KTM 2017 390DUKE
バイクのロードモデルでシート高830mmと聞くと、その数字を見ただけで拒否反応を起こす人は少なくない。昨年のEICMAにて発表された、KTMの新型「390DUKE」のスペック表を眺めていたら、驚きの高い数値が飛び込んで来たのだ。

ということで、ニッポンから海外のプレス向け試乗会に参加するひとりとして選抜されたのが、普通体型を持つおばさん=BBA(ばばあ:この呼ばれ方に割と愛着を感じているので、あえて使用する)。

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本来であれば、海外で行われるプレス試乗会に女性が参加するなんてことは、バイクの業界では殆どありえない。というのも大型の車両であったり、サーキットがメインであったりと、バイクは男性が乗ることを前提につくられているからなのだ。これは、クルマと違いマーケットの大きさを考えると当たり前のことなのだが、それでも女性にもアピールしたいモデルであったら、女性が参加することもある。もちろん、日本代表となるのでそれなりに乗れる人が行くのであるが・・・、日本にはもっと上手くバイクに乗れる、ステキ女子ジャーナリストが何人か居る。なのになぜ私? と考えたときピンときた。身長157cm、体重48kgという典型的な日本人体型で普通にストリートを楽しんでいる"身近"な存在であるからだろうと。

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だって、先にも書いたがシート高が830mm!!!! 830mmですよ、830mm!!!
まぁ、欧米人はガタイがいいから気にならないかもしれないが、島国ニッポンにはちびっ子が多い。この数値だと、どうしても足つきが悪く見える・・・。そこで! 

「ニッポンの普通のBBAが乗れるかどうか、ちょっと試してみてきて」

ということになったワケなのだ(と思う)。
だって、若者は足が長いでしょっ、だからBBAの出番と。

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400cc以下の排気量で、830mmというシート高はかなりのハードルとなる。数値を見ただけでは何ともいえないが、HondaのCB400SFが755mm、YAMAHAのMT-03は780mm、SR400で790mm、スズキのGSR400は785mmと、国内の400cc以下のネイキッドモデルと比べると、まるでオフ車か! と突っ込みたくなるような高さということなのだ。YAMAHAのセローが830mmなので、それと同じシート高となる。
しかし、車重は段違いに軽い。セローの130kgとまでは行かないが、390DUKEの乾燥重量は149kg。しかし、この重量も実は旧モデルから10kg増となり、足つきは悪いけど車体が軽いのでどうにかなる、といったことが通用しなくなる"かも"しれない。そこで、私が問題なく乗ることが出来たら、若い子でも誰でも女性でも問題なく乗れるはず、ということなのだ。とはいえ、乾燥重量149kgは充分に軽いとも思うのだが。

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 KTMは2011年に輸入車ながらも普通二輪免許で乗ることができる、単気筒の125ccロードスポーツモデル「125DUKE」を登場させた(コンセプトモデルは2010年に発表)。それ以来、300cc、390ccそして日本の事情に合わせた250ccとDUKEシリーズを矢継ぎ早に市場に送り出し、日本国内の400cc以下のモデルに殴り込みをかけてきたわけなのだが、それらが登場した時の私の感想といえば「なーんか、見た目も乗り味もKTMらしくなく、おとなしくまとまっちゃったな」、よく言えば「マイルドになって乗りやすくなった」だった。しかし、これは好みによるところが大きいので、良いとも悪いとも言いがたいのだが・・・。オーストリアというバイクにはあまり馴染みのない国で作られているKTMを、バイクの4大メーカーを抱える完全無欠な日本の市場に広めることには、この普遍性は必要なことであるとも感じていた。それほどまでに、それまでのKTMが世に出すロードバイクは個性的であったのだ。まさに、変態が好むバイク、そんなイメージだったのだが、この「スモールDUKE」たちがそのイメージを多少なりとも払拭してくれたのだ。

