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ロールス・ロイス初のSUVである「カリナン」がどのようなクルマになるかと想像していた頃、我々は地上高を引き上げてトランクを排除した「ファントム」に似た外観のクルマ以外に思い浮かべることができただろうか。そして、実際に発表されたSUVはやはり、高い位置にあるボンネットからショルダーラインやドアに至るまで、完全にファントムから受け継いでいる。この英国製オフローダーには、4輪駆動やオフロード走行モード、4輪のそれぞれの接地性を高め自動的にダンパーを調整するエア・サスペンションなど、ブランドを再定義するような初の試みが多く盛り込まれた。こうした特徴は全て、カリナンを富裕層に売り込むためのキャッチフレーズ、 "Effortless, Everywhere."(労せず、何処でも)に基づき採用されたものだ。

カリナンのホイールベースは3,295mm、全長は5,341mm。ファントムよりもホイールベースは255mm、全長は429mm短い。しかしカリナンは、セダンであるファントムよりも全幅が144mm広く、全高は190mm高くなっている。プラットフォームにはファントムと同じオール・アルミ製の「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」を採用するが、厳しいオフロード走行に対応するため、乾燥重量はファントムを約90kgほど上回る2,660kgとなった。6,749ccV型12気筒ツインターボ・エンジンは、最高出力563bhp(571ps)と最大トルク850Nmを発揮する。最高出力はファントムと同等だが、トルクは50Nm下回る。だが、カリナンはファントムよりも100rpm低い回転数で最大トルクに達する。

ロールス・ロイスは、巷に溢れる2ボックスのSUVとの差別化を図り「SUVセクター初の3ボックスを提供する」と主張する。外から見ると単なる2ボックスにしか見えないが、おそらくロールス・ロイスは、カリナンの2列の座席が備わるキャビンと、荷室との間を隔てるガラス製のパーティションが設けられている点を言及したのだろう。これについて同社は「荷物は車外に積まれ、乗員が所持品と一緒に運ばれることがなかった時代の歴史を尊重した」と述べている。



荷室といえば、一般的にテールゲートと言われている部分が、カリナンでは「クラスプ(留め金)」と呼ばれる。ハッチは電動で作動する2つの部分に分かれ、下部の細い部分には「リクリエーション・モジュール」と呼ばれる電動の引き出しと棚が設けられており、カスタム・メイドの収納スペースとして使える。例えば、鷹狩り、狩猟、ドローン・レースなど、オーナーの趣味に合った道具を入れるのに最適だ。また、折り畳み椅子とカクテル・テーブルが利用できる「ビューイング・スイート」を装備することも可能だ。

カリナンは、車内や内部にも様々な優れた仕掛けが備わる。ロールス・ロイスは22インチ・ホイールを装着した同車の最低地上高を明らかにしていないが、ドアを解錠すると乗降性を向上させるために車高が40mm下がり、エンジンのスタート・ボタンを押すと40mm上昇する。車内に入ると、インストゥルメント・パネル上のウィングの形をしたカウルや、ファントムから僅かに変更されたインテリアが目に入るだろう。ドライバーの前には、デジタル・インストゥルメント・クラスターと、ファントムよりやや小径で握りが太くなったステアリング・ホイールが備わる。ファントムのダッシュボードに採用されている「ザ・ギャラリー」と呼ばれるガラス張りのエリアはなく、代わりに「ボックス・グレイン」という丈夫な耐水性の黒いレザーが張られている。センタースクリーンにはタッチコントロールが初採用されたが、これはセンター・トンネルのアームレストに装備する"スピリット・オブ・エクスタシー"が描かれたコントローラーからも操作できる。

後部座席の「パビリオン・シート」は前席より高い位置に座るため、こちらの乗員も前方の景色を見逃すことはない。ベンチタイプの「ラウンジ・シート」は3人掛けで、60:40に折り畳むことが可能だ。座席が折り畳まれる際、ヘッドレストは座面に収まるため、見苦しい状態を晒すことはない、という秘密もある。贅沢な2名用の独立式シートを装備することも可能だ。こちらを選ぶと、左右の電動シートの間には、よく冷えた飲み物とウイスキーやシャンパンのグラスにデカンターを収納したコンソール・ボックスが装備される。後部でパーティ中の乗員は酒を楽しみながらも、前席シート背後に搭載されたタッチスクリーンの地図で現在走行中の経路を辿ることができる。



"王者たちが座る"後部座席の背後に話を移そう。荷室フロアの高さは普段、後部座席の座面より下がっている。この高低差によって、荷物が後部座席に流れ込むのを防ぐ。荷室フロアを上げてフラットにすることも可能だ。後部座席を起こし、パーセルシェルフを設置した状態で、荷室は526リッターの容量を飲み込む。シェルフを外せば600リッターまでの積み込みが可能だ。後部座席を折り畳み、荷室フロアを同じ位置まで上げると、荷室容量は1,930リッターに拡大し、2.5mという長さの荷物も積みこめる。

カリナンのサスペンションに何種類のプリセットが用意されているのかは分からないが、ドライバーはセンター・コンソールのボタンで2通りの高さに切り替えることが可能だ。"つま先立ち"の状態なら、最大540mmの水深を進むことができるという。これはベントレー「ベンテイガ」が超えられる水深より40mm深い。ただし「レンジローバー」の900mmと比べたら圧倒的に足りないが。

ロールス・ロイスはファントムの"魔法の絨毯のような乗り心地"について長年誇らしげに語ってきたが、カリナンのセルフレベリング機構付き電子制御式エア・サスペンションの方が、少なくともオフロード走行には適している。エアコンプレッサーがタイヤと路面の接地性を最大限に高めてくれるはずだ。走行する場所に合わせて「荒地」「砂利道」「湿った草地」「泥道」「雪道」「砂地」という6種類のモードに切り替えられるが、ドライバーは自分で選ぶ必要がない。オフロード・モードに設定するだけで、カリナンはセンサーやカメラで捉えた情報から総合的に判断してくれるのだ。なぜなら、このロールス・ロイスは「労せず、何処でも」走れるクルマだから。



By JONATHON RAMSEY
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

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