SUZUKI 2017 GSX-R1000
 「リッタークラストップの栄冠を取り戻す」というコンセプトのもとに、新型としては8年ぶりにフルモデルチェンジを果たたSUZUKIのフラッグシップモデル「GSX-R1000」そして「GSX-R1000R」。2015年のミラノショーでそのシルエットが明かされ、昨年2016年のインターモト(ドイツ・ケルンショーにてベールがはがされた。2001年に初期型が登場して以来、この「GSX-R1000」は6代目となる。

SUZUKI 2017 GSX-R1000
 この新型「GSX-R1000」の国際試乗会が、国内より一足先にオーストラリアのフィリップアイランドサーキットで行われた。

SUZUKI 2017 GSX-R1000
 GSX-R1000は、ご存じの通り、スーパースポーツと呼ばれるカテゴリーに属するモデルだ。スーパースポーツとはスポーツ面が超越しているという意味で、そもそもは和製英語であったとされ、欧米ではスーパーバイクのほうが通りがいいかもしれない。スーパーバイクワールド選手権という市販車ベースのレースカテゴリーがあり、GSX-R1000はこれに参戦していたマシンでもあるからだ(2017年は未参戦)。

SUZUKI 2017 GSX-R1000
 2輪レースには、最高峰に位置付けられるMotoGPがある。4輪のF1に相当するクラスだ。ただ、F1カーが公道を走るクルマとは別物と言っていいほど特化していることからすると、バイクの場合は、MotoGPマシンも市販のスーパースポーツも別次元の乗り物ではない。もっとも、1000ccの排気量は同じでも、最高出力はこの「GSX-R1000」がクラス最強の202psであるのに対し、MotoGPマシンは200数十ps。車重は燃料なしの装備重量で比較すると、190kg少々のGSX-R1000(ただし保安部品付き)よりも、MotoGPマシンはほぼ40kg軽量である。
 この違いが、マシンを限界で走らせるライダーにとって甚大なことは確かながら、車体ディメンジョンや前後サスペンションのストローク、タイヤサイズなど車体諸元がさほど違うわけではない。前後に2つの車輪しかなく、そのままでは倒れてしまう宿命を持ち、リーンさせて走るものである以上、近い形態にならざるを得ないのだ。しかも、この「GSX-R1000」がそうであるように、サーキットを速く走ることが第一義なのも一緒だ。

 つまり、誰もが入手可能な市販スーパースポーツは、最高峰のレーシングマシンの世界を覗き、味わうことのできる存在でもあるのだ。

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 「GSX-R1000」は、言うまでもなく高性能で、「走り、止まり、曲がる」ことを高次元にこなすことができるマシンだ。

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 最高出力202psはさすがに強烈。1速で引っ張れば車速は150km/h近くに達し、3速では軽く200km/hを超える。トップ6速での最高速はストレートが長ければ優に300km/hを超えるだろう。

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 その速度を確実に制動できる能力も備えている。バイクの場合、四輪車よりもホイールベースに対して重心が高く、減速時の荷重移動量が大きいため、フルブレーキングではフロントブレーキへの依存度がほぼ100%となる。そんな状況で、指2本だけのレバー操作で確実に制動力を与え、繊細なコントロールもできる。当然、ブレーキング後に続くコーナーで曲がる能力も高い。

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 今回、試乗の会場となったのは、オーストラリアのフィリップアイランドサーキットだ。
試乗した「GSX-R1000」は、09年に小型化されたエンジンを搭載した第2世代モデルの後を受け、エンジンをさらに小型化するなどして、今回全面的に生まれ変わった。そんな最新鋭マシンだけに、「走り、止まり、曲がる」という基本性能が、最高水準にあると言っていい。

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 だが、忘れてならないのは、それを生かすのも殺すのも、操るライダーであるということだ。だから、高性能化であればあるほどに、扱いやすく、コントロールしやすいものでないといけない。加えて、現在は電子制御によってそれをアシストする技術も一般化、それによって高性能を有機的に取り出すこともできる。

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<GSX-RR>
 スズキは現在、MotoGPに「GSX-RR」で参戦。しかも、エンジンを同じ並列4気筒とし、市販車への技術還元を前提としている。つまり、「GSX-R1000」の進化で培ってきた技術にモトGPからの技術を加え、この最新型は基本性能のみならず、コントロール性が素晴らしく高められているのだ。その意味でも、「GSX-R1000」は技術的に最先端を行く市販マシンなのである。

