DUCATI Scrambler Desert Sled
デザートスレッド。直訳すれば"砂漠のそり"。となるのであるが、これはエンジンガードの役目を果たすスキッドプレートのことを意味するのだそうだ。オフロードでのその状況をイメージすれば「デザート・スレッド」なるほど。理解しやすいネーミングではある。これは60~70年代に、米・カリフォルニアで流行したカスタムムーブメントの名称にもなっていたもので、オンロードバイクにオフロード用の足回りを移植し、砂漠を駆け巡っていたマシンにインスピレーションを得たものらしい。

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<DUCATI Scrambler Desert Sled>
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<DUCATI Scrambler Icon & Classic>

スクランブラーをベースに・・・。すでにこのマシン自体もオフロード風味ではあるといえるだろう。2014年に登場したスクランブラーは、同じく、オンロードマシンをベースとしたオフロードイメージのマシンとして、1962年に同社より販売されていたーー。そんなクラシックなマシンをルーツとしたリバイバル的な登場であったが、そのおしゃれなスタイリングやイージーな乗り味。そんなイメージから想像するよりも、はるかに良く走るといったキャラクターが人気を博し、発売から2年で3万台以上を販売するベストセラーモデルとなっていた。

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そしてデザートスレッドはよりオフ性能を高めるべく、フロントホイールの17 19インチ化をはじめ、前後サスペンションをロング化することによるショックの吸収性の向上。スイングアームも伸ばし、ジャンプ等のハードな走行を考慮してフレームを強化・・・と、大幅な変更がされている。

さて。どんな乗り味になっているのか?

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ドゥカティの試乗会はいつもエキサイティングだ。そのマシンに合うような走行コース設定はもちろんのこと、単純にマシンの性能をお披露目するだけではなく、その世界観にもこだわりを見せる。どういった背景があって、このマシンを作ったか・・・、資料数十ページで詳細に説明したところで、それを感じるのは難しい。

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そこで、こんな場所を用意してきた。
会場はスペイン・アルメリア。しかし、そこはスペインであってスペインではない・・・。
西部劇にそのまま出てきそうな街・・・、実際にハリウッド映画も多数製作される会場としても有名なFORT BRAVOが試乗コースのスタート地点だ。

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バーの前にずらりと並ぶのは馬ならず、デザートスレッドだ。

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シート高は860㎜とかなり高めであり、ジョン・ウェインのような体格に恵まれない私はよっこらせとマシンに跨る。跨ってしまえばシートはサイド部がうまく絞り込まれ、数値からイメージするよりも足つきは悪くない。イグニッションをオンにし、エンジン始動。必要以上に消音されることのない、歯切れの良いサウンドだ。

よっしゃ!

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馬に鞭をいれる代わりにアクセルをグイッと開け・・・るのをちょっとためらった。今回の試乗会では、オン&オフロード。両方の走行があるとは聞いていたものの、ダート走行に関してはマシンのイメージ撮影的な軽いものを想像していたから、いきなりオフロードからのスタートには少し面食らった。馬には優しいフカフカ路面ではあるだろうけれど・・・、しかも、これじゃあいきなりマシンが汚れてしまうじゃないか! と、丁寧にマシンを走らせ始めた。

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しかし、いっこうに路面はアスファルトに変わってくれず、そればかりかドンドンとコンディションはハードに変わっていくではないか!

オイオイ!

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いや、こりゃ楽しいぞ! このコース設定の意図が。そしてこの長いストロークの意味がわかってきた。
大きなジャンプはないものの、小振りのジャンプや大小さまざまなギャップ。土質もふかふかのサンド系から硬くしまったダート。ニュルニュルのマディ風味。石ころの混じったガレ場etc・・・。
そんなあらゆる路面をものともしない走破性。場違いなところに迷い込んでしまった感はすぐに消え去り、最高のシチュエーションを選んでくれたことに感謝する。

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<Ducati Multistrada 950>

例えばドゥカティにはオフロード走行をもっと真剣に取り組んだと思われるムルティストラーダというモデルもあり、それは最新の電子制御を駆使してオフロードでの走破性をあげている。
反面、大柄で重くもなりがちなそれらは、気軽にダート走行をする気になり難い面もあった。その点、デザートスレッドは断然気楽だ。それが楽しさにつながり、怖さや不安感なども感じられないのだ。
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長かったダートセクションを走り終えて、しばし一服。緊張が解けるのにともない、走ってきた状況を頭の中で整理し、マシンの印象を振り返ってみる。
オフロードではより繊細なアクセルコントロールが必要となるのであるが、そこに唐突な印象がまったくなかったことに気が付く。とくにデザートスレッドのベースとなったスクランブラーは、アクセル開け始めや極低回転域でのパワーの出方がちょっと唐突だといわれていたのにどうしたのだろう。
これは欧州での2輪排ガス規制が「ユーロ4」対応になったことが大きいという。今年から全ての車種にこの「ユーロ4」が適応されるため、様々なセッティングを見直し、スムーズな特性に仕上げたのだという。(嬉しいことに、これはスクランブラーシリーズ共通の変更だそうだ。)トラクションコントロールはもともと付属していないが、このスムーズなパワーデリバリーのおかげで無駄なスライドや扱い難さも感じなかった。

