【特集】君は覚えているか!? レアでワイルドなアメリカン・スーパーカーを振り返る!【第1回】
"スーパーカー"と呼ばれる本物のパフォーマンスのみを追求した心躍るクルマについて考えるとき、(米国人の我々でも)きっと頭に浮かぶのは、イタリア製かドイツ製か英国製が多いのではないだろうか。もちろんそれ以外の国でもスーパーカーは造られている。例えばブガッティはフランス製だし、ケーニグセグはスウェーデン製、スパイカーはオランダ製だ。ヨーロッパばかりではない。日本にもホンダ「NSX」やレクサス「LFA」などの特筆すべきモデルがある。しかし、米国もこれまで数々のスーパーカーを世に送り出してきたのだ。

デトロイトの"ビッグ3"にそんなクルマがあるかとお疑いになるのはもっともだ。だが、シボレー「コルベット」の「ZR1」や「Z06」は、欧州の名高い高性能車と互角にサーキットを走行できる性能を証明した。ダッジ「ヴァイパー」は巨大なV10エンジンを搭載し、クライスラーの中にも重症なクルマ好きがいることを露見させた。そしてかつての魂と共に復活したフォード「GT」は、50年前と同じくル・マンでフェラーリを打ち破った。しかし、真に偉大なアメリカ製スーパーカーは、実はその多くが独立系の少量生産メーカーから誕生しているのだ。

そこで今回から何度かに分けて、そんな記憶の片隅から抜け落ちていそうなアメリカン・スーパーカーをいくつか皆さんにご紹介しようと思う。中には性能の公称値に疑わしいものがあるかもしれないし、名前すら聞いたことのないメーカーもあるかもしれない。しかし、冒険心に溢れた型破りなそのスタイルは、紛れもなく人類を月に到達させたアメリカの精神を感じさせる。


ベクター「W8」
アメリカン・スーパーカーを語るなら、まずベクターから始めるべきだろう。ベクター・エアロモーティブ社は1971年、創業者ジェラルド・ヴィーゲルトによって米国カリフォルニア州に設立されたが、「W8」が生産開始となったのは1989年になってからだった。SF映画から飛び出してきたようなルックスの下には、シボレー製スモールブロックの排気量を6.0リッターに拡大してツインターボチャージャーを追加したV8エンジンを搭載。最高出力625馬力を発揮する。3速しかないオートマチック・トランスミッションは、現代のスーパーカー基準から見れば失笑物だが、W8は0-60mph(約96.6km/h)を4.2秒で加速し、最高速度は220マイル(約354km/h)を超えたという。

販売価格は当時の金額でおよそ45万ドル。現在の貨幣価値に換算すれば、82万5,000ドル(約9,400万円)ほどになるだろう。あるいはランボルギーニ「アヴェンタドール」2台分とも言い換えられる。実はベクターとランボルギーニには浅からぬ関係性があるのだ。1990年代初頭、両社はどちらもインドネシアの新興財閥メガテック社に所有されていたことがあった。そのため、W8の後継モデル「M12」にはランボルギーニ「ディアブロ」のV12エンジンが搭載された。メガテック社がランボルギーニをアウディに売却する前に合計18台のM12が製造されたが、ベクターは経営難から倒産。ヴィーゲルトは少なくとも2度、会社の再興を試みたが、結局はベクターもまた、他の多くのスーパーカー・スタートアップと同様、歴史の片隅に追いやられてしまった。



モスラー「MT900」
フロリダ州に本拠を構えるモスラー・オートモーティブも、ベクターと同じく独自のスーパーカーを開発した新興企業だが、そのデザインはより手際よくまとめられている。設立当初は「Consulier」という名称だったがモスラー社は、後に創業者であるウォーレン・モスラー氏の名前を社名に採用。だが、最も大事な情報は、同社が何台かの米国製で最も優れたスーパーカーを生み出したということだ。

1985年にConsulier社から登場した「GTP」は、モスラー「イントルーダー」や「ラプター」と名称を変えて生産が続けられた。当初はクライスラー製の直列4気筒ターボ・エンジンを搭載していたが、名称が変わると共にGM製スモールブロックV8に切り替えられた。

その後継として2001年に発表されたのが「MT900」だ。最高出力350hpを発揮するGM製「LS1」V8エンジンを、カーボンファイバー製シャシーのミドシップに搭載し、0-60mph加速3.5秒、クォーター・マイル(約402m)を12秒ジャストで走り切った。スキットパッドでは1.02Gを発生する一方、Cd値は0.25に抑えられ、米国環境保護庁による燃費は市街地8.1km/L・高速道路11.9km/Lと比較的良好な数値を記録した。

2003年に登場したパワフルな「MT900S」では最高出力が435hpとなり、さらに最終型ではスーパーチャージャーによる過給を得て600hpを発生。2006年に『Car & Drivers』誌のテストで0-60mph加速3.1秒というタイムを記録している。

モスラー MT900をベースにしたレース仕様車は、日本のSUPER GTも含む世界中の様々なレースに参戦し、その設計が優れていることをサーキットで証明した。だが、2013年にロシオンに合併吸収されるまで、モスラーが製造したスーパーカーは全て合わせても数十台程度に留まる。


By Autoblog Staff
翻訳:日本映像翻訳アカデミー