2017年の今年、僕は恒例のニュルブルクリンク24時間にTOYOTA GAZOO Racing Team Thailandから参戦することにした。チームタイランド。そう、東南アジアのタイトヨタが主体となりモータースポーツ活動を進めているチームに単身加わっての参戦となったのである。


 マシンはタイで販売されているカローラ・アルティス。日本人には馴染みが薄い。タイの国民車とも言われるもっともポピュラーなモデルがベースだ。ニュルブルクリンク規定のSP3クラスにモディファイ。名機3S-Gをチューニングし、6速シーケンシャルに換装するなどして鍛え上げたマシンで戦った。


 ドライバーもコテコテのタイメンバーである。♯123と♯124の2台を投入。僕以外はすべてタイ人という8名構成。メカニックやマネージメントは、TRDタイランドと独ザクスピードと、日本からのサポートメンバーが加わるという混成部隊。だが本質はタイチームと考えていいだろう。


 結果から言えば、度重なるトラブルに見舞われ、地を這うようにして、完走するのが精一杯のレースとなった。予選はクラス3位と5位。決勝スタート後にはトップグループを快走したものの、レースが開始されてから数時間後、夜を迎える頃にトラブルが頻発。修理をしてコース上に舞い戻るものの、さらに別のパーツがトラブルに見舞われるという展開。満身創痍での完走だったのだ。


 チームタイランドはすでに4回のニュルブルクリンク24時間参戦実績がある。クラス優勝も経験している。けして侮れないのだが、今年は巡り合わせが悪かったと言えるだろう。


 そんな屈辱のレースではあるものの、タイのモータースポーツ文化を知ることができたのは大きな収穫だった。日本でもっとも華やかなスーパーGTの海外戦がタイで行われることでも想像できる通り、本格的なサーキットは揃っている。市街地レースも盛んだ。モータースポーツに熱いお国柄なのだ。


 今回コンビを組んだドライバーも、日頃は本国を舞台に数々のレースで実績を上げている。タイトヨタの契約ドライバーであり、相当に名が知れているという。


 彼らと触れ合い話を聞くうちに、タイのモータースポーツは、あるいは日本より盛んなのかも知れないと思わせられた。多くの有名タレントが参戦しているという。テレビや新聞でも頻繁に報道されているとのことだ。実際に僕らの活動はタイの一般新聞で紹介されたし、今回の我々の参戦を報道するために、40媒体というマスコミが訪れた。記者会見も行われたし、写真撮影も少なくなかった。日本よりも盛んだと言われるのも納得する。


 タイではトヨタ車のシェアは圧倒している。トヨタ自動車が世界で初めて海外に進出したのはアメリカではなくタイだったという。すでに60年の歴史がある。 

トヨタとタイの絆を表すこんなエピソードがある。

ある時、国営プロトンを持つマレーシアの国賓がタイのトップにこう言った。

「あなたの国も、国営で国民車を開発するべきですよ」と。

するとタイのトップはこう答えたという。「私たちにも国民車がありますよ。トヨタというクルマがね」

トヨタはすでにタイに根付いているのだ。


 僕はTOYOTA GAZOO Racing所属であり、GAZOOの哲学や活動をアジアに拡めるという使命を授かっての参戦だった。だが、すでにタイは多くのクルマ好きに溢れ、ヒートアップしているのだ。TOYOTA GAZOO Racingはこれからアジアにも、志や想いを伝えていくことになった。その急先鋒がタイであり、そのために僕がチームタイランドと参戦することになったのだ。だが、教えることだけではなく、学ぶことも多かったのである。


 微笑みの国タイは、常に心穏やかであり、無益な争いごとを嫌い、奉仕の心を持つ国民性である。貧富の差は消えてはないが、少なくともクルマへの愛情は深い。技術的には今後に期待したいが、TOYOTA GAZOO Racing Team Thailandから目が離せそうもない。


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■TOYOTA GAZOO Racing 公式サイト
http://toyotagazooracing.com/jp/