Volkswagen Golf GTE
地中海西部のリゾート地であるマヨルカ島で、通称"7.5代目"へと進化したゴルフの"未来と今"に触れた。

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 まず一般公道では、完全なるEVの「eゴルフ」とプラグインハイブリッドである「ゴルフGTE」に試乗。翌日のサーキットでは韋駄天「ゴルフR」をテストし、また日本未導入モデルながら「ゴルフGTI Performance」もその周辺道路で試したのだが、まずみなさんには、エレクトリック・ゴルフの先進性や面白みについてお話しよう。
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 ゴルフ7のシャシーにリチウムイオンバッテリーとモーターを組み込んだ「eゴルフ」。その登場は2013年のフランクフルトショー(オートブログでも掲載している)とかなり前の話だが、日本では急速充電などの諸問題からその導入が見送られていた。

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 しかし今回ボクにもその試乗チャンスが巡ってきたということは......そう。日本にもeゴルフの導入が、遂に決定したということになる。
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 さてそのeゴルフ、最もみなさんが興味を抱くのは「どんだけ走れるの?」ということだろう。ちなみに初代の航続距離は満充電から190km。そしてこの二代目では、これが300kmにまで増えた。バッテリー容量が従来の24.2kWhから35.8kWhへとアップして、なおかつモーターや駆動系の洗練度も上がったのがその理由である。

ただそうしたエコ性能以上に、eゴルフは「ゴルフであって、ゴルフじゃない」その乗り味がステキだった。


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 内燃機関のないEV特有の静粛感は、通常のゴルフ以上に入念に吸音材を増やして高められた遮音性によって、より一層サイレントな走りをものにしている。
そして床下にバッテリーを搭載する関係から、そのハンドリングはゴルフにはない応答性を備えているのである。

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 ユニット出力は100kWh(136ps)/290Nm。これは従来から+15kWh(+21ps)/20Nmの向上となっているが、その車重は1615kgとパサートなんかよりも重いから、全開加速そのものは目が眩むような速さではない。しかし信号待ちからのゼロスタートのような場面では、EV特有の直線的なトルクの立ち上がりよって、ガソリンエンジン車たちを置き去りにするほどの出足を得ることができる。アクセルを踏んだ途端にスッ!と飛び出して、フワーッと加速。そのときにモーターが発する"キーン!"という高周波や、インバーターの"シューッ!"という作動音がかすかに聞こえ、その近未来的な加速感にちょびっと興奮できる。そして流れをリードしたら、スーッとクルージングだ。

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 変速機構をもたないワンギア+モーターでの巡航は、5つの回生モードで制御ができる。ドライブモードは「回生ゼロ」、シフトレバーを横倒しにすることでSTEP1~3と3段階の回生ブレーキが使い分けられ、最後にBレンジで最大の回生を得て全部で5段階である。
これをいわゆるエンジンブレーキのように使い、eゴルフはスピードをコントロールする。

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 車重が重たいとはいえ一番の重量物は床下にあり、これを通常のゴルフよりも高いバネレートのサスペンションで支えるその乗り味は、一種独特。ロードレーサーのように転がるタイヤと快適なダンパー、低重心な車両の織りなす滑走感はただ真っ直ぐな道を走っているだけでも上質で、それに驚き、そしてワクワクする。

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 そしてひとたびハンドルを切ると、フロントエンジンのゴルフではあり得ないほど華麗にコーナーを曲がって行く。軽いノーズはハンドル操作でスッと内側へ巻き込み、コーナー中腹では荷重がすぐに外側2輪のタイヤに掛かってビタッと安定。前後オーバーハングに"重り"がないからアンダーステアやオーバーステアといった小難しい緊張感とは無縁で、しかもフロアに乗っているかのように曲がって行く。そう、巨大なスケボーにハンドルを付けて乗っている感じと言えば良いだろうか。この重心の低さは、エンジンを縦置きしてドライサンプ化したミドシップのスポーツカーよりも優れたバランスだと思う。

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 そしてクリップからアクセルを踏み込むと、エレクトリックトルクがドーン!と炸裂する。確かに自重は重たいけれど、サスペンションの伸びやかなストロークがこれを補って、まったくそれがハンディに感じられない。身軽なデブはダンスがうまい! という感じだろうか(笑)。

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 ただ常用域のしつけに関しては、まだまだ成熟が足りない部分もある。操舵に対する反応がシビアな分、路面のうねりやちょっとした操作でノーズがチョロチョロと動く。ここをどう安定させるかはタイヤの進化とのせめぎ合いで、乗り心地を損なわずダンパーの減衰力を高めることができれば、ビタッと安定してくるだろう。

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 気になる電費は、マヨルカ空港から宿泊先までの100kmを2名で分け合いながら走ってインジケーターが半分より少し上といったところ。さんざん踏み倒してコーナリングを楽しんだことを加味すればあと100kmは余裕、エコランすれば150kmは固いという感触はあり、現時点でも日常のアシとしては十分だと感じた。

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 ちなみにその充電時間はチャデモだとおよそ45分で80%のチャージ。7.2khwの設備があれば4時間15分でフル充電が可能だという。

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そして翌日は、ゴルフGTEでサーキットまでの道のりを堪能した。
とはいえ実はこのGTE、動力性能的に向上した部分は一切なく、その進化はもっぱら7.5世代に突入して進化したインフォテイメント機能のアップグレードのみであった。欧州仕様にはナビにインプットしたルートからハイブリッドモードを最適化して、道中の燃費を最適化するプログラムも採用されたらしいが、これが日本仕様でどうなるかは未定だ。

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 それでもやはり、今回eゴルフとGTEを乗り比べたのは良かった。なぜならGTEは、1.4リッターのTSIエンジン(150ps)を積むPHVにもかかわらず、その走りがeゴルフ並みに静かだったのである!

