マツダ、ガソリンの圧縮着火を世界で初めて実用化した「SKYACTIV-X エンジン」を発表
マツダは8日、2030年を見据えた技術開発の長期ビジョン「サステイナブル"Zoom-Zoom"宣言2030」を発表した。その中核となる技術が、内燃エンジンのさらなる改良に挑んだ次世代エンジン「SKYACTIV-X(スカイアクティブ・エックス)」だ。

「私たちマツダは、美しい地球と心豊かな人・社会の実現を使命と捉え、 クルマの持つ価値により、人の心を元気にすることを追究し続けます。」

これが言葉で表したマツダの「サステイナブル"Zoom-Zoom"宣言2030」だ。地球(環境保全)と、社会(安心・安全なクルマによる自由な移動)、そして人(「走る歓び」を感じることで心を元気に)の全てのことを考えた、自動車メーカーの理想的な姿と言っていいだろう。だが、これを単なる理想や夢として語るのではなく、技術的な裏付けによって実現可能性を感じさせてくれなければ意味はない。



マツダはまず、CO2削減について「燃料採掘から車両走行まで」を考えた視点で取り組むと宣言。単なる"ゼロ・エミッション"、つまり走行時の排出ガスをゼロにするだけでなく、発電やそのための燃料採掘時に発生するCO2のことも考えると、「内燃機関自動車は、将来においても世界的に大多数を占めると予測され、CO2削減に最も寄与すると考えられる」とマツダの小飼雅道社長兼CEOは言う。まずは内燃機関で徹底的な理想追求を行い、これをベースに効率的な電気デバイス(アイドリング停止機構から、プラグイン・ハイブリッドまで)を組み合わせる。そしてクリーン発電が行われている地域や、政策で大気汚染抑制を図る地域には、完全電気自動車を導入する。これがマツダの目指す近未来の自動車産業だ。同社の予測によれば、2035年の時点でも内燃機関を搭載する自動車(ハイブリッドも含む)は全体の84.4%を占めるという。



内燃機関の理想追求、つまり理想的な燃焼を目指したマツダの次世代ガソリン・エンジンが「SKYACTIV-X(スカイアクティブ・エックス)」である。これは簡単に紹介すれば、ガソリン・エンジンの高回転域の伸びや排気浄化性と、ディーゼル・エンジンの方が優れる燃費やトルク、低回転域のレスポンスを併せ持つ、新しいガソリン・エンジンというこになる。それを実現するためにマツダは、ディーゼル・エンジンの特徴でもある圧縮着火を、世界で初めてガソリン・エンジンで実用化に成功させた。



通常の火花点火では失火してしまうレベルまで燃料を希薄化した状態で、低回転域では圧縮着火を行い、高回転域においてはシームレスに火花点火へと切り替える。今まで困難とされていたこの制御を実現したのが、点火プラグを制御因子として活用する「SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition:火花点火制御圧縮着火)」というマツダが独自に開発した技術だ。



SKYACTIV-Xエンジンの特長は以下の通り。

・スロットルバルブの抵抗が少ないため、吸気がシリンダーに入るまでの遅れが少なく、アクセルペダルを踏み込んだ際の初期レスポンスが良い。他社のダウンサイジング・ターボと比較すると、40km/hの速度から加速した時には、3秒後に1.7mもの差が付くという。

・現行のガソリン・エンジンよりも全回転域でトルクが大きく、またディーゼル・エンジンと比べると高回転域で加速が鈍らない。

・燃料消費率が大幅に優れるだけでなく、燃費特性がフラットなので実用走行との差分が少ない。

つまり、「走りの良さ」と「燃費の良さ」を両立したエンジンということになる。


マツダによれば、アクセル・ペダルを10%踏んでいる40km/hの走行時から、アクセルの開度を50%まで踏み込んだ時、CO2排出量は1.5リッター・ディーゼルの「デミオ」並み、3秒間における加速は2.0リッター・エンジンの「ロードスター」に迫るという。

商品化が実に楽しみなこのSKYACTIV-Xエンジンが、市販車に搭載されるのは2019年の予定。同年に車体プラットフォームの「SKYACTIV-BODY(ボディ)」と「SKYACTIV-CHASSIS(シャシー)」も第2世代に切り替わる。同時に「魂動」デザインや「マツダ・コネクト」も次世代へと移行する予定だ。

さらにマツダのロードマップを見ると、同時期に電気自動車(レンジエクステンダー付きも含む)とマイルド・ハイブリッドの投入が予定されている。翌2020年には「SKYACTIV-D」ディーゼル・エンジンも第2世代へ。そして現在は「i-ACTIVSENSE」と呼ばれる先進安全機能も、今年4月に公開された自動運転技術「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」へ進化させ、2025年にまでに標準装備化を目指すという。



マツダの掲げる「走る歓び」とは、単に運転が楽しいクルマというだけではない。例えば高齢になって身体機能が衰えても、それを自動運転技術がカバーしてくれることで自動車の運転や移動を諦めずに済む歓び。また、なるべく環境負荷を抑えながらクルマを走らせることが出来る歓び。さらに、デザインが美しいクルマに乗れる歓び。そしてもちろん、「人馬一体」の運転を味わうことで、心と身体が活性化される歓び。そんなクルマによる様々な"歓び"の実現をマツダは目指している。

2012年の先代「CX-5」から始まったマツダの「新世代商品群」も、2019年に登場する新型車ではさらなる技術的進化が見込まれる。それによって我々の"走る歓び"は、どのように深化するだろうか。自動車メーカーの使命とは、環境負荷を抑えながら人類の安全な移動手段を提供することだけに留まらず、何よりそこに生活する人間の心を豊かにしなければならない。美しい地球と一緒に"Zoom-Zoom"な歓びも未来の子供達に残してやりたい。マツダのサステイナブル"Zoom-Zoom"宣言2030には、そんな想いが込められているように感じた。


Related Gallery:MAZDA ROADSTER RF

Related Gallery:mazda ROADSTER NR-A

Related Gallery:MAZDA CX-5