YAMAHA TMAX530
 2000年秋に登場して以来、オートマチック・スポーツコミューターのパイオニアとして、特にヨーロッパで絶大な人気を誇るヤマハTMAXシリーズ。


 その最新型となる2017年式『TMAX530』に乗ったが、リアショックの動きがしなやかになって乗り心地を飛躍的に向上しているのが印象に残った。従来から持っていたとびきりのスポーツ性能に、ラグジュアリーな上質さと高いコンフォート性が加わっているのだ。

YAMAHA TMAX530
 メディア向け試乗会は修善寺サイクルセンターにておこなわれたが、あいにくの雨。ドライ路面でガンガンとばし、持ち前のスポーティさを堪能し尽くすのもいいが、ウェット&レインでの快適性やウインドプロテクションをしっかり確かめるのも悪くないだろう。


 最初におこなわれた技術説明会で、商品戦略部の担当者は「数千台とか数万台という単位ではなく、数十万台という単位で売れているヤマハを代表するモデル」と紹介。特に売れているのは、イタリア、フランス、スペイン、台湾、日本とのことで「代を重ねるごとに人気を高め、3人に1人という高いリピーター率を獲得しています」と、自信をのぞかせる。

YAMAHA TMAX
 初代『T-MAX』が国内ラインナップに名を連ねたのは2001年8月のことだった。当初の排気量は500cc。欧州ではその実力が認められ早々にセールスを伸ばしていくが、日本ではビッグスクーターブームを牽引してきたマジェスティの親玉という程度にしか大半の人には認識されず、その魅力はまだまだ伝わりきっていなかった。


国内仕様がフューエルインジェクション化したのは2004年9月からで、前後14インチだった足まわりをリアのみ15インチ化し、このとき前輪ブレーキをダブルディスク化している。 この2型がヨーロッパで大ブレイク。発売からわずか3年で4万台を超える販売台数を記録するなど、年間5万台といわれる欧州のスクーターセグメント市場で、およそ20%をT-MAXだけで占めるという爆発的人気となった。


 鋼管製ダイヤモンドフレームがアルミダイキャスト製となり、前後タイヤを15インチラジアルとした3代目は2007年10月にヨーロッパで発売をスタートさせるが、これもまた欧州だけで年間2万台強を売るビッグセールスを誇った。小排気量のモペットも含め年間5万台というスクーター市場を考えれば、その4割がTMAXというのだから驚異的な人気と言えよう。国内導入は08年7月のことだった。


 2013年6月(欧州では2012年秋)に排気量が530ccにスケールアップされ、『TMAX530』としてフルモデルチェンジされると、スイングアームもアルミ化され、チェーン式だったファイナルドライブをベルト駆動にし、バネ下重量を5kgも軽減。さらに15年1月(欧州では14年末)にはヘッドライトをLEDにし、キーレスイグニッションを導入する。フロントブレーキにはラジアルマウントキャリパーが与えられた。

 今回乗った新型はつまり6代目。どう進化したかというと、まず電子制御スロットル「YCC-T」を採用することで、トラクション・コントロール・システムや走行モードが選べる「D-MODE」を搭載。レインということで、市街地での扱いやすさを重視した「Tモード」がありたい。ラフなアクセルワークでもトルクの立ち上がりが穏やかで、スリップの気配がない。これは石畳の多い欧州の市街地でもさぞかし重宝するだろう。


 パワー感・スポーティな走行フィーリングを重視した「Sモード」は、スロットルレスポンスが鋭くなって気持ちのいい走りが楽しめた。ウェットにも関わらずスポーツモードを積極的に使えるのだから、トラクションの良さがうかがい知れよう。

YAMAHA TMAX530
 これは新たに採用したリンク式モノクロスサスペンションと、従来比で40mmロング化したリアアームの影響も大きい。リヤまわりの動きが乗り手に把握しやすく、つまり車体の姿勢変化をコントロールしやすい。 さらに電子制御スロットルの操作フィールが絶妙で、シャープなレスポンスなのに低い速度域でのアクセル開閉でギクシャクしない。このスロットルワークがあるから、タイトコーナーの続く修善寺サイクルセンターを雨の中、走り続けてもまったく疲れない。


 疲労度という点では、よりワイドになったフロントカウルが下半身への走行風の直撃を防ぎ、コンフォート性を飛躍的に高めていることも忘れてはならない。


 上級仕様の『DX』では電動スクリーンを備え、左ハンドルスイッチの操作によって上下135mm幅で任意の高さに調整できる。これはもう快適そのもので、優れたエアロダイナミクス効果を発揮しているのだろう、走行中の風切り音もしない。


 DXが搭載するクルーズコントロールシステムは、高速道路で威力を発揮しそうだ。しかしセットできるのは50km/hから100km/hでの走行時だけで、もう少し高いスピードレンジでも使えるようになれば嬉しいかぎり。もちろん、速度違反になってしまうのだが......。


 今回好んで乗ったのは DX だった。グリップとメインシートにヒーターを備えていたからで、もしこれがなかったら雨で身体が冷えきっていただろう。これは言うまでもないはず、冬場に心強い装備となり、TMAXのキャラクターを好むユーザーには必需品といっても過言ではないはずだ。


 雨の中、漠然と走っていて思うのは、大人向けの乗り物だなってこと。悪天候でもコンスタントに速く走れ、しかもスポーティな走りを楽しんでいられる。 どこか贅沢な気分にさせてくれるのは装備面が充実しているからだけでなく、上質な乗り心地や車両の隅々から伝わってくる高級感があるからで、TMAXを選ぶことに迷いがない熱心なファン層が存在するのも頷ける。


 紳士的だが、ヤマハの熱いスポーツマインドを忘れていない。そりゃ、人気があるわけだ。濡れたTMAX530を見て、ただただ感心するばかりだった。
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