【試乗記】ロータスの新型「エヴォーラ スポーツ 410」は、単に10馬力アップしただけではない
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新しいオモチャを手に入れた数週間後に、もっと良い新型が発売されたら、きっと腹が立つに違いない。ロータスの「エヴォーラ400」はまさにそんな例である。この2+2シーター・クーペの軽さと古典的な乗り味、優れたハンドリングが顧客から絶賛されているちょうどその時に、ロータスはさらに軽量でパワーが向上した「エヴォーラ スポーツ 410」をこっそりと作っていたのだ。



この新型モデルに発表会で試乗した印象を以下にまとめてみた。

・新型スポーツ 410は後部座席が省略されているので、子供を乗せたい人には向かない。他にもエアコンやシート・ヒーター、ナビゲーション・システム、サブウーハー&アンプ、そしてシート後方のガラス、防音材、ドアのトリム、マッドフラップが取り除かれた。その結果、バックミラーに映るのは恐らくカーボンファイバーのステーぐらいだろう。

・他にも軽量化のため、ルーフやテール・ゲート、リア・ディフューザー、フロント・アクセス・パネル、スポーツ・シートなどがカーボンファイバー製となっている。さらにバッテリーを小型のリチウムイオンに置き換えることで、新たにトランスミッション用オイルクーラーを追加しながらも、乾燥重量はエヴォーラ 400より70kgも削減されて、1,325kgを達成。オプションのチタン製エキゾーストは、さらなる重量の削減と同時に排気音の向上をもたらす。

・軽量化されながらも、路面に押しつけられる力は増している。フロント・スプリッターとリア・スポイラーの改良によって、これまでと同じ空気抵抗率を保ったまま、ダウンフォースは15%向上したという。




・ロータスは、トヨタから供給を受ける3.5リッターV型6気筒スーパーチャージャー付きエンジンにも手を入れた。最高出力は400hpから410hpに、最大トルクは41.8kgmから42.8kgに引き上げられ、0-60mph(約96.6km/h)を6速MTでは4.0秒、6速ATなら3.9秒で加速(AT)。最高速度は305km/h(MT)に達する(ATは280km/h)。

・軽量化された車重に合わせ、サスペンションもダンパーとスプリング・レートが見直された。油圧式パワー・ステアリングや、APレーシング製2ピース・ブレーキローター、トルセン式LSD(MTのみ)を装備することはエヴォーラ 400と変わらないが、スポーツ 410は軽量鍛造アルミ・ホイールに装着するタイヤが「ミシュラン パイロット スポーツ2」に替わった(前235/35R19、後285/30R20)。



・以上の様な改良によって、当然ながらパフォーマンスも向上している。ロータスのテスト・コースでは、2008年に登場した初代エヴォーラより13秒、エヴォーラ 400より3秒も速いラップ・タイムを記録したという。へセルにあるテスト・コースは、公道に比べると路面が非常に滑らかであるため、現実的にはそこまで違いが出るとは限らないが、参考にはなるだろう。



・試乗してみると、既に優れていたクルマに施された様々な改良による効果が、はっきりと実感できた。ステアリングは非常に正確かつ高精度で、路面の状況や、どのタイミングでどの程度ステアリングを切るべきかが良く分かる。シャシーの応答速度も素晴らしく、コーナーを素早く、しかも十分に安定した姿勢で曲がっていく。

・舗装の荒れた路面における乗り心地も特筆に値する。ライバルとなる2シーター・クーペのスポーツ・バージョン(どんなクルマを指しているかはお分かりだろう)と異なり、このエヴォーラは日常的に使えるはずだ。優れたシャシーとはどんなものか、ステアリングが正確とはどういうことか、それを説明するために長い時間を費やしてきた自動車ジャーナリストたちは、このクルマに乗ったときに「まさしく、こういう感じだ!」と口を揃えて言うだろう。



・過給器が付いたトヨタ「カムリ」のエンジンは、このカリスマ的なクルマの切り札というわけではないが、それでも1,500rpmという低回転から、咆哮が高まる最高域の7,000rpmまで、巷に溢れる元気なクルマたちを凌ぐほどの速さを発揮する。運転免許を取り消されたくなければ、公道では5,000rpmへ達する前にシフトアップした方がいい。

