かつて日本でも積極的にドライバートレーニングを開催していたBMWの、参加型運転訓練とはどのレベルに達しているのだろうか。そんな興味を抱き、後学のために今回、BMWが韓国に建設して好評だという「ドライビングセンター」を訪問し体験をしてきたので報告しようと思う。


 不肖この僕も、メーカーのドライビングトレーニングの企画運営に携わってきたし、実際にインストラクターとして多くの参加者と接してきた。だから少々のことでは驚かないはずなのだが、あらためてBMWの参加型ドライビングトレーニングの哲学に触れると、目から鱗が落ち、感心で二の句がつけなくなってしまったのである。


 例えば、今回訪問した韓国のドライビングンターは、いわば観客席のないサーキットである。2.6キロのハンドリングコース(つまりはサーキット)があり、ウエット散布が可能なスリバリーコースがあり、ジムカーナコースがあり、そしてダートトラックがある。敷地面積はテニスコート33面だという。


 建屋も立派そのもので、近代的なビルには数々のBMWが展示されており、ロールスロイスコーナーとMINIコーナーがそれぞれの個性で設えられている。コースがサーキットならば建屋はBMW展示場である。


 完成は2014年8月、総工費は約77億円だというから恐ろしい。つまり驚きなのは、2.6キロものハンドリングコース(くどいようですがほとんどサーキットです)があり、近代的なビルがあり、77億円も投資しているにもかかわらず、レース開催で資金回収するわけではなく、コンペンションホールとして貸し出すわけでもなく、ひたすらBMW流ドライビングをレクチャーするためだけに建設してしまうことだ。ただドライビングレクチャーだけのために・・・。


 ちなみに、BMWはこの韓国ドライビングセンターが3箇所目となる。ドイツ本国と米国カリフォルニアにも広大な施設を所有している。韓国の建設はアジア戦略のひとつだという。なるほど韓国ドライビングセンターは仁川国際空港からほど近い。立地もいい。参加者は韓国在住だけでなく、近郊のアジア諸国からも訪れるという。日本からの参加者も少なくないとのことだ。そう、僕らも申し込みさえすれば自由に受講できるのである。


 カリキュラムは多岐にわたる。ただ、BMWが準備するクルマで徹底的に走るのが基本だ。M2やM4はもちろん、BMWがラインナップするほとんどのクルマが対象だ。ロールスロイスまで準備されていた。

BMW M Experience
 そればかりか、クロスカントリーロードでの異次元体験や、スノーアタック。あるいは逆に会場見学などは、子供の小遣いでも入館できるという手軽さも準備されている。BMWの世界観に理解してもらうためのテーマパークなのだ。そう思っても、当たらずとも遠からずといったところだろう。


 というわけで僕はM2を主体にしたエキスパートクラスに参加したのだが、内容がダイナミックすぎて腰を抜かしかけた。


 1周2.6キロのコースをヘルメットもかぶらず、いきなり全開である。インストラクターの先導についていけばいいのだが、そのペースが尋常じゃない。ほとんどレース。ヘルメットを被ってないことを後悔したほどだ。


 共に参加したナンバーもいたのだが、何台かがスピンしてコースアウトする始末。それほど速いのである。レーシングドライバーだから助かったと、本当に思ったほどである。


 というのも、インストラクターとはいえ、プロのレーシングドライバーであることを後から聞かされた。もちろんBMW流ドライビングを徹底して学び、資格をえたインストラクターが実際に講習に当たるのだ。聞けば、BMW契約で今年のニュルブルクリンク24時間レースにM6GT3で出場するという。どうりでペースが・・である。


 さらにはジムカーナのタイムアタックがあり、タイムが次々に表示される。ハイスピードブレーキングやらウエット路での旋回やら、そのどれもが限界ギリギリなのである。さすがにBMWはスケールが違うわと腕を組んだ。


 もちろんカリキュラムは様々で、初心者用から上級者用まで準備されている。小学生の施設見学もあるわけで、あらゆるお客様を対象にし、満足できるようなしかけなのである。

木下:「いつもあんなにベースが速いのですか⁉」

BMW:「いえ、お客様のスキルを判断してペースを調整します」

木下:「危なくありませんか⁉︎」

BMW:「今回のスピンされた方がいましたけれど、怪我をしましたか⁉」

木下:「怖がる人はいませんか⁉」

BMW:「ゆっくり列をなして走るのが好きならば、高速道路を走っていてください」


 安全と解放をバランスよく整えているのだ。

木下:「ヘルメットは必要ない⁉︎」

BMW:「ヘルメットは重いので頚椎に負担をかけます。エアバックがありますので、危険なヘルメットは被らせません」

木下:「ヘルメットが危険⁉︎」

BMW:「逆に聞きましょう。ヘルメットが万能ですか⁉︎」


 インストラクターとの会話でわかったこと。BMWは本気でドライビングを理論立てて考え訴求しようとしているのだ。

BMW:「走りのいい車を生産してるメーカーの責任ですね」

 そういって、ドライビングセンター開設の意義を口にした。

 なるほど。脱帽である。

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