【東京モーターショー2017】マツダ、4ドア・クーペのコンセプトカー「VISION COUPE」を発表【動画付き】
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いよいよ開幕した東京モーターショー2017において、マツダがまた素晴らしい2台のコンセプトカーを公開した。まずは「次世代デザインの方向性を具現化したデザイン・ビジョン・モデル」と予告されていた美しいグランツーリスモからご紹介しよう。

「マツダ VISION COUPE」は、1960年にマツダ(当時は東洋工業)が初めて発売した4輪車「R360クーぺ」から始まる「クーペの伝統」に、次世代の「魂動」デザインを示唆するデザイン・コンセプト。決してマツダがラグジュアリー4ドア・クーペの市場に参入を宣言するものではなく、また特定のパワートレインの搭載を想定しているわけでもないという。実際に、展示されている車両は走るわけではなく、あくまでも「デザインのビジョンを示すもの」であり、このまま量産可能かどうかという質問には「はっきり言えない」そうだ。


要するにモーターショーではお馴染みの"ハリボテ"コンセプトカーの1台に過ぎないわけだが、はっきりそう言われたにも拘わらず、実車を前にすると、"どうしてこのまま市販化しないんだよ!?"と思わずにいられないほどリアリティを放ってくる(写真ではなかなか伝わらないのがもどかしいのだが)。"絵に描いた餅"とは思えない。思いたくない。

「それは、我々デザイナー・チームが、そういうふうにデザインしているからです」とマツダのデザイン本部アドバンスデザインスタジオでクリエイティブデザインエキスパートという肩書きを持つ岩尾典史氏は仰る。「一番大事なのは人。マツダは常に人を中心にしたクルマ作りをしているわけですから。(例え走らないデザイン・コンセプトでも)これを見た人の、気持ちが入っていけないと、何も意味がない」


「我々がよく言うのは、人とクルマの絆を強めたい。よく"クルマが良い"って言いますけど、そうじゃない。人とクルマがあって、初めて"良い"という関係が生まれるわけです。どんなに良いクルマだって、勝手に走るもんじゃないし。やっぱりその、人とクルマの結び付きというものを強めていきたい」

人とクルマの結び付きというのは、他のメーカーも色々考えています。人工知能とセンサーで人の感情を読み取ってそれに応えるとか。でも、マツダの場合はそういうのとは違いますね。

「クルマから一方的に人に結びつきたいと言ってもダメですよ。人の方からこのクルマと結びつきたいと思えなければ。やっぱり自分でステアリングを握って、シフターを操作する。もちろん先進安全機能やインフォテインメントは搭載されているんだけど、そういうのは必要なときだけちゃんと機能すればいい。いいんじゃないですか、そういう割り切りで。クルマの方から全部、何もかも人に与えてくれるというのが、"人を中心"とするということかというと、僕は違うと思う。クルマから人じゃない。人からクルマという考え方です。常に人の存在を念頭にデザインしているから、リアルなフィーリングを感じてもらえるんだと思う」


確かに、VISION COUPEは単に「美しい」とか「カッコイイ」という以上の感情の昂ぶりを誘発する。このクルマに乗りたい、所有したい、お気に入りの場所に駐めて眺めていたい、という情欲にも似た感情を引き起こす。それがつまり、"このクルマとつながりたい"と、人の方に思わせるということなのだろう。ターンテーブルの上で回転すると、ボディの上で光の反射がまさに"魂動"する。走らないクルマだと分かっているのに、躍動しそうな生命感が伝わってくる。


デザインについては、「マツダのクーペの伝統」を重んじながらも、具体的に過去の名車から引用するような手法は採っていないという。「ルーフラインはRX-7を、フェンダーはコスモスポーツをモチーフにしました...って、それじゃツギハギになっちゃうでしょ。伝統は受け継いでいますが、レトロにはしません。あくまでも伝統を、次世代の魂動デザインで表現するということです」。


岩尾氏が仰るとおり、VISION COUPEのデザインが凄いところは、人の郷愁に訴えるような安易な手法を採っていないことだ。レトロではない。だが、かといって奇をてらうでもなく、アヴァンギャルドでもない。レトロでもアヴァンギャルドでもないのに、まだまだ新しい魅力的な自動車デザインは生み出せるということを証明している。


インテリアもきっとクルマ好きの情欲を掻き立てるはずだ。幅広のセンタートンネルはFRレイアウトを想起させ、そこには思わず握りたくなるシフトノブがある。ドライバーの正面には金属のベゼルで囲まれた大きなタコメーターが備わり、スロットルを煽ればアナログの針が6時の位置から7,000rpmから始まるレッドゾーンを目指して駆け上がる。いや、本当はエンジンが搭載されていないと分かっているのに、そんな状景がリアルに想像できる。



マツダのVISION COUPEは、曖昧で楽天的な未来を絵に描いたコンセプトカーではない。見せているのは現実。つまり、マツダにはこんなクルマが作れますけど、買ってくれますか? と世界に問い掛けているのだ。だから、このクルマがRX-8の後継として路上を走れるようになるかどうかは、ビジネスとして成立する見込みがあるかどうかに掛かっている。現実は厳しい。しかし、我々クルマ好きはもはやリアリティのない夢が見られるほど無邪気でも呑気でもない。モーターショーで見たいのは、現実を動かす力を感じさせる夢。大袈裟に言えば、それが個人にとっても生きてゆくための希望につながるからだ。マツダの走らないコンセプトカーにはそれがある。電動化や自動運転以外で自動車の未来を夢見たいなら、東京モーターショーのマツダ・ブースには足を運ぶ価値がある。きっと現実的な勇気が湧いてくると思う。


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