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そして、幾度かのマイナーチェンジを繰り返し、今回の2017年モデルにて「390 & 125DUKE」の外観を一新。KTMの精神である"Ready to Race"を表すかのような尖ったデザインとなり、兄貴分である「1290 SUPER DUKE R」のスタイリングを継承したかのようなたたずまいに変貌を遂げた。この尖ったスパルタンなイメージこそKTM"らしい"スタイリングなのだ。

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今回の試乗会場となったのは、イタリアはトリノ。ご存じFIATの工場跡地があり(私はしらなかったけど・・・)、屋上にトリノ名物オーバルのテストコースがあるホテル。単気筒373.2 ccエンジンを搭載した新型「390DUKE」がずらりと並ぶ。なぜここが試乗会場に選ばれたかというと、コンセプトである"コーナリングロケット"を充分に体感することができる場所だったからのようだ。

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この工場では、組み立てを1階から行い、次の工程では2階へと、次は3階へと、どんどん完成にしたがって上に上がる仕組みとなっており、完成した車両は屋上のオーバルを走り、螺旋状の長いスロープを下って地上に降りるというテストが行われていたのだそうだ。そう、このオーバルと細かい螺旋のスロープを「新型でテストしてこいや!」ということだったのだ。これには、車両に対する相当な自信(というよりも自慢)を感じさせられたのである。
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実車をみると、390ccとはいえ大型車には負けない程の存在感。フルLEDに変更されたヘッドライトが、どうみても"どや顔"をしているように見える。KTMのアイデンティティーである、トラリスフレームをサブフレームにも備え、タンクはスチール製となっている。とりあえず、またいでみると・・・。

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あれ? 足つきが悪くない!?

私でも両足のつま先がしっかり届く。それもツンツンではなく、しっかりと支えられる位。普段足つきはあまり気にしない方ではあるのだが、スタンドを払うのにはそれなりに苦労しているので、こっちはどうかな? と、スタンドを払ってみる。こちらも全く問題ない。かなりの拍子抜けだ。日本とは違う空間だからか? など、色々と考えてはみるものの、むしろ旧モデルよりも足つきがいい。30mmもシート高が高くなっているのに! 笑いがこぼれてしまった。

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これはシートの形状が大幅に変わっていることと、前後共にインナー構造から見直しが図られたWP製の新型サスペンションがよりしなやかに動くことが大きく関係している。シートの前方が大きく絞り込まれ、ニーグリップがしやすい形状になっているため、足が素直に下ろしやすいのだ。

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さらに「ケツ痛センサー」が敏感な私が、今回は全くお尻が痛くならなかった、というところも驚きのひとつだったのだが、ポジションの自由度が高く腰のある柔らかい質感のシートは、滑りも少なく秀逸。KTMの車両でお尻が痛くならなかったのはコレが始めて! ハンドル幅も広すぎず高すぎず、ステップの位置が少し高くなって、ライディングポジションは快適だ。重量が増した車重はというと・・・、逆にバランスが良くなったように感じた。不安定だったフロントがどっしりと落ち着いている。男性よりも体重が軽い身としては、これくらいの重さをプラスして貰った方が、丁度良くなったのか、サスペンションの変更と共に、加重がしやすくなっていたのだ。さらに、手が小さい自分にとってポイントが高かったのは、このクラスなのに両レバーにダイヤル式の調整機能が付いていたことだ。これがあると無いとでは、快適度がかなり変わってくる。

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そして、特筆すべきはこのクラスにしての初のフルカラーTFT液晶を採用したメーターが装備されていること。クルマではもう当たり前となっていることかもしれないが、バイクで、しかもこの排気量に持ってきたということに、本気度がうかがえる。5.2インチという見た目にも大きなモニターがコックピットに鎮座している。外光の明るさによって背景色が自動的に切り替わり、タコメーターも回転数によって色が変化する。10000回転近くなると、赤くなり、シフトアップのタイミングを点滅で知らせてくる。このギミックは気分をアゲアゲにする。操作は左のハンドルに装備されたスイッチで行うのだが、感覚的に行えるので簡単。さらに、スマホをブルートゥースで接続すれば、音楽や着信といった情報を表示させるオプションも用意されている。バイクの性能も、やっとここまで追いついたのだ。

