デトロイトの全盛期といえば1950年代だが、世界をリードしていた自動車産業のおかげで、その繁栄は60年代中ごろまで続いた。

この映像は、1968年夏のオリンピック誘致を目指して制作されたと思われる(68年の開催国はメキシコに決定)。 65年頃に撮影された"Detroit – City on the Moves(発展し続ける街―デトロイト)"に映し出されるのは、絶頂期にあった同市の様子である。

すっかり衰退してしまった現在とは、あまりにも対象的な姿だ。

デトロイト交響楽団が奏でる旋律をBGMに、市内の様子が映し出される。プレゼンターは当時の市長、ジェローム・キャヴァノー氏。200万人の市民で活気あふれる市街の様子には、真新しいコンベンションセンター「コボ・ホール」でデトロイト・オートショー(現在の北米国際オートショー)が開催されている様子も見られる。

また、(当時の)ビックスリーの社屋や敷地、かつて文化の中心地であった場所なども登場する。
そして、かのジョン・F・ケネディ元大統領がオリンピック誘致に向け、市のすばらしさを褒めたたえる場面まであるのだ。

このビデオを観ると、非常に興味深いことが分かる。既にゆっくりとだが衰退が始まりかけていたデトロイトは、オリンピックの開催地として"再生"を図ることで、当時の増え続ける諸問題から人々の目を逸らしたかったのだ。中でも、高まりつつあった人種問題への取り組みの失敗を目立たなくする"最大のチャンス"とでも、市は考えたのかもしれない(当時、米国最大の人種暴動となったデトロイト暴動は、このわずか2年後の1967年に発生した)。

こうしたプロモーション映像は、街が最もよく映えるよう作られる。そして現在のデトロイトは、もはや世界の自動車産業の中心地ではなくなった。Prelinger Archives(20世紀アメリカの希少な映像コレクション)の1つであるこのビデオで、デトロイトの過去の栄光と、そして何よりも、いったいこの街が何を目指していたのかを垣間見ることができる。 60年代半ばのアメリカの驚くべき、しかし、ありのままの姿を収めた映像は一見の価値ありだ。