後輪駆動のスバル「WRX」も登場! 映画『ベイビー・ドライバー』のスタントマンが撮影の舞台裏を語る
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もし貴方が我々と同類であれば、エドガー・ライト監督の映画『ベイビー・ドライバー』(2017年8月19日に日本公開予定)の公開をとても楽しみにしていることだろう。カーチェイスを中心にしたクライム・ムービーで、しかも音楽が重要な要素として関わっている。予告編を見て気付いたことは、いつか見たスタント映像とクルマの走りが似ている、ということだった。ちなみにそれは、『ワイルド・スピード』シリーズで繰り広げられる"現実離れした"スタントのことではない。今回、『ベイビー・ドライバー』に出演するスタント・ドライバーの1人であるジェレミー・フライが、期待どおりのスリリングなドライビングについて語ってくれた。それを聞いて我々はさらに公開が楽しみでたまらなくなった。



話を進める前に、まずはステアリングを握るこのヒーローについてご紹介しよう。フライはプロのスタント・ドライバーだが、もともとはスタント技術を専門に教えるドライビング・スクール「モーション・ピクチャー・ドライビング・クリニック」で、テクニックを教える指導員だった。そこで12年の勤務を経た彼は、最終的に指導員のトップとなる。彼はまた、1996年型フォード「マスタング」を手に入れドリフト走行を習得し、実際にラリーにも出場していたという。

これまでに『ジョン・ウィック』を初めとする多くの映画スタントに関わってきたフライだが、所有車のラインアップを聞けば誰もが納得するように、彼は紛う事なき生粋のエンスージアストでもある。そのコレクションは、SR20型直列4気筒ターボ・エンジンを搭載する日産「180SX」を初め、チャンプカー・ワールド・シリーズやル・マン(Le Man)ならぬ"レモン"(LeMon: lemonはスラングでポンコツ車のこと)24時間耐久レースに出場した日産「240SX」、1983年型トヨタ「カローラ」のラリーカーから、1959年型「モーリス・マイナー」に至るまで実に様々だ。さらには、トヨタ「プリウス」まで通勤用に所有しているというが、ガソリン価格の高いカリフォルニア州に住んでいる彼を責めることはできない。

Car chase from TriStar Pictures' BABY DRIVER.

撮影現場でフライは何種類ものクルマを運転したが、その中にはもちろん、主役の艶やかな2006年型スバル「インプレッサ WRX」もあった。映画の主人公と同様に、このクルマを見た目で判断してはいけない。フライによれば、撮影用に数台が用意されていたこのクルマには、それぞれ異なる改造が施されているという。それらの中で最もノーマルに近い車両は、市販されている状態の「WRX STI」とほとんど変わらないが、リア・スポイラーだけが「WRX」のものに交換されている。そして最も過激にチューンされたWRXはというと、最高出力が320馬力以上に引き上げられ、STI製の強化クラッチとディファレンシャルを組み込んだ物だったそうだ。

それからちょっと"特殊"な2台のWRXも撮影で使用された。1つはオートマチック・トランスミッション仕様なのだが、運転席や操作系がルーフの上に設置されている。これによってクルーは実際に運転しているスタント・ドライバーの姿がカメラに映ってしまうことを気にせず、俳優が"運転"しているところを撮影できた。そしてもう1台は、フライが最もお気に入りだったというクルマだ。そのWRXは200馬力程度とパワーは控え目だが、後輪駆動に改造されているのだ。

Jeremy Fry (stunt driver, top) with Ansel Elgort and Jon Bernthal on the set of TriStar Pictures' BABY DRIVER.

スバルの他にも、この映画にはシボレー「アバランチ」ダッジ「チャレンジャー SRT」メルセデス・ベンツ「S550」などが登場する。中でもメルセデスには手を焼いたそうだ。スタント・ドライビングの際にトラクション・コントロールやスタビリティ・コントロールの介入を防ぐため、特別なダイノ測定用モードを使ったのだが、そうすると電子制御リミテッド・スリップ・ディファレンシャルも作動しなくなってしまい、ドリフトさせるのが難しい。この問題を解決するため、機械式のLSDを取り付けて撮影に臨んだのだが、今度は車軸が折れてしまったという。フライは「車軸がスキットルズ(小さな粒状のフルーツ・キャンディ)のようになってしまった」と話している。

幸いなことに、スバルはハードな撮影にも耐え抜けるクルマだったので、フライが誇るスタント・シーンも無事に収録できた。彼が「180 In-and-Out」と呼ぶこのスタントは、文末の予告映像で見ることができる。このスタントはスピードを維持するのが非常に難しかったそうだ。55mph(約88.5km/h)の速度で右に180度スピンターンしてから再び左向きにターンさせて前を向き、そのまま道路を走り抜けるというスタントである。練習した時よりも路面が滑りにくかったことで余計に難しくなった。そこで道路に水を撒いて滑りをよくすることになったのだが、濡れた路面でやるのは初めてだったので、さすがのフライも神経質になったそうだ。しかし、予告映像をご覧の通り、彼は見事にやってのけたらしい。

Car chase from TriStar Pictures' BABY DRIVER.

この映画のスタント撮影は、全て人間が実際に運転している。コンピューター処理は画像をきれいするためだけに使われ、運転をより派手に、危険に見せるような加工はしていないという。しかも、スタントの多くは最初から最後まで通して撮影されたもので、編集でつなぎ合わせたりもしていないそうだ。

以上の様な話を心に留めておけば、きっと『ベイビー・ドライバー』の最高で本物のカーチェイスを、より一層楽しめるに違いない。ますます公開が待ちきれない。




By Joel Stocksdale
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

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