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レクサスがスピンドルグリルをセダン「GS」に採用し、そのデザインを意匠登録したのは2012年のことだ。これが確かな予兆だった。その後、スピンドルグリルはラインナップに浸透し始め、5年分のモデルイヤーを経た現在では、レクサス全車に採用されている。このグリルに関して誰もが同意するのは、それが大胆であるという点だ。そしてレクサスは、北米国際オートショーに展示したコンセプトカー「LF-1 Limitless」で、そのデザインをさらに追求していく姿勢を示した。


スピンドルグリルを何とも思わない人も確かにいるだろう。その一方で、アニメのキャラクターや、ヒゲ剃り、餌を求めるヒゲクジラを連想する人もいる。信憑性の低い批判かも知れないが辛辣な意見として、デザイナーは映画『プレデター』に登場する異星人の口元に似せたのだとも言われている。また、SFモノでも、もっと好意的な例えとしては、米国版AutoblogのAntti Kautonen記者が、LF-1 Limittedのグリルは『スター・ウォーズ』でハイパースペースに突入する宇宙船を模しているかのようだと言っている。北米国際オートショーで展示されたクルマの中でも最も異彩を放っていた、迫力と未来感のあるLF-1にはぴったりの表現だ。


トヨタのデザイン本部長でレクサス代表でもある福市得雄氏は2015年、ロイターによるインタビューの中で、スピンドルグリルを擁護し、そのデザインが目指すところは「セクシーであること」だと語り「デザインに賛否はあっても、しばらく経てば慣れる」と言って不満の声を退けた。しかし、その時点で、2012年にトヨタの株主総会で一部の株主から不満の声が聞かれるなど、新しいデザインが論争を引き起こしてから"しばらく"、そう、既に3年が経っていた。

そしてさらに"しばらく"経たった今、あるレクサスの幹部によれば、スピンドルグリルは顧客の間で未だに賛否両論を巻き起こし続けているという。レクサスの部門副社長兼ゼネラル・マネージャーのジェフ・ブラッケン氏が、北米国際オートショーの会場で自動車メディア『Carbuzz』に語ったところによると、長年レクサスのクルマを乗り継いでいる顧客は、今でもそのクルマの口元がどうしてそんな形をしているのか、理解できていないという。

「率直に言いましょう。スピンドルグリルは我々の象徴的グリルです。いくつかのモデルは、さらに豊かな表情を持つスピンドルを備えています。それを好みが分かれるデザインだと言う人は、大抵の場合、初期からブランドを支持してくれている方々です。そういうレクサス・オーナーのお客様からお電話をいただき、我々がいかにお客様を失望させたかというご意見を、45分から1時間くらいお聞かせいただくことはあります」とブラッケン氏は話している。



実は同氏は、グリルについて今回とほぼ同じことを、不満を抱く顧客や自動車ジャーナリストに対して数年にわたり述べてきた。2014年11月に米国の経済誌『Forbes』に掲載された記事に同様のくだりがある。今回の「お聞かせいただくことはあります」という言葉のニュアンスは、こういうことが現在もまだ続いているということを意味している。

「お電話をいただくということは、レクサスの今後を方向性をお客様にご説明できるチャンスです。ご心配は重々承知しています。レクサスにとっては非常に意図的で戦略的な展開です。古くからのお客様の一部を失うことになってしまえば、それは心苦しいことではありますが、この方向性から逸れるわけにはいきません。失ったお客様の数よりも多くの新しいお客様にレクサスに乗っていただきたいのです。決してお客様を失ってもよいというわけではありませんが...」

レクサスの新しいデザインの方向性は、高級車を購入する顧客層が若年化しているという統計を元に、彼ら(若い顧客)を惹き付けようと意図したものである。

「レクサスには(これまでに)高品質なラグジュアリーカーのメーカーというイメージがありました。しかし、それだけでは昨今の時代の流れに追随していません。高品質のラグジュアリー・カーを造るというだけではなく、スタイリングや最先端のテクノロジーについても、常に敏感でなければならいということが大切なのです」


しかし、もちろんラインアップの中には、このグリルが見栄えがする車種もある。例えば全体的にゴージャスな「LC500」(マルチステージ・ハイブリッド・システムのモデルが米国版Autoblogのテクノロジー・オブ・ザ・イヤーに輝いた)などだ。

ところで、このデザインは当初期待されていた効果を発揮することができたのだろうか? レクサスは「失うよりも多く」を得たのだろうか? レクサスの米国における販売台数は2012年からピークとなる2015年の3年間で40%も伸びた。だが、それ以降は11%減少している。これは我々が知り得ない、レクサスだけが知り得ることだが、長年の顧客がレクサスに愛想を尽かしてドイツ製の高級車に走ったということなのだろうか? 新たな顧客の獲得で、従来の顧客を失うことを正当化できるのだろうか? 新規の顧客にせよ、以前からの顧客にせよ、レクサスを購入する人はブランドの質、特色、テクノロジー、あるいは高いリセールバリューなどの良い点だけを考え、嫌な所には目をつぶるということなのだろうか?


実はもっと大きな要因、例えば高級車の多くがリースで乗られていること、米国人がピックアップ・トラックを好むことなどが、この高級ブランドに影響を及ぼしているのだ。全体的に不調なセダン市場と、高級SUVの販売が上昇していることから、レクサスはさらなるSUVをラインアップに加えることで、巻き返しを図ろうとしている。ブラッケン氏や他のレクサスの幹部は、LF-1の市販化を強く望んでいる。そして今のところ、少なくともコンセプト・モデルという形においては、LF-1にはスピンドルグリルがある。ブラッケン氏の電話は当分、鳴り止むことがないだろう。だが、それでもレクサスは多くのLF-1を売ることができるだろう。

※このリポートではロイターから入手した素材を使用。


By GREG RASA
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

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以下は米国版Autoblogによるアンケート。上から「大胆で気に入っている」、「いくつかのモデルでは好感が持てる」、「関心がない」、「奇妙だと思う」となっています。



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