【試乗記】「地上で最も美しい車! でもエンジン音は...」 パガーニ「ウアイラ」に乗る
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2011年、イタリアのサンチェザーリオスル・パーナロにあるパガーニ・アウトモビリ社は、「ゾンダ」の後継車となる怒級のスーパーカー「ウアイラ」を発表した。その性能と美しさは、他人とは違うスーパーカーを求める超リッチな顧客の心をつかみ、ベーシックモデルの価格が約1億円にもかかわらず、3年半先のオーダーまで埋まっているという。このウアイラ人気を受けて年間20台という少量生産をモットーとしてきたパガーニだが、2013年からはウアイラの生産を年間40台に増やすことを決定した。そんなウアイラとは、果たしてどんな走りをするのだろうか? 今回はそれを確かめるべく、このスーパースポーツカーに試乗した。

私は以前スウェーデンの南西にあるケーニグセグの本社や、イギリスのモーガン本社を訪れたことがある。今回パガーニ社を訪れ、創始者であるオラチオ・パガーニ氏と話をしたが、氏のハイパフォーマンスの高級マシンを作りたいという情熱に心を打たれた。

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しかし、メーカーの最高責任者というのは、大抵自社の車の詳しいことについてなかなか口を開こうとはしない。オラチオ・パガーニ氏もそうだった。彼が誇らしげにウアイラの製造工場や開発チームについて語り始めたのは、世間話を始めてから90分もたってからだ。まるで、魅力的な車をひたすら眺めるだけという、豪華なお茶会に招待された感じだ。しかし、パガーニ・ウアイラを試乗するためには、まずはイタリア北部モデナのアルティジャナート通り(職人通り)にあるパガーニの本社で、芸術的な雰囲気に十分浸ることが重要なのだろう。その後、ようやくウアイラと対面することが出来るという訳だ。

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パガーニ本社の建物から出ると、最近開発されたTrack Packを搭載した最新型にして最強モデルのウアイラが登場した。その実力は、第三者機関である自動車技術会の測定によると、最高出力730ps、ピーク時の回転数5800rpm、そして2250rpmから4500rpmまでは102kgmのトルクがフラットに発生するという。0-100km/hは驚愕の3.2秒で、最高時速は360km/h(パガーニ氏によると370km/h)、横加速度は1.64Gsだ。これらの数字からするとウアイラは、2009年にニュルブルクリンクの北コースで6分47秒のラップタイムを出した「ゾンダR」よりもサーキット向きのマシンと言えるだろう。今回の試乗車は、ピレリのPゼロ・コルサのタイヤを履いており、前輪は255/35 ZR19 96Y、後輪は335/30 ZR20 104Yとなっていた。

まず、肩慣らしにアルティジャナート通りを南に下り、2車線の623号線に入る。その先にあるアペニン山脈の丘陵地帯は、スポーツカーファンにとってはたまらない究極の場所だ。ウアイラのオーナーは同時にゾンダも所有している場合が多く、新型モデルが発売されても旧型を手放さない傾向があるという。となると、顧客は標準装備されているセミオートマチックトランスミッションでは満足しない。そこでパガーニは、軽量で耐久性のあるギアボックスを長年レースカーに提供している英国のXtrac社製ギアボックスを公道車として初めてウアイラに搭載したという。 ギアボックスは7速のシングルクラッチ。もちろん最近の傾向であるデュアルクラッチという設定もあったはずだが、その場合、少なくとも70kgは重くなることから、今回はシングルクラッチを採用したようだ。

【試乗記】「地上で最も美しい車! でもエンジン音は...」 パガーニ「ウアイラ」に乗る

レース用のギアボックスを搭載したウアイラのために、パワートレインはメルセデス・ベンツAMGが特別にチューンしたM158型6リッターV12気筒ツインターボ・エンジンが用意された。走行モードはオートモードとスポーツモードの2つ。そしてローンチコントロールまで装備されている。多くの顧客のリクエストとはいえ、公道車にここまでやるとはやはり驚きだ。

カーボン・チタン製のフレームを持つウアイラに滑り込み、しっかりとサポートされた助手席に座り集中力を高める。以前ゾンダに試乗した時は、インテリアの素晴らしさに目を奪われっぱなしだったので、今回はウアイラのドライビング性能に集中しようと決めたのだ。これまでもレザーとピカピカのアルミをミックスするパガーニ氏のデザインセンスについては、一部のメディアからは批判を受けている。しかし、何を言われようと、当の本人はあまり気にしていないようだった。今回のインテリアにもピカピカは健在で、まるで超高級腕時計フランク・ミュラーの最高峰「エテルニタス・メガ4」の中にいるような感じがした。それでも上質なレザーが贅沢に使用されているからか、幾何学的なアルミ部分が鼻につくことはなく、高級感に浸ることができた。個人的にはゾンダよりもウアイラのインテリアのほうが好みだ。

