<GLOBAL MX-5 CUP 仕様車>
 2017年から世界同一仕様でスタートする、マツダ ロードスターのワンメイクレース「グローバル MX-5カップ」。そのカップカー試乗会が筑波サーキットで行われた。

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 現行ロードスターの説明はもはや必要ないとは思うけれど、久々に超ライトウェイトスポーツカーとして原点回帰した"ND型"のレーシングカーは、やはりといおうかその素性の良さが、キラーン!と光る一台だった。

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 カップカーのベースとなるのは、日本では未導入となっている北米仕様の2リッター版。面白いのは試乗車が、左ハンドル右シフトになっていることだった。

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<ウェットタイヤ・スリックタイヤ>
 今回ラッキーだったのは、2回の走行をウェット&ドライで走れたこと。午前中は前日の天候から路面が濡れており、ウェットタイヤを履いて走行。完全に路面が乾いた午後からは、スリックタイヤでその違いを比べることができたのである。ちなみにグローバルカップカーが装着するタイヤは、BF GOODRICHのワンメイク。BF GOODRICHは日本ではあまりなじみのないメーカーだが、現在はミシュラングループの一員として活躍する、由緒正しい老舗ブランドである。またその足回りもワンメイクで、アライメントやライドハイト(車高)のセッティングノウハウ(とドライバーの腕)が勝負の行方を左右する仕組みとなっている。

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「コッチのマシンよりも、カップカーの方が速いからお手柔らかに!」と声を掛けてくれたのは、オフィシャルのレーシングドライバー。昨シーズンはスーパー耐久でもマツダ・デミオで活躍した関豊選手だ。また先導車はスリックタイヤを履いた先代「NC型」のパーティーレースカーだったから、その違いを見てみるのも楽しみだった。


<ROADSTER NR-A>
 さて肝心なカップカーだが、これはもう、まごうかたなきレーシングカーである。日本で開催されるロードスターのパーティーレース車両「NR-A」は、一般公道も走行可能な車両でレースをするべく、「Nゼロ規定」で作られている。

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 対してカップカーは完全なサーキットユースだから、カーペットやエアコン、オーディオといったレースに必要ない快適装備は省かれている。もっときちんと説明すれば、万が一のクラッシュで起きた車両火災でも、火の手が広がらないようにカーペットが剥がされ、大きな消火器と、外部からもエンジンをキルスイッチが装着されている。

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 そしてボクが大いに感心したのは、そのロールケージのゴツさだ。フロントにはフロアとバルクヘッドに2本、リアに至ってはセンターのロールフープとトランクルーム側の補強をダブルのクロス補強とし、サイドインパクト用のバーまで入れて、乗員を徹底的に守る姿勢を貫いている。軽さが売りのロードスターでこれほどまでに補強を追加するのは日本的な感覚からすると驚きだと思うが、メーカー主導のレースとしてジェントルマンレーサーの命を守ることは絶対。これが当たり前に行われる北米マツダの姿勢には、正直嬉しくなってしまった。

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 実際その補強は、グローバルカップカーの個性をより明確なものにしてくれた。その剛性感は、ロードカーはもちろん、この後に試乗したパーティレース車両とも比べものにならないほど高いのだ。高い入力に対しても、ロードカーで見られたフロントサスペンションの取り付け部分や、フロアのシェイクがまったく起こらず、「あぁ、オレってばいいクルマに乗ってるなぁ...!」というワクワクした気持ちになる。

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<GLOBAL MX-5 CUP 仕様車>
 気温が低い朝一番、初乗りのレーシングカーにして、ほどよい緊張感のままスッと車体の動きが体になじんだのは、レインタイヤがしなやかに路面を捕らえてくれるから。ストローク量が短く引き締まったサスペンションを、ゆっくりと伸縮させるだけのグリップ力があるから、これなら安心して最初からレーシングスピードに入って行ける。

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 車体がどれほど重たくなっているのかはわからないが、専用ECUとエキゾーストで磨きをかけた2リッターのスカイアクティブエンジン(ノーマルは157ps)も、結構速くて何より気持ち良い。レーシングタイヤをアクセルオンでスキッドさせるほどのパワーはないけれど、第2ヘアピンからの立ち上がりでは、ジワジワとNCロードスターに迫って行くだけのスピードは持っている。