・このクルマの泣き所は、マニュアルのギア・シフターだろう。ケーブル式のシフトはエヴォーラ 400で改良されたものの、この410になっても操作感は良いとは言えない。引っ掛かるような抵抗が感じられ、シフトゲートに沿って丁寧に導いてやる必要がある。常にミス・シフトしないように気を付けなければならない。6速トルクコンバーター式オートマチック・トランスミッションは代替手段として悪くはないが、映画『プリティ・ウーマン』でロータスを運転するリチャード・ギアのような人物でもない限り、この手のクルマをオートマで乗るのは些か残念だ。



・このエヴォーラ スポーツ 410は、現在販売されているスーパーカーの中で、最も直観的にドライブできる1台だ。ドライバーは自分の運転技術に限界を感じて失望することがあるかもしれないが、その一方で思い切り走らせろと勇気づけられることもあるだろう。お祖母ちゃんのように甘やかしたりおだてたりはしてくれないが、ドライバーの能力を侮蔑するように電子制御が作動してアンダーステアになることもない。ロング・ホイールベースと巧みなセッティングによって、最高のドリフトをキメながらアナログ的な快感を得ることができる。

しかし、中でも最高なのは「レース」モードだ。これを選択すると、オーバーステアを抑制する電子制御ソフトウェアは完全にオフになり、ノーズは不思議なほど軽く俊敏に向きを変える。素晴らしいシャシー性能は、まるで肩に乗せた賢いフクロウがどう走ればいいのか導いてくれるみたいだ。驚くほど滑らかにスライドさせながら、次々とコーナーを抜けていくことができる。これより何倍も高価なクルマを含めても、市場でこれより本当に優れたクルマはなかなか見つからないと思う。



・もちろん全てがパーフェクトというわけではない。キャビンは、初期モデルに比べれば遙かに向上したとは言え、古くささは否めず、過去のフォード車から流用したスイッチ類は、レイアウトも分かり難い。ヒーターのファンは、まるで座席(もちろん電動パワーシートではない)の下に掃除機が押し込まれているみたいだ。エアコンはオプションである。良い面を挙げるなら、カーボンファイバー製バケット・シートが意外と快適で、身長180cm程度までならドライビング・ポジションも良好であること。



元ロータスCEOのダニー・バハー氏と役員一同は、創設者である故コーリン・チャップマン氏の築き上げた伝統を危ういものにした。壮大で不確かな計画をぶち上げ、多額の負債を築いたのだ。新たにCEOに就任したジーンマーク・ゲールズ氏は、軽量化と純粋さというロータスの金言を使って、会社を正しい方向に立て直さなければならなかった。

エヴォーラ スポーツ 410ほど純粋なスポーツカーはない。しかし、もっと簡単に楽しめるスポーツカーを好むような人々にはアピールしないだろう。ロータスは良くも悪くもスペシャリスト的なメーカーだ。業界で最も優れたエンジニアによるシャシーとその仕事の価値が分かる人にのみアピールする。

エヴォーラは、ディナー・パーティに招いた友人達に見せて自慢するだけで、普段はガレージに仕舞い込んでおくようなクルマではない。それではあまりにも勿体ない。中でもスポーツ 410は、100万円ほど高いことを考慮に入れても、ベストなモデルである。今すぐ貯金を始めて、400から買い換える準備をしよう。


スペック
エンジン:3.5リッターV型6気筒スーパーチャージャー
搭載位置:ミドシップ
最高出力:410hp(416ps)/7,000rpm
最大トルク:42.8kgm/3,500rpm
トランスミッション:6速マニュアルまたは6速オートマチック
駆動方式:後輪駆動
0-60mph加速:4.0秒(MT)または3.9秒(AT)
日本での販売車両価格:1,344万6,000円(ATは50万7,600円高)

公式サイト
http://www.lotus-cars.jp



By Andrew English
翻訳:日本映像翻訳アカデミー