケインで分割した格好となっています。

ル・マンでは24時間を連続して走行するため、1台のマシンを平均3人のドライバーが交代でドライブします。チームによっては夜間走行担当のスペシャリストを用意しているところもあるかもしれません。

■レース展開


以前の耐久レースと言えば、中盤を過ぎたあたりから各マシンの差が大きく広がり、割とのんびりした雰囲気になることが多くありました(それもまた耐久レースの"味"だったのですが)。しかし近年はマシン性能が接近したためか、24時間の終盤に差し掛かっても同一ラップで、しかもスプリントレース並みの争いが見られる機会が増えています。

記憶にあたらしいところでは、2017年のLM GTE-Proクラスは、首位のコルベットとそれを追うアストンマーティンの大接戦が残り数分で展開される大きな見せ場となりました。また2016年には、残り6分半というところでトップ走行中のトヨタTS050 Hybridを駆る中嶋一貴選手の「ノーパワー!」という悲痛な無線音声が世界中に衝撃をもたらしました。

■ル・マンに参戦するマシン


ル・マン24時間レースに出場するマシンはLMP1 / LMP2、LM GTE-Pro / LM GTE-Amaという4種類のマシンに別れます。LMPはル・マン・プロトタイプの略。
最高峰のLMP1はカーナンバーが赤地に白で表示されるのが目印。LMP1の中にもさらにハイブリッド、ハイブリッドなしという区分けがありますが、今年のハイブリッド搭載チームはトヨタワークスのみ。ルール的にハイブリッドが最も速いカテゴリーとなるため、2018年の総合優勝の本命はトヨタチーム、ということになります。トヨタ以外のLMP1への参戦チームはいずれもプライベーターですが、レベリオンやSMPといったチームは実力もあり、レースの展開によってはトヨタを食ってしまう可能性もゼロではありません。

LMP2は、LMP1よりもやや遅いクラスで、カーナンバーが青地になっています。多くのチームが参戦できるようにするためコスト制限がかけられており、エンジンはギブソン製4.2リッターV8のワンメイクとなっています。

LM GTEカテゴリーはLM GTE-ProとLM GTE-Amに分かれています。見分け方は、Proのほうがカーナンバーが緑なのに対し、Amクラスはオレンジ。市販の量産車をベースとしており、フォードGTやアストンマーチン・ヴァンテージAMR、ポルシェ911RSRといったマシンで争われます。LMPカテゴリーに比べると遥かに遅いものの、出走台数も多く、熾烈な争いが展開される熱いカテゴリーでもあります。

■注目マシンは?


LMP1 #8 トヨタ TS050 Hybrid

 中嶋一貴
 セバスチャン・ブエミ
 フェルナンド・アロンソ
"ノーパワー"の悲劇から2年。ライバル・ポルシェがいなくなり、2018年は「勝って当たり前」というプレッシャーに打ち勝たなければならなくなりました。アロンソはモナコGP、インディ500、ル・マン24時間レースすべてに勝つ"トリプルクラウン"をめざしています。

LMP1 #7 トヨタ TS050 Hybrid


 小林可夢偉
 マイク・コンウェイ
 ホセ・マリア・ロペス
小林可夢偉は2017年にコースレコードを記録してポールポジションを獲得。一発の速さはピカイチながら、なぜか状況的に8号車を優先させられることが多いのは気のせいでしょうか。


LMP1 #1 Rebellion R13 Gibson
 ニール・ジャニ
 アンドレ・ロッテラー
 ブルーノ・セナ
プライベーターの中でも頭一つ抜きん出ている印象のレベリオン勢でも、スタードライバーを揃えた1号車は注目が集まります。

LMP1 #6 SMPレーシング BR Engineering BR1 AER
 ミカエル・アレシン
 ヴィタリー・ペトロフ
 ジェンソン・バトン
レベリオンとともにトヨタにせまる勢いがあるSMPレーシング。11号車には元インディカーのアレシン、元F1のペトロフというロシアントップドライバー勢に、スーパーGT参戦中のジェンソン・バトンがトリオを組みます。

LMP2 #31 ドラゴンスピード Oreca 07 Gibson
 ロベルト・ゴンザレス
 ナタナエル・ベルトン
 パストール・マルドナド
予選でLMP2勢2位につけたドラゴンスピードはLMP2クラスの有力チーム。低迷期のウィリアムズF1で優勝をもぎ取った強運を持つマルドナド師匠の走りには注目せざるを得ません。

LMP2 #32 ユナイテッドオートスポーツ Ligier JSP 217
 ファン・パブロ・モントーヤ
 ウィリアム・オーウェン
 ヒューゴ・デ・サデレール
実はアロンソよりも"トリプルクラウン"に近いところにいるのがすでにモナコGPとインディ500を2度ずつ勝っているファン・パブロ・モントーヤ。今年のル・マンはLMP2クラスで、チーム力的にも総合優勝は難しいと思われるものの、どこまで上位に食い込めるかは気になるところです。

LMP2 #38 ジャッキー・チェンDCレーシング Oreca 07 Gibson

 ホー・ピン・タン
 ガブリエル・オーブリー
 ステファン・リケルミ
2017年のル・マン24時間レースで、LMP1ワークス勢がドタバタしている間にしれっと総合首位に立ち残り22時間までトップをキープしてみせたのが、LMP2クラスのジャッキー・チェンDCレーシング。最後こそポルシェ2号車が圧倒的な速さで追い越していったものの、一時は本当に勝ちそうな雰囲気も漂う大健闘。最終的にも総合2位/クラス優勝で堂々と表彰台に登りました。


LM-GTE Proチームは、

AFコルセ フェラーリ488 GTE EVO(#51、#52、#71)、
ポルシェGTチーム ポルシェ911 RSR(#91~94)、

フォード・チップ・ガナッシチーム フォードGT(#66~69)らが激しい闘いを展開するはず。
なかでもフォード・チップ・ガナッシチームはスコット・ディクソンとライアン・ブリスコー(ともに#69)、トニー・カナーン(#67)、セバスチャン・ブルデー(#68)といったインディカー勢をバランスよく配置し上位進出を図ります。またポルシェは全盛期のロスマンズカラーをまとった91号車、1971年のPink Pigカラーを再現した92号車が注目です。

さらにある意味2017年の主役にもなったコルベットレーシング(#63、#64)とアストンマーティン・レーシング(#95、#97)も忘れてはいけません。

ちなみに、Twitterなどで ル・マン + スポッターガイド で検索すれば、各マシンのカラーリングとドライバー、チーム名を一覧にまとめた画像が見つかります。ご参考にどうぞ。

■家で観戦するには


ル・マン24時間レースは今年もスカパー J SPORTSが完全生中継をします。チューナーとアンテナがすでにある人は、申し込めさえすれば30分以内に視聴が可能となるほか、インターネット中継のJ SPORTSオンデマンドでも視聴が可能。

さらに、Amazonプライム会員の方は、Amazonプライム・ビデオでも新たに有料チャンネルとしてJ SPORTSなどが視聴可能になりました。すでにAmazonプライム会員なら、こちらを選ぶのも手軽で良いかもしれません。

例年、YouTubeなどではオンボードカメラをライブ配信するチームがいくつかあります。今回のル・マンでも、フリー走行や予選ではレベリオンチームがオンボードカメラ映像をライブ配信していました。優勝大本命のトヨタもYouTubeでライブ配信を実施します

また、FIA WECのページにはレース状況を伝えるライブタイミングがあります。応援するチームやドライバーの順位確認に活用すると良いでしょう。

2018年ル・マン24時間レースは日本時間の6月16日22時スタートです。