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 だからNCロードスターには、簡単に追いついてしまう。特にスリックタイヤを履くと、その差はより明確なものになる。ブレーキングはより奥まで行けるし、そこから鋭いターンインでコーナーへ入って行ける。パワーがそれほどなくても楽しいのはロードスターならではの個性だが、そこにドーパミンが吹き出るような刺激が加わったのが、グローバルカップカーの運転感覚だと言えるだろう。
 ただちょっとだけ残念なのは、そのシャープなフロントエンドに対して電動パワステ(EPS)の反応が時折遅れること。ハンドルからの手応えが一定せず、途中から急にグリップ感が上がったり下がったりする。

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 またBF GOODRICHのスリックタイヤはそれほどグリップ力が高いわけではないのだが、筑波レベルの旋回Gだとこれを潰しきれない。つまり、先導車がいるレベルではほとんどオンザレールで走れてしまうから、限界特性は確かめきれなかった。

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 ちなみにこのタイヤはドライバーの運転技術向上と、スプリントレースにして1レース45分間という長丁場を安定して走りきれるだけのライフを考えて設計されているために、コンパウンドも硬め。だからきっちり潰してやらないと、高いグリップが発揮できないのだ。

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 そして6速MTのギア比もかなりハイギアードだから、筑波ではパワーバンドにうまく入りきらない。つまりもっともっと旋回Gが高い、広いサーキットを睨んだ仕様となっているのだろう。ここがアメリカ的な感じ。ちなみに日本での開催サーキットはSUGO、ツインリンクもてぎ、富士スピードウェイ、鈴鹿、岡山国際サーキット。高いGが続く鈴鹿やツイスティな岡山なら、そのグリップを目一杯引き出して走れそうだ。


 それでもダンロップコーナーから80Rにかけて、タイヤがグーッとたわむと最高にゴキゲンなターンスピードで、グローバルカップカーは駆け抜ける。


<ROADSTER NR-A>
 この楽しさを一度でも味わってしまうと、残念ながらどうしても「NR-A」の走りは霞んでしまった。もちろん入門用カテゴリーとして、その参戦費用の低さは魅力的。ナンバー付きレース車両だから、練習走行にサクッと自走して行けるのもいい。ラジアルタイヤだからマシンコントロールを学ぶのにも最適...と言いたいところなのだが、むしろ挙動がトリッキーな分だけ、運転はNR-Aの方がビギナーには難しいのではないかと思った。ある程度の腕がある方が、NR-Aは楽しいと思う。


 それだけグローバルカップカーは懐が深く、ビギナーから玄人まで楽しめる内容に仕上がっていた。軽いマシンできっちりレーシングカーを作るとこうなるのだ!というまさに好例。ロードスターだからこそ実現できた最高のクラブレーサーだと太鼓判を押したい。

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 だからグローバルカップカーにおける問題は、ひとえにその788万4000円という車両価格だろう。レースに参戦すれば、当然消耗品や年間エントリーフィー(54万円)もそこに上乗せされる。

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 レーシングカーの作りとしてこの車両価格は妥当だ。レースとして考えれば、コストもうまく抑えられている。でも日本の経済状況からすると、パッと飛びつくには躊躇もしちゃうよね。ボク個人の印象としては、これを「リーズナブルですよねっ!」とはとても言えない。レースって、お金が掛かるなぁ...。


 でもでも、それだけにこのグローバルカップカーには夢があると思う。たとえば10年間かけて楽しむならより現実味が高まるし、毎年レースに出なくても別にいいと思う(主催者はいやだろうけど(笑))。それができるだけの耐久性はあると思うし、手に入れたらボクらジェントルマンドライバーにとっては"一生モンの宝物"になるだけのポテンシャルを持っている。壊さなければ売ることもできるしね。

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 だからボクは、まずこんな最高のホビーレーサーが日本でも手に入れられるようになったことを褒め称えたい。あとはオートブログ・ジャパンが、チームを組んでグローバルカップに参戦してくれれば言うことナシ!!!

■マツダ 公式サイト
http://www.mazda.co.jp/


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