【試乗記】フォルクスワーゲンの新型「up! GTI」は、1970年代のホットハッチを運転する気分が味わえるタイムマシン
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フォルクスワーゲン(VW)の「ゴルフ GTI」が発売されてから40年以上経つが、その間に我々が学んだことは何だろうか? 同車が発表されたのは1975年。1983年には「ラビット GTI」として米国でも販売され、現在は7代目となるが、今でも同車は最も信頼のおける高性能ハッチバックと言っていいだろう。欧州の名門でありながら、米国でも不変の人気を誇り、「ゴルフ R」の4倍も売れている。米国向けのゴルフのラインアップの中では、実用的な「ゴルフ スポーツワゴン」に匹敵するほどの人気がある。


モータースポーツ界の伝説的人物であるハンス・ヨアヒム・スタックは、早い時期からゴルフ GTIに乗り始め、今でも支持し続けている。確かにVWから報酬を得てはいたが、GTIに対する思いに偽りはなく、彼は「4度結婚したが、初代ゴルフ GTI(Mk1)はずっと所有している」と我々に冗談を言った。そして、F1のパドックからナイトクラブへ愛車を走らせた時の話をしてくれた。194cmという長身のスタックが小さなゴルフに乗り込み、ジェームス・ハントが運転するメルセデス・ベンツ「450SEL 6.9」とバーまで競争して勝ったという話はとても面白かった。

初代ゴルフ GTIのシャープなスタイルや卓越したパフォーマンス、安定したハンドリングは今もなお、称賛に値する。これは欧州仕様の1976年型の初代モデルが810kgと軽量だったことが大きい。現在販売されているゴルフ GTIより500kg以上も軽かったので、最高出力が現行モデルの半分でも全く問題なかったのだ。


米国に輸入されたラビット GTIは、燃料噴射装置を備えるオリジナルの1.6リッター直列4気筒エンジンが1.8リッターに拡大され、米国の規制に合わせて欧州仕様より重く、パワーも落とされていたが、その精神は健在だった。それから40年の時を経て、ゴルフ GTIはますます重く、大きくなった。現代のドライバーにとって、小さな1970年代の欧州製ハッチバックは衝撃的だろう。それでも本質は変わっていない。特徴的な格子柄のシートや"たんつぼ"のような3本スポークのステアリング、ゴルフボールを模ったシフトノブには、少人数のチームが時間外の企画を製品に生かしたような遊び心が見て取れる。高速巡航は十分に洗練されており、曲がりくねった道では勇ましくパワーを絞り出して快活に走り、スロットルのレスポンスは俊敏で、キビキビとした走りを楽しめる。


最新型のGTIに乗り換えると、いかに変わったかを実感すると同時に、変わらない特徴があることにも驚きを覚える。最新のGTIは直噴ターボ・エンジンを搭載し、電子制御式ロッキング・ディファレンシャルロック、6速デュアルクラッチ・オートマチック・トランスミッションを備える。初代のダッシュボードにはスピードメーターとタコメーターとラジオくらいしかなかったが、現行型GTIにはタッチスクリーン式インフォテインメントや数々の安全装置、センサーなどのシステムがすっきりと組み込まれている。


しかし、スピリットは全く変わらない。初代と同様、現行型GTIもサーキット走行から毎日の通勤まで楽しめるクルマだ。トルキーなエンジンや使い勝手の良さ、純粋で限界が分かりやすいハンドリングなどを依然として備えている。そして初代よりずっと、ずっと速い。しかし、車重が増え、複雑なテクノロジーが介在することで、ドライバーとクルマとの一体感は薄まった。自動車開発における40年は長いし、その分、多くのことが期待されるだろう。だが、もしVWがオリジナルの青写真に立ち戻り、70年のGTIと同じサイズや車重、性能でありながら、21世紀のドライバーが求める安全性や利便性を備えるクルマを作ったら?

VWは「up! GTI」と呼ばれるクルマでそれを実現した。115psの1.0リッター直列3気筒直噴ターボ・エンジンを搭載する同車は、初代ゴルフと同じくらいの大きさで、車両重量は1,070kg。欧州ではゴルフ GTIのおよそ半額で買えるup! GTIは、初代ゴルフ GTIと同じような興奮を味わえると評価され、既に需要が供給を上回っているという。


ドライビングの真理はスペインにある「アスカリ・レース・リゾート」内のサーキットで行われた「GTIパフォーマンス・デイズ」で証明された。まずはゴルフ Rに乗ったインストラクターを、245psの欧州仕様「ゴルフ GTI パフォーマンス」で追いかけるのだが、これが実に楽しかった。ゴルフ Rのパワーとトラクションは100kg近い重量のハンデに相殺されてしまう。ゴルフ GTIは容易に限界域まで速く、安全に走らせることができる。優秀なフロントアクスルのお陰で全輪駆動のゴルフ Rに食らい付けるだけでなく、コーナーではよりブレーキを遅らせて奥まで突っ込める。容易過ぎるほどだ。


up! GTIへ乗り換えると、現代の環境に包まれたまま1970年代の運転感覚に戻ることができるタイムマシンのようだ。ゴルフ Rの3分の1を少し上回る程度のパワーは、シフトレバーを握りしめ、エンジンをレッドゾーンまでブン回して引き出してやる必要がある。コーナーに進入する時、ブレーキはほとんど効かせない。貴重なスピードを維持したまま、最大限に素早くコーナーを回り、ペースを維持することが狙いだ。このコーナリングは、かつてラビット GTIのファンが愛した「ドアハンドル・アプローチ」と呼ばれる手法のニューエイジ風リミックスである。ドライブ・モードなど持たず、初代ゴルフとほぼ同じホイールベースに、細身の195mmタイヤを履く。初代ゴルフ GTIに、これ以上ない程、近いドライビングを味わえるはずだ。その一方で、お手持ちのiPhoneを接続すれば、Apple CarPlayによって最新の音楽を車内で楽しむこともできる。


GTIの40年に及ぶ歴史で培われた技術や知見は、現在販売されているゴルフの中に活かされている。しかし、その原初を知りたいと思うなら、休暇を取って欧州へ飛び、up! GTIのレンタカーを借り出し、できるだけ狭くて曲がりくねった道路を見つけて走ってみることだ。それであなたもスタックのように女性にモテるようになるとは保証できないが、少なくともGTIの起源を体験したことによって、クルマ好きから一目置かれるようにはなるだろう。


スペック
エンジン:1.0リッター直列3気筒直噴ターボ
最高出力:115ps/5,000-5,500rpm
最大トルク:200Nm/2,000-3,500rpm
トランスミッション:6速マニュアル
駆動方式:前輪駆動
エンジン搭載位置:前
車両重量:1,070kg
乗車定員:2+3人
ドイツ本国の税込価格:1万6,975ユーロ(約222万円)から


By DAN TRENT
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

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