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 きっとそのモーター制御が絶妙なのだろう。とにかくGTEは、ハイブリッドモードで走っていてもエンジンが主張しない。出足は全てモーターで始動し、走り初めてもトルクがすぐに立ち上がるから、そのあとは惰性で走りきる感じ。

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 そしてときおり深めにアクセルを踏み込んだときにエンジンが"ブーン"とうなっても、それがまったく不快じゃない。これまでフォルクスワーゲンが磨き挙げてきた内燃機関の結果であり、スムーズさやフリクションの少なさが、こうした走りと素晴らしく親和性が高いということが確認できた。


 回生は、アクセルオフでも「Bレンジ」を選ばない限りは働かず、ブレーキを踏んだときや、ステアリングのパドルでシフトダウンしたときにだけ、これを意識できる。そう、GTEはガソリンエンジンのゴルフと同じくパドルシフトが標準だから、直感的にこうした操作が可能になるのもいい。
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乗り心地は、eゴルフと同じくらいどっしり(車重は1615kgと、eゴルフと同じなのだ!)、しっとりしており、サスペンションのセッティングもしなやか系。床下にバッテリーとガソリンタンクを積んで前後重量配分が適性化されているためか、FWDのゴルフに比べ積極的にリアサスも伸ばして行く感じがする。ハンドリングはまさにエンジン付きとEVの中間で、eゴルフで気になった直進安定性も高まっているのに、コーナーではとてもボディバランスがよい。

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 そしてシフト横の「GTE」ボタンをプッシュすると、75kWh(109ps)のモーターパワーと150psのエンジンパワーが瞬時に解放される。eゴルフよりも強烈な初期トルクがその車重をものともせずに加速させ、そこからターボパワーで速度を上げて行く。絶対的な加速性能はGTiに譲るだろう。だがその加速感はGTi(ボクが試乗したのはさらに高出力なGTi Performanceだが)、と非常に似た洗練されたターボフィールで、速さ比べをしない限りはGTEの加速になんら不満を抱くことはなかった。

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 だからこのGTEパワーとそのシャシー性能が組み合わさると、GTEはやはりeゴルフ同様に楽しい。ゴルフと同じ雰囲気を残しながらも、またゴルフとは違う走りが味わえて、なおかつちょっとした速さも持っている。

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 ちなみにEV走行の航続距離が53.1kmと、びた一文増やされていなかった(要するにバッテリー容量が増やされたり、バッテリー性能を向上させなかった)理由は、ドイツの統計で都市部のユーザーが一日に走る航続距離を、既に十分まかなえているから。これを無理に性能向上させれば、そのコストはユーザーに跳ね返るからだと現地のエンジニアは教えてくれた。ここら辺は、どうしても数値にこだわってしまう我々日本人と、コストや実益を当たり前のように重視する彼らとの違いがハッキリ現れていた。

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 実際にはEV走行でもストレスなく走れば多分30km程度が現実的。そしてこれをエンジンで給電しながら走らせたりするよりは、ボクは賢いハイブリッドモードで、のんびり走る方が贅沢で楽しいと感じた。

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 唯一気になるのは、このゴルフGTEがそれほど燃費が良くないのではないか? ということだ。カタログ数値では23.8km/ℓ(JC08モード)と謳われる燃費も、今回は計測していないが実際には16km/ℓ程度、モーターを使い切った先にはさらに燃費が下がるという話はよく聞く。つまり結構踏み倒しても20km/ℓ台をあっさりマークしてくるプリウスと比べると、モーター積んでるくせしてフツーのゴルフ並みの燃費なのである。

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 それでもボクは、GTEにとても魅力を感じる。なぜならその極めてサイレントな走行感と、FFハッチらしからぬハンドリングに最先端のプレミアム性を感じるからだ。つまりGTEは、プラグインハイブリッドという形態を取ってはいても、「エコカー」ではないのである。

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eゴルフもゴルフGTEも、とどのつまりは「フォルクスワーゲン・ゴルフ」というクルマをベースとしているから魅力的。その上で先進性に冒険し、ガソリンレスの生活を取るか、日常でのEV走行を楽しみながら、いざというときの長距離性能とプレミアムな走りを堪能するかはあなた次第である。導入は、どちらも今年の秋口ぐらいだから思いっきり悩んで欲しい!

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■フォルクスワーゲン 公式サイト
http://www.volkswagen.co.jp/ja.html