BMW 740e iPerformance
 BMWと言えば 7代目5シリーズの登場で世間が賑わっているが、ボクにとって真の"Luxury"は、いま新世代7シリーズにある。というか"ナナ"に乗る度に、夢中になる。その言葉では言い尽くせないまったりとした幸せなライド感にこそ、新世代BMWの目指す地平があるような気がしている。


先代までは 7シリーズも、これほどの快適性を持ち合わせていなかった。どちらかといえばその価値観はBMWの旗艦として"ハバを効かせる"方向性であり、全てがどっしりとしていた。動きの鈍ささえもがある種の威厳になっていて、それが若かった自分にとっては「老人のためのクルマ」に映っていたとも言える。もっともこれは日本の速度域で7シリーズの性能を試すことができず、ひたすらゆっくり走るしかなかった中での印象が支配的だからではあるが。


しかし新世代の 7シリーズは、この巨体をしてまるでミズスマシのように進む。


実際そのシャシーには「Carbon CORE」のエンブレムが示す通りカーボン素材が盛り込まれており、従来型と比べて最大で130kg以上の軽量化が果たされているという。つまり戦艦からステルス潜水艦へと変わったというわけである。あっ、もぐる必要は...ない。


とはいえシャシーが軽くなれば、全てが軽くなるほどクルマは単純ではない。7シリーズの場合そのサスペンション構造やダンパーのしゅう動性、ジオメトリーなどが全て軽やかな方向へと稼働するべく動くから、身のこなしが軽くなっているのだとボクは思う。エンジニアたちもきっと、これだけの軽量化が達成できたからこそ、7シリーズに軽やかな走りをイメージすることができたのだろう。


これだけの前置きを説明しなくてはならないほど、7シリーズの乗り心地は、ハンパなく快適だ。足下に20インチのランフラットタイヤを履こうとも(40扁平とボリューミーではあるが)、路面の凹凸や目地段差をトトンッ!と乗り越える。標準装備となる可変式エアサスは、唯一のネガティブである"収まりの悪さ"をダンパーが見事に抑え、ウォーターベッドのような浮遊感なしにそのボディを支えている。

BMW 740e iPerformance
そしてこんな乗り味に加えて、前席にはマッサージ機能まであるのだ。そしてこのポコポコとエアボールを背中に押しつける制御が運転の集中力を削がないレベルに快適で、本当に何百キロでも走ってしまいたくなる。


だからハッキリ言おう。中年男子は7シリーズにチョイ乗りするべからず。こんなものを40代から知ってしまったら、踏ん張りが効かなくなる(笑)。

BMW 740e iPerformance
今回試乗したのは「740e iPerformance」。"e"のイニシャルが示す通り9.2kWh(68ps/100Nm)のリチウムイオンバッテリーを備えるプラグインハイブリッドで、主動力は2.0直列4気筒ツインパワーターボ。これが258ps/400Nmの出力を発揮するから、システムトータル出力は326ps/500Nmにもなる。

BMW 740e iPerformance
その走りは、エキゾチックでありラグジーでありスポーティ。直列4気筒ターボを積んだ鼻先はこの巨体にしてノーズの入りがスムーズで、幅広いトレッドと長いホイルベースがそのヨーモーメントを上手にコントロールしてくれる。


極低速域から80km/hまではEV走行が可能で(フル充電での航続距離は42km)、遮音性の高い室内と併せて、かなり質の高いパーソナル空間ができあがる。またハイブリッドモードとしては140km/hまでのアシストが可能となるから、日本の使用領域ではほとのどのシチュエーションでオーバー300psの加速が味わえる。


ガス欠ならぬ電欠は専用の充電ケーブルで4時間を有するというが、そんな歯がゆさをBMWが1000万円級フラグシップのオーナーに味合わせるわけもなく、回生ブレーキやエンジンによる発電によって、走行中でも100%までバッテリーを回復することが可能となっている。

BMW 740e iPerformance
シームレスな乗り心地と静寂に包まれた空間(オペラを大音量で流してもいいが)で疲れを癒し、ときに自分と7シリーズに鞭を入れながら充電を行う。そこには、タメ息とにやけ顔とが入り交じるような不思議な贅沢感があった。「SPORT」モードではダンパーの減衰力がハーシュネスを伴わないギリギリまで高まり、巨大なボディをベターッと支えながら遠心力と静かに闘う。ロールは大きいけれどそれが怖くないのは、先に述べた全幅及びホイルベースの大きさと、シャシー剛性の確かさが効いているからだ。


PHVだけに車重は2060kgもあるあから、正直タイムラグなしに立ち上がる100Nmのモータートルクをもってしても、その全開加速は刺激的とは言い難い。また遠くからは猫がノドを鳴らすかのように可愛らしく4発ターボのうなり声が聞こえ、マッドネスな語らいだけならここに6発ターボをブチ込みたいとも思う。けれど、別にここはドイツじゃない。他人と勝負するよりも、この極上をパーソナルにたっぷりと味わう方が幸せだとボクは感じた。


BMWはEV開発においてその先達であるトヨタと手を結んだけれど、トヨタも代わりにこのシャシー及び出力制御技術を、たっぷりと享受してレクサスに活かして欲しいと思う。いまBMWは"癒やし"というテーマでは抜きんでている。他を圧倒せずとも軽やかにプレステッジ性を高めるその知性には、日本人が古来好む「佗び寂び」にも通じる魅力と説得力がある。

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