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ランボルギーニがカーボンファイバーを使用して車体の軽量化と剛性を高めることに成功したことはよく知られているが、実はパガーニこそが自動車業界のカーボンファイバーにおける第一人者だと言える。職人たちの並外れた技でウアイラの隅々までカーボンファイバーを使用しているにもかかわらず、不自然なところはどこにもなく、すべてがピッタリとはまっていて完璧としか言いようがない。ウアイラに使われているパーツは、単に車の性能を上げるためだけのものではなく、たった一つのパーツにさえパガーニの精神が注入されているからだろう。

ウアイラは圧倒的に美しい。そして、美しいだけではなく性能面も素晴らしい。例えば電動アシスト式のステアリング・ラックは思いどおりに働いてくれ、フィードバックも文句のつけようがなかった。ブガッティ「ヴェイロン」の車重が1,950kgもあるのに対し、ウアイラは1350kgで、しかも後輪駆動。以前に後輪駆動のポルシェ「ケイマンS」でアペンニ山脈のカーブを走ったときは散々な思いをしたが、今回はどうだろう。実際に走ってみてウアイラは、あのスーパーカー「ケーニグセグ」より若干ではあるが勝っていると感じた。カーボンセラミックのブレーキディスクは、車体の重さを感じさせないように作動し、とてつもなくスムーズだった。


フロントとリアデッキに取り付けられてあるフラップがダウンフォースを高めているため、ウアイラの高速走行での安定感は抜群だ。リア・フラップはそれぞれが単独で上下運動を繰り返し、一方のフロント・フラップは鋭敏にコンスタントに動く。さらに、ウアイラは約200km/hから、なんと4.2秒で静止状態になるという驚きのブレーキを持っているのだ。

閑散とした丘陵地帯では、ウアイラから発せられるエンジン音が響きわたった。しかし車体中央に備わる4本のテールパイプから聞こえる12気筒ツインターボのエンジン音は、高回転型の自然吸気エンジンに比べると、スリルが足りないように思えた。もちろん運転席のすぐ後ろでは12本のシリンダーがきちんと作動している。だからこそ、もっと素晴らしい音が聞けると期待してしまったのだ。何よりも落胆したのは、常にターボのウエストゲートやタービンの音が聞こえ、しかもそれが大音量でゼーゼーハーハーと聞こえることだ。これがあのAMGのエンジンだとはとても思えなかった。読者の期待を裏切るつもりは毛頭無いのだが、2時間も山道を運転していたら、この耳障りな音にほとほと嫌気がさした。かといって複数車線の高速道路を流しているだけでは、このハイパーカーはまったく息を潜めてしまう。公道で楽しむにはウアイラの性能は高すぎるのかもしれない。それでもやはり、もっとエンジンと排気音のハーモニーが聴きたかった。

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次はウアイラの鍵について触れておこう。この鍵がまた凄い。同車の鍵は一般的な車の鍵と違っていて、アルミ製でウアイラの形をしている。しかも、この鍵は中央で2つに分かれ、一方がイグニションキー、もう一方が音楽用のUSBになっているという。その値段は1つが1,500ドル(約17万円)とも、それ以上だともささやかれている。この高価な鍵にも驚いたが、タッチスクリーンのバックライトの色まで選べることにも感心した。取りあえずピンクに設定して5km程走ってから、今度は好みのグリーンに変更してみた。この辺りの遊び心にうれしさを感じた。 さて、米国への納車予定だが、「エアバッグを含む全ての機能が、米国NHTSA(高速道路交通安全局)の基準を満たしたので2013年7月には納車できると確信している」と早くなることはあっても遅くなることは無いと言うニュアンスでパガーニ氏は語った。ウアイラはオーナーの好みに合わせて1台ずつ仕立てられるので定価というものはないが、その平均価格はおそらく150万ドル(約1億7,000万円)は下らないと考えられる。

こんな高価な車のオーナーになれる人は別世界の人であり、そんなお金がどこから出て来るのだろうと余計なことを考えてしまう。しかし今回の試乗によって、世界でも屈指のスーパースポーツカーを送り出すホラチオ・パガーニ氏の精神とその小さな会社の素晴らしさを知ることが出来たのは、貴重な体験であったといえる。

【基本情報】
エンジン:6.0リッターV型12気筒ツインターボ
最高出力:730hp 
最大トルク:102kgm
トランスミッション:7速オートマチッック
0-100km/h加速:3.2秒
最高速度:360km/h
駆動方式:後輪駆動
車両重量:1,350kg
座席:2シーター
燃費:不明

By Matt Davis
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

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