12年落ちの初代シトロエン C5を10万円で購入した筆者が、最新のクリーンディーゼルを搭載したグランド C4 ピカソ SHINE BlueHDiに試乗するという連載企画。今回はそのディーゼル・エンジンについてのお話。

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【試乗記】中古シトロエン C5のオーナーが最新のグランド C4 ピカソに試乗 第1回「10万円で購入したC5は絶好調!」

【試乗記】中古シトロエン C5のオーナーが最新のグランド C4 ピカソに試乗 第2回「比較のため、一番高くて大きな現行モデルを借り出すことに」


欧州廃止が決定!?
最新ディーゼル事情


C4 ピカソ シリーズにはガソリン・モデルの設定もあるが、現在のウリはやはり昨年追加されたBlueHDiだろう。だが、本題に入る前にちょっと寄り道して昨今のディーゼルを取り巻く状況について語ってみたい。

ディーゼル・エンジンの場合、NOx(窒素酸化物)とPM(粒子状物質。つまりは黒い煤)はトレードオフの関係にある。つまり、NOxの値を低くしようとするとPMが垂れ流しになるし、反対にPMを抑えようとするとNOxの発生には目を瞑らなくてはならなくなる。

米国の排ガス規制を手本にした日本ではNOxに厳しい規制が施かれており、メーカーは規制に合致させるため、性能低下を覚悟で燃焼を緩やかかつ控え目としたことから、部分的な酸素不足で燃料が不完全燃焼を起こして大量のPMを排出した。しかし、石原都政でディーゼル車の排ガスの汚さが問題とされたことから、NOxだけでなくPMにも厳しい規制が施行され、結果的に小型のディーゼル車は日本市場から排除されることになった。いっぽう、欧州では交通インフラの主役は自動車ということもあり、社会が出力と燃費効率に優れた自動車を求めたこともあって、排気ガス規制もNOxに甘く、PMに厳しいものとなった。しかしその結果、欧州ではNOxによる大気汚染が深刻化して、人びとの健康被害が社会問題となってしまう。最近になって欧州各国の政府が「2040年までに内燃機関車の販売を禁止し、電気自動車へとシフトする」とヒステリックに言い出した背景にはディーゼル車の大気汚染問題がある。つまり、ガソリン車はディーゼル車のとばっちりを受けたということになる。



ディーゼル車の増大で
環境問題が深刻化した欧州だが...


15年くらい前の自動車雑誌には「欧州の人々は理性的で合理的な精神の持ち主であることから環境負荷が小さく、効率的なディーゼル車を選ぶ」などとぬけぬけと書かれていたりしたが、ハッキリ言ってしまえば寝言である。何のことはない我われ日本人が維持費の安さから軽自動車を選ぶのと同じように、欧州の人びともテメエの懐具合を慮ってディーゼル車を買っていたに過ぎなかったわけだ。そして、個々人が現世利益を追求した結果、ディーゼル車の増殖による環境問題を引き起こしてしまったのである。ことの重大さに慌てふためいた欧州各国政府は、深く熟考することなく内燃期間の前面禁止などという、どう考えても合理的でない判断を下してしまったということだ。そこには西洋コンプレックスの日本人が欧州の人々に勝手に期待したような理性も合理的な精神もなかった。

欧州を走るすべての自動車をわずか20年弱で電気自動車に置き換えるということは現実的に難しいだろう。充電インフラの整備はもちろんのこと、発電所の増設、送電網の強化などのインフラ整備には莫大なコストがかかるし、問題の多い原子力を使用しない限りは発電による新たな環境負荷を増大させてしまう。そもそも電気自動車にはバッテリー容量や充電時間などの問題があり、短期間で技術的なブレイクスルーが起きてこうした問題を解決できる可能性もあまり期待できない。となれば、電気自動車への全面シフトはなし崩し的に撤回されるのではないだろうか? 既存の内燃機関の技術をブラッシュアップしてさらなる環境対策を図りつつ、ガソリン、ディーゼル、電気自動車と仕様用途に応じて住み分けして行くしかないように思われる。



厳しい排ガス規制をクリアした
BlueHDiのテクノロジー


話がだいぶ横道に逸れたのでC4 ピカソ シリーズに搭載されるBlueHDiの話に戻る。

先ほども述べた通り、ディーゼル・エンジンの場合、NOxとPMはトレードオフの関係にある。これを欧州のユーロ6や日本のポスト新長期規制に適合させるためには、専用の排ガス処理システムが必要になる。

マツダのスカイアクティブDは圧縮比をディーゼルとしては異例に低い14:1まで下げたことで、トルクが若干抑えられた代わりに、NOxとPMの制御はエンジン本体対策と酸化触媒+フィルタの後処理システムのみで対応が可能となった。だが、シトロエンのBlueHDiは欧州車の例に漏れず、ディーゼルの熱効率の高さを手放す気はなかったようで圧縮比は16.7:1と高い。

もともと欧州製ディーゼルはPMの排出量が少ないこともあって、コモンレールを介した高圧燃料の気筒内直接噴射とDPF(微粒子フィルター)で黒煙の排出を規制値内にコントロールできるのだが、問題はNOxのほうである。BlueHDiではNOx対策として酸化触媒装置のほかに、メルセデス・ベンツやVWと同じく、尿素SCR(選択還元触媒)を用いている。これは専用のタンクに溜めておいた尿素水を排ガスに吹き付けることで、NOxを水と酸素、窒素、二酸化炭素に還元しようとするもので、シトロエンの資料によると、このシステムによって排出ガス中のNOxは90%も削減できるという。ただし、触媒は低い温度では十全に機能せず、冷間始動時には排気ガスが素通しとなってしまう問題がある。これに対してBlueHDiでは、SCRをDPFのエンジン側にレイアウトすることで、エンジンの冷間始動時からNOxの迅速な除去を図るとともに、DPFの効率を高めたという。

尿素SCRを使用するためには尿素水溶液「AdBule(アドブルー)」が必要となるが、点検補充は1年間もしくは1万kmに1回で済み、走行可能距離が2,400kmを下回ると、警告灯が点灯して残りのAdBlueで走れる距離がメーター上に表示される。AdBlueの補充費用はディーラー価格で5,000円程度、新車購入時から3年間は補充サービスが無料となるそうだ。

(次回へ続く)


「グランド C4 ピカソにはいつになったら乗るんだ!?」との声も聞こえてきそうですが、第4回で今度こそ乗ります!(編集部)

シトロエン・ジャポン 公式サイト
http://www.citroen.jp/


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