山内一典氏が「グランツーリスモSPORTS」開発スタジオを案内「今作がグランツーリスモの元年となる」

4年ぶりの新作は、すべてを一新して登場


発売が延期されてヤキモキしていた「グランツーリスモSPORT」の発売日が、2017年10月19日(木)に決定した。

世界累計販売7690万本を超えるグランツーリスモシリーズの最新作をいち早く体験してもらうべく、マスコミ向けに体験会と開発元のポリフォニー・デジタルのスタジオ見学会が行われた。

プロデューサーである山内一典氏みずから「グランツーリスモSPORT」の説明やスタジオを案内。最新作のゲーム内容やこだわりの作り込み度が分かった。

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プラットフォームがPS3からPS4(PS4 Pro)と世代が変わり、これまで積み重ねてきたクルマやコースなどのデータをリセット。挙動シミュレーターの一新や物理ベースレンダリング技術の採用など、ゼロからのスタートといっても過言ではない新たなグランツーリスモへと変貌した。

グラフィックは、最大4K出力が可能となり(PS4 Proのみ)、60fps、HDR(HDRに対応したディスプレイが必要)、ワイドカラープロセスに対応している。単なるHDR信号のフォーマットに合わせただけでなく、ソニーと共同開発したHDR・ワイドカラーキャプチャー専用デバイスを用いて、素材制作からアウトプットまでHDR・ワイドカラープロセスで製作している。また、従来のSDRに対し100倍の輝度レンジである最大1万nits(nitは国際単位でcd/m2)までサポートし、将来を見据えた作りになっている。


▲従来のSDRシステムと今回のHDRシステムでの輝度レンジの違い。


▲SDR/sRGB(左)とHDR/ワイドカラー(右)での表現力の違い。この表現力を体感するにはHDR対応のディスプレイが必要だ。

サウンド面は、クルマの音作り用のサウンドシミュレーターを再設計し、エンジン音を気筒数やシリンダーレイアウトといったレベルからシミュレート。リアルなクルマのサウンドを録音するだけでなく、理想的な音を再現している。また、トランスミッションノイズやトルク伝達の揺らぎも表現。聴覚からも実車を運転している感覚へ導いてくれる。

今回、すべての車種のモデリングをしなおしたことで、収録車種は150台以上とこれまでより大幅に数は減ってしまったが(GT6が1200台以上)、1台1台のモデリングに対するこだわりはものすごい。まず、従来は多数撮影して写真を元にモデリングしていたが、今回はまず実車をレーザースキャンし、それを元にキレイな面(レーザースキャンのままだと点群で欠けや微妙な誤差もある)になるよう人間がモデリング。内装もレーザースキャンしたものや写真から起こし、メーターの文字盤やレザーシートのステッチの数といった細部に至るまで、再現している。メーカーが所有する製造用のCADデータに引けを取らない精度だと山内氏は語る。質感も実際と見比べて光の反射率、塗料に含まれるフレーク、レザー素材の質感など、遜色ないよう調整している。ライト周りもきちんとリフレクターやレンズの形状も作っているので、きちんと光が拡がるようになっていて、1台のモデリングが完成するまで約半年かかるという。1台の車は分担作業ではなく1人が責任をもって仕上げていくそうだ。




▲同じ質感でないと、実車と同じ見え方にならない。実車の写真と見比べて細かく調整していく。プレイ中はこのモデリングを元にゲーム内の負荷に合わせて、解像度を落としている。

コースは、実在するものや公道をモチーフにしたもの、ダートなど、17ロケーション28レイアウトを収録。実在するコースは、まず空撮によるレーザースキャンで大まかなコースレイアウトを作り、コース自体は実際に走行してGPSと連動させたレーザースキャンを実行。これにより、空撮だと数センチ単位で誤差が生じたものが、ミリ単位の誤差に精度をあげられるという。コースのアスファルトやダート、コース脇の草地などは、単純に撮影したものをテクスチャー化しているのではなく、きれいに見えるように計算ベースで生成した上でテクスチャーとして吐き出している。これにより連続したテクスチャーが貼り付けたような違和感がない仕上がりになっている。

また、樹木に至っては現地の植生を理解し、現地で葉っぱなどの反射率や透過率、色を測定。葉っぱ一枚一枚枝から生やした精度の高い樹木を作っている。このため、実際にコース脇に生えている樹木の形とは違うが、見た目が絵になる枝ぶりを意識して作っているそうで、例えば夕焼け空にシルエットで浮かぶ樹木がキレイであることが重要だとのことだ。コース脇のオブジェクトに関しても同様だ。たとえば鈴鹿の観覧車。走行中はほとんど気にならないこのオブジェクトも、高精度で作り込まれている。これにより、解像度を落としても、高い精度の情報が残るのでボルトの頭にハイライトが入って少し光るといった表現が可能になる。

収録されているおもなコースは以下の通り。同じコースでも太陽の高度や空模様が異なるコンディションが選べるので、天候に応じて雰囲気が違ってくる。またナイトコースも収録されているので、ヘッドライトやテールライトといった光の演出にも注目してほしい。


