フォルクスワーゲン「人間にもディーゼルの排出ガスを吸わせる研究を行っていた」という噂は正しくないことが判明
Autoblogでは昨日、フォルクスワーゲン(VW)の出資した研究グループが、サルを密閉した部屋に閉じ込めてディーゼル・エンジンの排出ガスを吸わせる実験を行っていたというニュースをお伝えした。では、VWが人間にもディーゼルの排気ガスを浴びせる実験を行わせていたという話を、最近耳にしたことはないだろうか? これを聞いたら、サルを使った実験と同様に、エンジンを掛けたクルマのテールパイプにホースをつないで、排気ガスを被験者のいる部屋に送り込むといったような実験を想像するかもしれない。サルなら倫理的にそれほど問題ないと考える人も、人体実験は酷い問題だと思うに違いない。

しかし、事実はこれとだいぶ異なる。

現在はエコーチェンバー現象が論じられ、問題となっている。だから、この実験をすぐさま批判することなく、まずは事実を論じてみよう。

The European Research Group on Environment and Health in the Transport Sector(EUGT:交通分野における環境と健康に関する欧州の研究グループ)は複数の大手ドイツ自動車メーカーが出資した研究グループで、ディーゼル・エンジンが環境と健康に与える影響について調査している。これらドイツの自動車メーカーは、米国でディーゼル車を販売することに関心があるか、もしくはすでに米国でディーゼル車を販売しているかのどちらかで、『ニューヨークタイムズ』紙によると、2007年にこの研究グループが発足された時、VWは米国で「TDI」(ディーゼル)エンジン搭載車の販売台数を増やそうと大々的なプッシュ戦略を行っていた。サルと人間の両方による実験を行ったこの研究の主な焦点は、ディーゼル車のテールパイプから排出される窒素酸化物と二酸化窒素が、健康にどのような影響を与えるかについてだった。

そしてこの実験の目的は、ディーゼル車の排出ガスを改善するために、自動車メーカーが開発した様々なテクノロジーが、きちんと機能していると証明することだったのだ。だが、研究者たちは、数年前にVWが排出ガス検査の時に不正を行ったとされる、デフィート・デバイス(無効化装置)が作動していたことを知らなかった。つまり、実験室内でサルが吸わされていたのは、比較的きれいなディーゼル車の排出ガスだったということだ。実際に公道を走行する際には、ディーゼル車がさらに多くの汚染物質を生成しているという現実は反映されていない。

では人間を使った実験に話を戻そう。この研究もEUGTによって行われたが、誤解されているのは、被験者がテールパイプから出る排気ガスを吸っていたという部分だ。『Stuttgarter-Zeitung』紙によると、被験者は実は二酸化炭素しか吸っていなかったという。アーヘン工科大学で行われた実験では、テールパイプから出た排気ガスが使われることはなかった。この実験状況に基づき、25人の被験者たちから検出可能な健康被害は見受けられなかったと結論づけられている。

もちろん、これにより研究の隠された狙いを弁解することはできない。不正なデフィート・デバイスを隠すことで、VWはその研究を有名無実化していた。この研究を行っていた研究者たちは、VWのデバイスについては知らなかったと報じられている。もしVWが、デフィート・デバイスの使用を隠したまま行われた研究に基づいて健康に関する主張を公表し、それによってTDIを販売していたなら、それはさらに深刻な倫理的問題と言えるだろう。

VWのTDIエンジンにおける大きな、そして分かりやすいセールス・ポイントは、「クリーンなディーゼル」ということだった。しかし、それは真実とは言えなかったということを、今や誰もが知っている。サルや人間を使った研究が、どれほどVWの主張に関与したかいうことは、結局のところ不明だ。確かに、実験に倫理的・人道的な問題はなかったのかもしれない。だが、VWが不正を行うことで、ディーゼル・エンジンの排出ガスを、少なくとも規定以上に人々に浴びせていたことは事実だ。それはVWの歴史にも大きな汚点を残す結果になった。


By ALEX KIERSTEIN
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

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