【論説】マツダとトヨタの提携から夢に描く、ロータリー・ハイブリッドのスポーツカー
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既にご存じの通り、マツダとトヨタが提携を強化することになった。発表の中で、両社は米国に合弁で完成車の生産工場を建設し、電気自動車(EV)の技術開発で協力すると述べている。しかし、今回の合意事項の1つから新たな可能性も見えてきた。「商品補完の拡充」という項目は幅広い解釈が可能なのだ。

両社は「今後もグローバルに商品補完の可能性を検討」すると述べている。マツダは北米で「Mazda2」(日本名:デミオ)をトヨタヤリス iA」のベースとして供給しており、今後は日本でもトヨタがマツダに商用バンを供給するという。では、それ以外の商品補完とは何が考えられるだろうか。我々の予想は2つある。1つは馬鹿げているが凄いクルマ(残念ながら、おそらく実現には至らないだろう)、もう1つは現実に即した方向性だ。

まずは楽しい方から検討してみよう。マツダ・ファンが長年心待ちにしているものと言えば? もちろん、ロータリー・エンジンのスポーツカーだ! マツダは、少数のエンジニア・チームがロータリー・エンジンの開発に継続的に取り組んでいると繰り返し述べているものの、市販化が実現する可能性は高いとは言えない。ロータリー・エンジンの本質的な燃費の悪さを考えると、排ガス規制が厳しさを増している今の時代には導入が難しいからだ。加えて、マツダは比較的規模の小さな企業であるがゆえ、あらゆる元手を活用する必要があるが、他のエンジンと基本設計を共有しないユニークなワンオフ・エンジンを持つことはコストが高くつく。マツダはこれらのハードルをどうすれば乗り越えられるだろうか。



我々の大胆な妄想では、マツダがトヨタと提携する意味がここにある考える。トヨタは財力に加えて、ハイブリッド車の分野で豊かな知識を持っている。つまり、ロータリー・エンジンのハイブリッドカーもあり得るのではないだろうか。

変わり種のロータリー・エンジンは、ハイブリッド車に採用することで2つの問題が解決される。1つは、もちろん燃費だ。ガソリン・エンジンが絶えず稼働する必要がなくなるからである。もう1つは、トルク不足だ。ロータリー・エンジンはトルク、特に低回転域で発生するトルクが小さいことは有名であるが、電気モーターを追加すれば、低速域のトルクを補うことができ、一方でロータリー・ファンお気に入りのエベレストのように高いレッドラインも維持できるだろう。この妄想は、トヨタが開発している全固体電池が比較的軽量で多くの電気を供給できることを考えると、一層甘美なものとなる。

そして、ロータリー・エンジンと電気モーターの組み合わせは、マツダに全く馴染まない発想でもない。様々な理由があったにせよ、同社はロータリー・エンジンを搭載したレンジエクステンダーEVの「デミオ」を製作したことがあるのだ。しかも同社は、今年3月にレンジエクステンダーEV向けのロータリー・エンジンに関連する特許を出願している。エンジンを発電機として使うレンジエクステンダーEVであれば、ロータリー・エンジンの軽量というもう1つの利点が活かせることになる。それはスポーツカーのプラットフォームにとっても価値の高い特性だ。

例えば、このパワートレインを拡大した「ロードスター」のプラットフォームに搭載したらどうだろう? コストを抑え、ベースの高い資質を活かし、コンセプト「Mazda RX-VISION(マツダ・アールエックス・ビジョン)」のような美しいデザインを与えれば、ハイエンドなGTとして売り出すことができるのではないか。

ロータリー・エンジンを積んだクールなスポーツカーが誕生するだけでなく、ラグジュアリーなGTであれば、高級市場を見定めているマツダの動向にも合致する。高額な販売価格も正当化することができ、より大きな利益も見込めるだろう。そんなクルマが実現すれば、将来的にマツダから発売されるハイブリッド車と、両企業の技術を照らす輝かしい光を当てる存在になるだろう。


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さて、ここまでちょっとしたファンタジーに夢を膨らませてきたわけだが、現実的な見解も示さなければなるまい。正直なことを言えば、おそらくこのロータリー・エンジンを搭載するハイブリッドのスポーツカーが実現することはないだろう。実際、マツダとトヨタの業務提携は、常識的で控え目なものになると思われる。両社の技術共有は主にパワートレインの開発に留まると考えられ、互いのモデルを供給し合うOEMは増える可能性があるものの、新型車両の共同開発にまで及ぶことはないだろう。

トヨタのハイブリッド技術がマツダにとって有益なことは明らかだ。マツダがそれを手に入れられたら、既に驚異的な燃費を達成しているマツダの「SKYACTIV」エンジンを、さらに上のレベルに引き上げることが可能だ。もし、マツダが仮定上の「SKYACIVハイブリッド」を新型クロスオーバー車に搭載すれば、デザイン、機能性、ドライビング・ダイナミクス、そして燃費のいずれにおいても優れたモデルとなり、消費者の興味を引くことは間違いない。

その一方で、マツダが内燃機関の専門知識をトヨタに供給すれば、トヨタは燃費を格段に改善できるだろう。さらに、ハンドリングに関してもマツダがトヨタにアドバイスを送るなら、我々としては大いに賛成だ(新型トヨタ「カムリ」に試乗した経験を踏まえると、そんな機会があれば十分改良の余地があると思われる)。


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また、売り上げの数字から見ると、コンパクト・ハッチバックについても、トヨタは「ヤリス」(日本名:ヴィッツ)を廃止して、マツダからMazda2(デミオ)の供給を受けた方がよい。米国における7月の販売台数では、トヨタ自身のヤリスより、マツダのデミオをベースにしたヤリス iA(上の写真)の方が、10倍近くも多く売れているのだ。そうすればトヨタは新型ヤリス(ヴィッツ)の開発費を節約することもできるし、マツダも販売ボリュームを拡大することができる。

以上が、我々がトヨタとマツダの提携に期待する事柄だ。実現の可能性はともかく、いずれにしてもこの提携が両社にとって利益拡大のチャンスであることは確かである。そしてそれはおそらく、消費者にとっての利益にもつながるに違いない。読者の皆様はどのようにお考えだろうか。是非、コメント欄やFacebookTwitterで意見をお聞かせ願いたい。


By JOEL STOCKSDALE
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

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