▲京都ドライビングパーク


▲ブルームーン・ベイ・スピードウェイ


▲コロラドスプリングス・レイク


▲ノーザンアイル・スピードウェイ


▲ニュルブルクリンク 北コース


▲サルディーニャ・ウィンドミルズ


▲東京エクスプレスウェイ 中央ルート 外回り


▲東京エクスプレスウェイ 東ルート 外回り。上が雲天、下が晴天時の表現の違い。

ゲームを楽しむ人にとって、挙動は気になるところだろう。今回、ゼロから刷新したのはタイヤの接地に関する挙動部分。実際にニュルブルクリンク24時間レースに参戦したり、ル・マン24時間レースのLMP1マシンの技術サポートを通じて知見を蓄積したりしたそうで、これらも反映して、車両挙動シミュレーションを作り上げた。よりリアルさが増した一方で、今回のゲームのコンセプトの1つとして、「7歳から77歳まで幅広い人に楽しんでもらいたい」ということで、運転に不慣れな人でも、設定により高度なドライビング・アシスト機能が様子されているので、誰でも能力に合わせて運転を楽しむことができるようになっている。また、従来からあるライセンスモードは、キャンペーンモードとして4つのゲームを用意。どう走ればいいのか動画で解説が見られる「ドライビング スクール」やモータースポーツの醍醐味を楽しむ「ミッション チャレンジ」、各コースの一部区間の走行方法を学ぶ「サーキット エクスペリエンス」、複数のクルマで走るときのマナー「レーシングエチケット」によって、初心者が運転方法を学ぶことができる。


▲セッテイングの画面


▲サーキット エクスペリエンスやドライビングスクールなどの画面。オール金を目指して頑張ろう。

今回のグランツーリスモSPORTで変わったのが、まずクルマの購入時に利用する「ブランドセントラル」だ。クルマを購入するだけでなく、そのメーカーの歴史を同じ年に世界的に何が起こったのかを並列させて見られるようになっている。写真や動画がふんだんに用いられているので、ミュージアムにふさわしい内容だ。


▲購入車種の選択画面。ボディーカラーも選択できる。


▲各メーカーの歴史を知ることができるミュージアム。

新たにFIAとグランツーリスモが提案するオンラインレーシング「スポーツモード」を用意。同じレベルのプレイヤーとマッチングする「アドバンスドマッチメイキング」やマシンの性能を同等に揃えて対戦などが可能だ。レベル調整のためドライバーレーティングとスポーツマンシップレーティングの2つの指標を用意し、チャンピオンシップレースなどの成績など一定の条件を満たすと、ASN(FIAが指定する各国の管理団体)から「FIAグランツーリスモ デジタル ライセンス」が発行されるシステムになっているので、やり込むモチベーションにもなる。

従来から撮影モードが用意されていたが、HDRワークフローと物理ベースレンダリング技術による新たなフォーマット「スケープス」が搭載された。世界各地の写真が用意され、ライティング情報だけでなく空間情報も持っているので、写真の中にクルマを配置して撮影することを可能にした。撮影スポットは1000ほど収録。今後オンライン経由で追加される可能性は高い。クルマにデカールを貼り付けたりカラーリングを変更したりできる「リバリーエディター」も搭載。さまざまなデカールが収録されて、自由に貼り付けられるが、自分で作成したものも貼り付け可能。作成したデザインは、ほかのプレイヤーとシェアすることもできる。ヘルメットやレーシングスーツもカスタマイズ可能で、オリジナルデザインで各種レースに参戦すれば、ほかのプレイヤーの印象として残るだろう。ソーシャル機能も用意されており、ギャラリーやデカールを公開して、スマホのコンパニオンアプリを通じて楽しめる。


▲スケープスモードは、写真を選んでクルマを配置し撮影できる。クルマは複数配置可能で、エフェクトもかけられる。


▲このように、実際にはありえない場所にクルマを配置して撮影を楽しめる。太陽光の当たる方向だけでなく、水面にきちんと写り込んでいるところに注目。

PS VRで体験できるのも新たな機能の1つ。アーケードモードに専用の「VRドライビング」を用意。今回プレイした時点ではコースはダートとサーキットの2つしかプレイできなかったが、今後増やしていくという。ドライブシートに座っているような感覚でプレイできるのは非常にリアルで、このモードはぜひ遊んでもらいたい。

グランツーリスモも初代が発売されてから今年で20年。山内氏にこのシリーズを手がけたときの理想にどこまで近づいているのか伺ったところ「GT6まではなかなかそういう実感はあまりありませんでした。PS3のアーキテクチャーがあまりにも複雑すぎて、(性能は高いけど)殆どがシステムの開発にエネルギーをそそがなければならず、あまりクリエイティブなことに時間が割けませんでした。PS4はバランスの良いハードウェアなので、システムの開発はある程度順調にいったので、クリエイティブな面に集中できました。結果として、僕の中ではGT4を作ったあと、GT5、GT6とグランツーリスモシリーズとしては伸び悩んでいた時代なんですね。一緒に作っていて苦しかったし。ようやくグランツーリスモSPORTで、気持ちよく進めるようになったという印象がありますね。グランツーリスモSPORTの発売を延期したのも、ある意味このままの調子でやっていけばかなり理想的なものができる手応えがあったので、中途半端なものは出したくなかったんですよね。ですから、グランツーリスモSPORTは新しいグランツーリスモの始まりだと思います」。


▲山内氏の執務室。この場所でイラストを描いたり、音楽を弾いたりといった創作活動も行っている。

グランツーリスモSPORTの価格は、通常版・ダウンロード版通常版が6900円、初校限定リミテッドエディションが9900円、ダウンロード版デジタルリミテッドエディションが7900円(いずれも税別)となっている。

PS4とPS4 Proとの違いは、PS4 Proは4Kに対応しているのと、処理的に余裕があるのでグラフィック面がよりキレイに見えるとのことで、余裕があればPS4 Proを購入しかつHDR対応ディスプレイでプレイしてほしい。なお、実際に体験してみたレポートは別記事で紹介する。

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※初出時製品名のスペルが間違っておりました。お詫びし訂正いたします。