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と、安心感に包まれてトリノの街へ飛び出したわけだが、そこに待っていたのは大渋滞。その様は東京のそれと全く同じ。道幅は多少広いものの、クルマがびっしり。勘弁して〜と思ったものの、小回りが利くのでスイスイ進んで行ける。イタリアの人はバイクに寛大、歩道にはみ出してまで、クルマがバイクに道を空けてくれるのよ・・・。その文化にもちょっとびっくりしたものの、おかげさまで石畳の上も悪路も渋滞もするする抜けて行くことができたのだ。低速でのトルクがありドン付きも少なく、低回転粋でもそこそこ粘りがあるので渋滞でのストレスは皆無。KTMスタッフの先導は結構やんちゃで、前が空くとフル加速。「いやいやいやいや(汗)」と思いながらも、リニアなスロットルレスポンスと、スムーズながらも鋭いふけ上がりで、あっという間に加速するので問題なし。

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高速道路でもワインディングでも街中でもついていくのが全く苦にならない。それも、身体が置いて行かれるようなパワーで"ワープ"する感覚では無く、バイクとの一体感が感じられるところが、かなり気持ちいい。80km/h巡航で心地よく、100km/h以上での巡航でもパワーは充分。ただ、140kmを超えたあたりから、車体の軸がフワフワとぶれる感覚があったのだが、他の参加者に聞いたら感じなかったとのことなので、体重が軽めだから? と思いながらも、日本じゃレースをしない限りそんなスピードをださないからいいか、と特に気になる程ではなかった。

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排ガス規制のユーロ4に適応させると共に、ライドバイワイヤのセッティングをかなり調整したとのことだが、ただ単に大人しくスムーズになっているだけでなく、引っ張って加速して行く気持ちよさが加味され、操るのがたのしく、飽きることなく乗っていられるのだ。コーナーに鋭く切り込んで行ける小回りが利くハンドリングに、レスポンスの良いかっちりとしたブレーキと、しなやかに動くサスペンションがしっかりとした路面の接地感を感じさせ、怖さを拭っていく。ビビリミッターが割と早めに利く私にとって、安心感というのは絶大な盾となり、細かいワインディングをどんどん攻略していける。あたしって、こんなに乗れたっけ? とのぼせ上がる程。

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回せば回すほど、兄貴分である「1290 SUPER DUKE R」のコンセプトである"野獣"的な部分がちらりと顔を見せ、もっともっとと誘いをかけてくる。まさしく"コーナリングロケット"。コーナーをクリアしていくのが楽しい! 女性だからと"それなり"に気を遣って貰ったのだろうが、超ハイスペースな先導にも、大きな遅れを取ることなく、気持ち良く(ここ重要)付いていくことが出来たのは、390ccという排気量ならではのことだったのだろう。だって、これ以上大きな排気量だったら、こんな細かい道、パワーがありすぎて回せなかったと思うのだ。それでいて、390ccという排気量を忘れさせるパワフルさ。これはもう、大型車に拘る必要はないのかもしれないという快適さだった。


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390DUKEのターゲットは「どんなシーンにも最高のパフォーマンスを求める大人」としている。今や、各メーカーの本気度がうかがえる、普通二輪免許で乗ることができるモデルが豊富となり、排気量の壁を越えて、乗りたいバイクを選べる時代となった。なんてステキなことなんだろう。
830mmのシート高だって問題ない。この車両、男性はもちろん、女性でもガンガン楽しくいけまっせ! やんちゃなスタッフが作った、やたらと元気なバイク。スタイリングと単気筒が好きなら、これはアリです。

※試乗車と写真の車両にはオプションパーツが装着されています。



■着用ウエア
○ヘルメット:SHOEI
 Z-7 FLAGGER
○ライディングウエア:KUSHITANI
 ミューラージャケットストレッチフィットパンツアドーネシューズ

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■KTM 公式サイト
http://www.ktm.com/jp/
■SHOEI 公式サイト
http://jp.shoei.com/
■クシタニ 公式サイト
http://www.kushitani.co.jp/