フォルクスワーゲン「ゴルフ GTI」と「ゴルフ R」、どちらを購入するべきか?
もし貴方が1970年代にフォルクスワーゲン(VW)オーナーだったなら、初代「ゴルフ」と出会った時のことを覚えているはずだ。それはきっと、初めてムーン・ウォークを見た時と同じくらいの衝撃を受けたのではないだろうか。あれから市場は拡大したが、本質的には何も変わっていない。「ビートル」から25年の時を経てVWが世に送り出したゴルフは、フロントに水冷エンジンを積む前輪駆動。つまり、ビートルとは真逆のクルマだった。その関係は、リヴァプール出身のポール・マッカートニーに対するロンドン育ちのミック・ジャガーのようなものだ。当時、空冷エンジンを搭載するVWのアイコン的なクルマの後をゴルフが継ぐことになるなんて想像したのは、熱心な自動車雑誌の愛読者だけだった。しかし、VWはそれをやってのけた。



ゴルフの新しいFFプラットフォームは、大学に進んだ子供たちに与えるクルマとしても最適だったし、また、少人数の家族や子供が巣立った夫婦などにとっても理想的なクルマだった。さらに、ミニ・クーパーの成功を見たヴォルフスブルクのフーリガンたちが、ゴルフのホットハッチとしての潜在的能力に気付くまで、それほど時間は掛からなかった。そうして「ゴルフ GTI」が誕生した。それはフーリガンには似つかわしくない実用性も備えたクルマだった。

それから40数年が経ち、7代目ゴルフをベースとする現行のGTIは、ますます素晴らしいクルマになっている。サイズは大きくなったが、ほぼ全面的に成熟が進み、依然として初代GTIから愛されてきたコンパクトで俊敏なクルマという本質は変わっていない。「ゴルフ R」は一見するとこのゴルフ GTIとよく似ているので間違えやすいのだが、実際に運転してみると両車は全く違うクルマだということがよく分かる。


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ゴルフGTI
シボレー「サバーバン」はテキサス州ダラスで、スバル「アウトバック」はワシントン州シアトル、ゴルフ GTIはワシントンD.C.やバージニア州郊外で人気が高いと言われている。まあ、それも納得だ。ゴルフ GTIはコンパクトで駐車がしやすい。ターボチャージャー付き4気筒エンジンは最高出力210hp(日本仕様は230ps)を発揮し、運転すると実に楽しい。D.C.の週末は近隣からの観光客で混み合う場所なので、取り回しの良いゴルフ GTIはなおさら重宝がられるに違いない。

米国で販売されるゴルフ GTIには、2017年モデルから「パフォーマンス・パッケージ」と呼ばれる仕様が追加された。"パフォーマンス"は名前ばかりのものではない。エンジンのパワーは10hp高められ、電子制御式トルクセンシング・リミテッド・スリップ・ディファレンシャル「VAQ」や18インチ「Nogaro」アロイホイール、バイキセノン・ヘッドライトを装備し、ブレーキもゴルフ R用にアップグレードされる。



トランスミッションの選択が引き続き可能なことは嬉しい限りだ。6速マニュアルの他に、VWの優れたデュアルクラッチ式「DSG」トランスミッションも、1,100ドル(約12万4,000円)のオプションとして用意される。アイオワ州デモインに住んでいれば6速MTを選ぶが、D.C.では1,100ドルを余分に支払ってでもDSGにしたい。燃費はMTの方がわずかに優れるが、通勤時の混み合うD.C.で、DSGはドライバーの正気を保つのに役立つだろう。さらにターボチャージャー付き2.0リッター・エンジンが低回転から発生する35.7kgmの最大トルクは、不注意なドライバーが引き起こすトラブルから逃げるのにも有用だ。



ゴルフ GTIのパワーと安定感のバランスは、他の似たようなクルマと一線を画している。ゴルフ Rを含め、もっとパワーが大きなクルマや、外観が派手なクルマはあるが、全長4,275mmと車重1,380kgの車体に、これほど多くの美徳が詰め込まれたクルマは他にない。

価格はたったの2万6,000ドルから(日本の販売価格は389万9,000円から)なので、3万ドルあれば十分に快適な装備が整う。チェック柄のシートやメタリック・ペイント、10年の延長保証も付けられる。



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ゴルフ R
4万ドルも出せばレクサス「ES 350」が買える米国中部では、ゴルフにそれほどの金額を支払おうという人はほとんど(あるいは全然)いない。一般的な家庭では、普通のゴルフ2台分の価格が付けられたゴルフ R(日本での販売価格は549万9,000円から)を買おうとは思わないのだ。

外観では、RとGTIの違いはほとんど分からない。ホイールが少々攻撃的なデザインで、フロント・バンパーの開口部がやや大きい。しかし、全体的な雰囲気は高性能車というよりタクシーに近い。運転していても、速いクルマに乗っているようには見えないだろう。



ゴルフ Rのエンジンは、GTIと同じ2.0リッターながら最高出力292hpと最大トルク38.7kgm(日本仕様は310psと40.8kgm)を発生し、そのパワーは4輪すべてに伝えられる。その結果、路面状況や天候を問わず、常にスムーズにパフォーマンスを発揮できる。

シートはチェック柄ではない。オールブラックのレザー・シートは真面目すぎるほどで、BMWやメルセデス、ポルシェなど他社の高性能モデルのような明るさは感じられない。コンパクトで軽量な車体に300馬力のパワーを備えているのだが、乗員はそれに気付かないかもしれない。



GTIとRには1万ドル以上の価格差がある。4輪駆動が運転に必要というよりもライフスタイルの象徴でしかないサンベルト地帯に住んでいるのなら、GTIを購入するのが賢明な選択だろう。しかし、もしスノーベルト地帯に住んでいて、クルマにバーニー・サンダースのステッカーをまだ貼っているのであれば、ゴルフ Rに乗って自分のフーリガン的属性を社会的に示すこともできる。


By DAVID BOLDT
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

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