最高のポルシェ「911 GT3」を生かし続けている物とは?
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ポルシェでさえ、自動車の世界的な流行から免れることはできない。ポルシェが今ではスポーツカーよりもSUVの販売台数の方が多いという話を耳にしたことはあるだろう(実際、非常に大きな差が開いている)。さらに今やベース・モデルの「911カレラ」までターボチャージャー付きとなり、ラインアップにはハイブリッド・モデルを何車種も揃え電気自動車だって開発中だ。これら全てのことは、ダウンサイジング・ターボに対する有力かつ最終的な抵抗勢力として未だに自然吸気エンジンを搭載する「911GT3」にとって、甚だ不利な流れに見える。

GT3がターボにならない理由は、GT3の存在理由と同じだ。それは、レーシングカーだから。米国版Autoblogのインタビューに対し、ポルシェのGT部門で責任者を務めるアンドレアス・プレウニンガー氏は次のように説明している。「我々にとって極めて重要なキーとなる要素は、レーシングカーとロードカーが同じ血筋であるということです」

これはマーケティングの話だけではない。同氏は、レーシングカーの「911 GT3 R」が存在しなければ、ロードカーの「911 GT3 RS 4.0」は誕生しなかっただろうと語っている。「いくら理論に従って紙の上で設計しても、実際にエンジンを製造して試してみるまで、それがどれほど素晴らしいか、あるいはどうしたらもっと素晴らしくなるか、知ることはできません。だから我々はそれをレースでやるのです。レーシングカーの開発では、とにかく何でも試してみます。それがフィルターに掛けられた上で、ロードカーに注ぎ込まれるのです」。



そう、能弁な911オーナーは皆、ポルシェがロードカーのためにレーシングカーを作っているという話は真実だとまくし立てて喋る(別にこちらが尋ねていなくても)。これは単に公道走行可能なレースカーを作っているという意味ではない。共存関係は逆のことも言える。ロードカーからレーシングカーにフィードバックされることもあるのだ。

「ロードカーの耐久試験はレーシングカーのそれを遙かの凌ぎます。GT3プロジェクトのために製作される開発車両は、カップカーのために製造されるテスト車よりもずっと多いのです。つまりカップカーやGT3 Rといったレース仕様車は、公道用スポーツカーの開発段階で広範囲にわたる問題を洗い出し、解決を図るこのシステムから実際に大きな恩恵を得ているわけです」と、プレウニンガー氏は語る。

「すべてのレース用エンジンは30時間ごとにオーバーホールのスケジュールが組まれています。分解されるんです。ロードカーのエンジンは、生涯にわたり使えなければなりません。だいたい30万kmです。取り組み方が全く異なります」。

レーシングカーで部品が必要になるとき、エンジニアはロードカーの部品がクルマの生涯に持ちこたえるよう作られていることを知っている。そしてその一生分のストレスは、短時間により高い負荷が掛かる通常のレースにおけるストレスよりも大きい。

もちろん、その関係性は相互に同じことが言える。ポルシェがロードカー用の部品を改良してレースで使う場合には、「その改良した部品をロードカーにも採用します。レースで使うためにはホモロゲーションを取得する必要があるからです」。つまり、GT3はレースの血筋を受け継ぐロードカーであるから、レースで使われるマシンと同じ仕様で、(ホモロゲーションを獲得するために)量産される必要があるのだ。



この様に公道とサーキットをつなぐ血筋が確固たるものである以上、GT3は政府主導のダウンサイジング・ターボや電動化から、少なくとも現時点では免れることができる。「FIAやALMSの規定に沿ったGT3 Rやカップカーといったレースカーがあるなら、GT3をターボ化することは合理的ではありません。これらは皆、兄弟なのです。確実に同じ血が流れています。我々がレースの規定に合わせてレースカーを作るのであれば、ロードカーのGT3も間違いなく同じ道を進みます」。

将来、高回転型の自然吸気エンジンを捨てたGT3を目にする可能性は否定できない。あるいは歴史が物語るように、レースの規定が変更されたら、GT3という名前自体がなくなるかもしれない。それまでの間、GT3は依然としてポルシェで最も魅力的な製品であり続けるだろう。これからも500馬力の宝石をリアアクスルの上に搭載し続けるだろう。よく言われるように、競争は種を進化させる。同様に、モータースポーツが繁栄することを祈ろう。


By Michael Austin
翻訳:日本映像翻訳アカデミー