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 エンジンには、吸排気系や動弁系に4つのデバイスを投入。これらによって、それぞれの回転域の性能を補完、全回転域において高性能化し、つながり特性を改善している。おかげで、淀みなくエンジンは吹き上がっていく。唐突さを感じる領域はない。気が付いたらスピードが出ていたという状況になりかねないが、つながり特性に優れ、速度変化を体感しやすく、突然、未知の領域にワープしてしまうなんてことはない。ピーク域も広範囲に渡り高トルクで覆われていて、ピーキーさはない。
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 スロットルレスポンスもスムーズで、調整可能なドライブモードが最もシャープな"A"でも唐突さはなく、扱いやすい。自制心さえあれば、誰にだって乗れるはずである。とは言え、これだけの高性能車だ。フル加速では加速Gでいとも簡単にフロントが舞い上がり、前へ進めないばかりか、最悪の場合、制御不能になりかねない。実際、この「GSX-R1000」では4速でさえ、240km/hでフロントが軽くなって、不安定になるときがある。
 これには、ウィリーコントロールが作動。バイクの姿勢や運動状態を検知する「IMU(慣性計測ユニット)」が前輪の浮き上がりを検知すると、発生トルクを減じ、ウィリーを抑えてくれる。
「GSX-R1000」のウィリーコントロールは、トラクションコントロール(以下、トラコン)との連動で設定できる。10段階に設定できるトラコンは、数字が大きくなるほど介入度が増し、マシンの挙動はおとなしくなる。実際、"3"のとき4速のフル加速で少々暴れたフロントは、"5"ではかなり安定性を増した。

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 ブレーキングでは、ブレーキシステムそのものが秀逸なだけでなく、ABSが有効に働いてくれる。ABSは四輪車でもお馴染みで、車輪のロックが検知されると、ブレーキ液圧を下げてロックを解除、そして再作動を繰り返す。が、これまでの一般的な街乗りバイクのABSは、サーキットでは使い物にならなかった。ロック解除と再作動の周期が大きく、制動距離が伸びてしまうからである。
 ところが、このABSはサーキット走行向きに設定され、効き過ぎないこともあるが、作動周期が小さく、自信を持たせてくれる。さらに「IMU」が急減速のGによるリヤリフトを検知すると、フロントの液圧を弱め、リヤリフトを抑えてくれる。そればかりか、「IMU」がバンク角の増加を検知すると、ABSを早めに効かせ、転倒を防いでくれるのだ。

 ライダーに冷や汗を掻かせかねない挙動が、見事に排除されている。

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 新型「GSX-R1000」は旋回性も向上。エンジンのコンパクト化によるマスの集中化、車体の剛性バランスの最適化のおかげなのだろうが、そのマシンの曲がる能力を生かすには、ライダーにはタイミングの良いダイナミックな体重移動が求められる。そのため、この新型は燃料タンクがコンパクト化されており、体重移動の自由度が高められている。

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 コーナーで向きを変えたら、いかに早くトラクションを与え、脱出速度を高めていくかが求められるのだが、当然、リヤタイヤのグリップ限界まで攻め込むことになる。
リヤサスはタイヤが伝達できるトラクションの限界に向かって沈むが、リヤのスライドによってまた伸び、それを周期的に繰り返す。
 またスイングアームやフレームは、トラクション限界に向かって捻られ、限界に達すると元に戻される。サスの動きとフレームのしなりがシンクロし、それがマシンからの情報となって、コントロール性を高めてくれるわけだが、そうした挙動が新型「GSX-R1000」は抜群にいい。

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 試乗した上級型「GSX-R1000R」には、前後サスにショーワのバランスフリータイプが投入され、しっかり踏ん張りながらも、動きはしなやかそのもの。そのうえ、車体のしなり感が最高で、しなやかながらも、常に芯がブレない。情報量が豊かで安定しているので、さらに攻める気にもさせられる。
 そして、撓んだサスや車体が元に戻されるタイミングを、トラコンの設定でセッティングできる。トラコンの介入度を高めれば、サスや車体を大きく撓ませることなく、元に戻すことができる。電子制御が車体セッティングに絡んでいるわけだ。

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 電子制御に関してもう一つ、感心させられたのは、上級型「GSX-R1000R」に装着されたアップだけなくダウン側でも有効なオートシフターである。スロットル全開のままクラッチ操作なしでのシフトアップが可能で、シフトダウンでは左足のシフト操作だけで、自動的に空吹かしして回転を合わせてくれる。しかも、その操作は完璧である。公道でもスタートから停止まで、クラッチ操作は必要ないのである。

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 このようにサーキットで扱いやすくても、一般の人が公道で走らせることができるシロモノなのか、疑いを持つ人も多いと思う。でも、意外なほど扱いやすいはずである。

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 足着き性は小柄な日本人が公道で使えるレベルにあり、身体を動かしやすく威圧感もない。アシスト付きクラッチは操作が軽く、スロットルレスポンスがスムーズで十分なトルクが湧き出てくるばかりか、発進時や低速時にエンジン回転数を少しだけあげる「ローRPM」アシストのおかげでエンストの心配もない。
 確かに、普通の街乗りバイクよりも、ライディングポジションが前傾し、ハンドル切れ角も小さいから、快適で操りやすいわけではない。
 とは言え、誰もを受け入れてくれる乗り物として、この"スーパーバイク"は世に送り出されるのである。

■GSX-R1000
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■GSX-R1000R
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日本での発売時期や価格はまだ未定だ。

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和歌山利宏○Toshihiko Wakayamaーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1975年にバイクメーカーのエンジニアとして、モーターサイクルのキャリアをスタート。その後、レーシングライダー、タイヤメーカーのテストライダーとしても活動し、ジャーナリスト歴も四半世紀を超える。特にここ20余年は海外試乗を積極的にこなしてきた。エンジニアの経験もあって、技術的な論評を得意とする。

■スズキ 公式サイト
http://www.suzuki.co.jp/


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