アウディはいま、静かに変革の時を迎えている。

 大げさに聞こえるかもしれないが、チューリッヒでの2日間の試乗を終え、ボクはそう感じた。
Audi Q2はアウディが次世代に問うコンパクトSUV。アウディらしからぬポップ&キュートなルックスからもわかる通り、Qシリーズ(アウディのSUVグレード)の中でもその立ち位置は、「Q2のヤンチャな弟」というキャラクターなのだという。

AUDI Q2
 スリーサイズは全長×全幅×全高が4190×1790×1510mm。コンパクトなボディはA3がベースというよりも、A3やAudi TTと共用する最新のFWD用モジュール(MQB)をベースに構成されている。VWグループは早くからこのモジュール構造を採用しており、これによってインパネ周りのサイズは決まってしまうらしいが、それぞれのキャラクターに合わせたボディメイクが可能となっている。
 ちなみにその生産は、本拠地であるインゴルシュタット。A3TTと同じ、最新の生産ラインで作られている。


 エンジンはガソリンが1.0/1.4/2.0TSFIの3種類、ディーゼルが1.6/2.0TDIの2種類。その中でも今回ボクは、1.0/2.0TSFIと1.6TDIに試乗できた。参考までに日本に一番最初に導入されるのは来年で、グレードは1.4TSFIのSトロニックモデル。2リッターは現在検討中で、ディーゼルはまだちょっと先の話になりそうな気配であった。
AUDI Q2
 というわけでまず日本導入予定である1.0TSFI(FWD)の印象をお伝えすると、実にアウディらしい精緻なパワーユニットであった。
 Audi A1にも搭載される999ccの直噴ターボは、その出力が95ps/160Nmから116ps/200Nmにまで高められており、A1(1120kg)に比べ85kgほど増えたSUVボディを(といっても予想以上に軽いのだが)、みごとな出力特性と共にに引っ張ってくれる。


 アクセルをフラットアウトして加速をするような場面では、当然排気量の小ささを実感させられる。しかし信号からのゼロスタートや、流れに乗った場面からパーシャルスロットルで速度を高めるときなどは、ターボの過給がしっかりと掛かって、グイッ!と初速をつけてくれる。


 そして、そのまま低いギアで回転を上げて行くと、独特な3気筒ユニットの鼓動をビーン!と響かせながら、きっちりとトップエンドまでこれを回しきる。そのフィールは実にスムーズで、絶対的なパワーという意味ではないのだが、エンジン単体として力強い。だから1リッターエンジンをして「いいモノ感」を感じられるのだ。やっぱりアウディは、技術の高さが一番の魅力なのだと改めて思った。


 当日試乗した1.0TSFIのトランスミッションは6MTで、2速のギア比がワイドなために、ワインディングの急な上り坂などではモタつく場面もあった(大人3人と荷物を満載した上での話だが)。しかし日本導入モデルは7速Sトロニックとのことだから、こうした心配もおそらくは解消されるだろう。


 こうしたアウディらしいパワーソースに対して足回りは、ひとことでいうとカジュアル。コンパクトSUVのキャラクターを活かしてサスペンションはたっぷり気味のストロークを確保しており、55扁平タイヤ(215/55R17)のエアボリュームを活用して、ハンドリング応答性と乗り心地をうまく両立させている。


 後部座席の突き上げ感はやや高めだったが、これは荷物を満載にしたときのためにバネレートを高くしているからだろう。前席に座る限りは必要にして十分な快適性で、たとえばBMWミニと比べると少しソフトな感じ、という印象だった。ちなみに居住性は確保されているが、後席にゆとりを求めるなら、迷わずQ3を手に入れた方がよい。


 ステアリング応答性はスポーツカーほどダイレクトではないが、SUVの鈍重さがなくスポーティ。ほどよいサスペンション剛性が操舵に対してヒラリと車体をロールさせ、ベースグレードとしての軽快なキャラクターを演出できていた。ここには操舵時に舵角をクイック化する「プログレッシブ・ステアリング」の効果もあるのかもしれないが、電動パワーステアリングとの相性も良いようで、特にこれをやり過ぎとは感じなかった。

 次に試した1.4TSFI(FWD)は、「これぞアウディ!」と膝を打つほど、隙の無い完璧さを持った一台だった。直列4気筒となった直噴ターボは、3気筒に比べ+30ps/+50Nmの余裕を誇り(150ps/250Nm)、1.0TSFIで感じた歯がゆさを全方位的に払拭している。


 特に試乗車は7速Sトロニックを搭載していたこともあり、発進加速や追い越し加速でトルクの引き出しが自由自在。一度でもこれを味わってしまうと1リッターが大きく霞んでしまう。また高速走行では「シリンダー・オン・デマンド」が機能して2/3番シリンダーを休止させ、燃費性能に貢献してくれる。


 この力強いエンジン性能に対して、フットワークも高いスタビリティでイメージを統一させる。18インチタイヤを履いたサスペンションはロールが少なく、ステアリングから伝わる感触はビシッと座っている。
しかしながら路面からの突き上げ感が少ないのは、1.0TSFIと同じくタップリとしたサスペンションストロークがあるから。なおかつボディ剛性が高いため、路面からの入力がしっかりと減衰されるのだろう。


 となるとベストバイや1.4TSFIだと思うだろうが、ボクの考えは違う。お勧めしたいのは1.0TSFIの方だ。
なぜならそのデザインを見てもわかるとおり、Q2はアウディとしては挑戦的な一台。多角形(ポリゴン)をベースに、フロントグリルやエアインテーク、ライト類、さらにはフェンダーパネルのプレスまでもが構築されている。これまでヘッドライトの"目尻"から一筆書きのように流れていたキャラクターラインはフェンダーアーチで大胆に分断され、躍動感が表現されている。


 そこにはこれまでクールな姿勢を貫いて来たアウディの、"若返り"への欲求が表現されているように感じるのだ。となればその乗り味だって、どっしりと腰が据わった1.4TSFIよりも、1.0TSFIの軽やかさが似合うとボクは感じたのである。


 アウディが信条とする頑ななまでの直進安定性や、1ミリも隙を見せない精密な機械感。それに安心感や安堵感を抱く向きには1.4TSFIがお勧めではあるのだが、アウディが目指す"次なる地平"を覗いて見たいと思うなら、ボクは敢えてのベーシックグレードをお勧めする。ライバルはずばり、ミニ。カジュアルさと高性能さを併せ持つコンパクトSUVとして、がっぷり四つで闘ってくれると思う。

Photo:AUDI AG
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■アウディ 公式サイト
http://www.audi.co.jp/jp/web/ja.html