【試乗記】ターボ付きとなった新型ポルシェ「911 カレラGTS」 もう「911 カレラS」は要らない!?
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ポルシェのリアエンジン・スポーツカー担当者によれば、「911 カレラS」はもうすぐなくなるという。確かに、Sに人気の高い装備を搭載した「911 カレラGTS」の人気が、その言葉を裏付けている。今回、GTSモデルがずっと良いクルマだということが分かれば、もしかしたらSは必要ないとみなされてしまうかもしれない。試乗して確かめてみよう。

現行世代の991型と呼ばれる911は、2015年秋に大規模なマイナーチェンジが施され、991.2型に進化した。再び遅れて追加された「GTS」も、標準型の「911 カレラ」と同様に、後輪駆動または4輪駆動のクーペとカブリオレ、そして4輪駆動のみのタルガ・ボディから選べる。GTSでは後輪駆動モデルも、通常の4輪駆動モデルと同じワイド・ボディになっているのが特徴だ。つまり、全モデルが同じように、リアの幅とトレッドが広いのだが、おそらくこれは技術的な面のみならず、商業的な面に置いて重要なのだろう。

ロブ・ライナーの『スパイナル・タップ』の言葉を借りれば、「Sを速くするだけではダメなのか?」ということになる。つまり、基本的にGTSとは、「Sの顧客が一般的に付けることが多いオプションを最初から満載したパワフルなS」である。そして、Sにそれだけのオプションを追加してオーダーするよりも、GTSを買った方が実は安い(といっても日本での価格は1,788万円から)。それはこれまでのGTSでも同じだ。今回が違うのは、911 カレラや911 カレラSから、あまり遅れずに登場したということである。997型ではモデル末期に、991.1型ではモデル中期にGTSは追加されてきたのだ。




911の開発責任者を務めるオーガスト・アキレイトナー氏は、この理由について、991がリフレッシュされる前に受けたオーダーの約半分が、復活するといわれていたGTSだったからと説明する。これは大きい。つまり、モデルライフの中でGTSを早く出せば、それだけたくさん売れる。高価格なGTSがたくさん売れれば、それだけ利益も大きい。そういうことだ。

初のターボ付きとなった新しいGTSには、Sの3.0リッター水平対向6気筒ツインターボ・エンジンの出力を上げたバージョンが搭載された。最高出力450ps(Sより30ps増)、最大トルク550Nm(Sより50Nm増)を発生する。996型のターボSと同等のパワーを、より小さな排気量から、より大きなターボとブースト圧で可能にしているのだ。0-60mph加速も3.4秒と、996型の最強モデル「911 GT2」の3.6秒を凌ぐ。仕様にも寄るが、GTSはSより0.2〜0.3秒ほど速い。




「タルガ4 GTS」では、ポルシェで初めてタルガバーが黒くペイントされた。クラシックな見た目がお好みなら、シルバーに変更することもできるが。標準装備のスポーツ・エキゾースト・システムは、テールパイプがブラックになっている。ヘッドライト・ウォッシャーのノズル部分はマットブラックで、ヘッドライト自体は、ニーゲル・タフネルの言葉「None more black(これ以上黒いものはない)」というくらい、黒いベゼルで囲われている。リアのバッジもブラックだ。インテリアも同様にブラックを基調としており、標準で一部がアルカンタラ張りとなる。全てが"ちょいワル"な印象だ。

驚くことではないが、最新のGTSは走らせてみると991.2型のSとよく似ている。つまり非常に速く、エンジンのサウンドも素晴らしくて(ターボチャージャー付きにも関わらず)、実にリニアに反応し(これもターボチャージャー付きにも関わらず)、ステアリングのフィードバックは、往年のポルシェほどではないものの、まずまず良好だ。

運転中の気分を高めるため、標準のスポーツ・エキゾーストは、フラップだけでなく「部分的に省いた消音材」によって、GTS仕様にチューンされているという。"省いた"というよりも、工場の生産ラインで働く人たちは、最初から半分しか入れなかったのではないかと思われる。そんな事情はともかく、より生々しい音は我々の好みであるし、最近流行のスピーカーから合成音を流すシステムを採用するよりずっと良い。




希望すれば、狂気的に高性能なタイヤもディーラーでGTSに装着してもらえる。このタイヤは20インチ・ホイールならどの現行型911にも装着可能で、サイズはフロント245/35、リア305/30。もちろん、サーキットでは強力なグリップを発揮する。ポルシェによれば、このオプションのタイヤを装着することで、GTSの7分26秒というニュルブルクリンクのラップタイムを、なんと4秒も短縮できるという。より遡って比較すれば、あの「カレラGT」より6秒も速いのだ。この十数年の間に、ずいぶんと進化を遂げたものである。

リアがワイドなGTSは、道幅が狭い一般道では大きく感じるが、もっと広くてスピードが出せるサーキットではそうでもない。セッティングが異なるはずのどのバージョンでも同じくらい快適だ。911 カレラSより少しだけ優れており、Sに一般的なオプション、例えばスポーツクロノや、スポーツシート・プラス、スポーツ・エキゾースト、20インチのセンターロック式ホイールを付けるのであれば、最初からGTSを選んだ方が合理的だ。内外装のモディファイされたルックスが嫌いでなければ。

近年、ポルシェの911シリーズはモデル・バリエーションが増加する一方であり、減らされることはまずない。だから、911 カレラSも、このまま生産が続けられるのではないかと我々は思っている。しかし、公道で見掛けるGTSの割合が増えることは間違いないだろう。"S"のバッジがなくなることを心配する必要はない。その前に"G"と"T"が付くだけだ。


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翻訳:日本映像翻訳アカデミー