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また、中途半派なアクセル開度。回転数であっても、ガクガクッと粘り感のないスポーティーなツインエンジンに多い兆候もみられない。空冷エンジンらしいトルク感やパワー感。そして味わいすら感じられたように思える。
エンジンパワーも強大すぎず、じつに扱い易い。例えばムルティストラーダ等、最新のアドベンチャーモデルの大半にはいくつかのライディングモードが選べるようになっている。そこでオフロード用のモードを選択すると、かなりパワーを抑えるようにセットしてあるのが普通。STDで72hpというパワーは、素のままでちょうど良いパワフルさとなっているのだ。

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車体に関しても、ちょっと意外だったと振り返る。今朝、この地に降りて走り始めるまで、このマシンにそんなオフ性能を求めることなんてなかったのだ。カッコ重視とはいわないけれど、そこにプライオリティをおいていたのでは・・・、という多くのジャーナリストの心を見透かしているかのようなコース設定。しかしいまは納得である。

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オフロードでのライディングポジションはスタンディングが基本となるのだが、すぐにそのポジションがとれるような設定となっている。高めのシートは前後への動きの自由度が高く、コントロール性も高い。また、今回の試乗ではステップペダルがオプションパーツに変更され、ブーツのヒール部とのグリップ感が高められていたが、STDであっても保護のために装着されているラバーを取り外すことでホールド性を高めているなど、しっかりオフでの走りを考えている。

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STDのスクランブラーでオフロードを攻めたことはないからフレームの違いについては良くわからなかったのだけれど、強度は十分そうだ。また、長いサスペンションがギャップやいきなりあらわれた石ころにヒットしても、上手い具合にいなしてくれる。これはサスの吸収性だけでなく、フロント回りの軽さ。自由度が高い証拠でもある。

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もちろんフロントに21インチを履く本格的オフロードモデルなどと比べるのはフェアではなく、重量だって軽いわけではない。速く走るということに関しては、求めるべきマシンではないというのが前提かもしれない。しかしそれはスクランブラーのロード性能・・・。決して速さを謳っているマシンではないのに、ワインディングに行けばけっこうなペースで走れてしまう、という潜在能力の高さに通じるものだ。装備や性能不足での怖い思いをすることがないだけでなく、適度な重さや大きさがクッション材のようになって、楽しさに通じるものがあったのだ。

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ABSは装備されているが、設定はオンかオフのみで、細かく介入具合を変えてくれるという機能はない。そうなると、オフロード路面では、簡単に滑ることでABSが即座に介入。結果的に制動距離が伸びてしまうことから、設定はオフに。しかし、これも丁寧な操作という基本を守れば問題ない。これは装着されるピレリ製スコーピオン・ラリーSTRの恩恵もあるだろう。マシンと同時に開発されたという、専用設計ともいうべき位置づけのこのタイヤはオフロード路面でもかなりグリップ感が高い。開けていく場面でもトラクション性能が高いだけでなく、スライドのコントロール性も良好。スイングアームの長さを延長した効果もあるだろう。唐突な動きになり難いものだった。

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一服を終え、今度はオンロードで再スタート。
ダート路面ではなかなか大きく開けられなかったエンジンに一鞭当ててみる。
ドゥカティらしい伸び切り感が気持ち良い。
電子制御システムはほとんどないシンプルな構成ながら、そのパワー。トルクがちょうど良いバランスで、これ以上必要と感じられない。ある程度の回転数をキープしたまま、スロットルをオンオフ。急激なトルクの盛り上がりやバックトルクも少なく、ライダーの感覚に近いところで反応してくれるのが、楽しさに繋がる。
車体は高い位置から操っているような開放感が新鮮だ。デュアルパーパースモデルなどでも良く感じられる自由度の高さがあり、スイスイとレーンチェンジを許容する。

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前後のサスペンションは、オフロードを走っている時には適度に動き、フィーリングとしては柔らかいとも思えたのであるが、オンロードではへたにピョコピョコすることなく、カッチリとした手応え。これはタイヤも含めてで意外なところだった。
デュアルパーパスモデルに多いのが、コーナーを攻めていく過程でサスペンションが動きすぎたり、あるいは長いことによるしなりや剛性不足、さらにはブロック系のタイヤが押しつぶされての不安感など、ペースアップに伴って、そんな弱さを露出しがちなのであるが・・・。デザートスレッドはグッと踏ん張りをみせてくれる。だから身体をマシンに預けていけるのだ。そうすると、先ほどまで硬く感じられたサスペンションが上手い具合に沈み込み、グリップ力と旋回性もあげていくことが出来る。

なんだか狐につままれたような気分だぞ。

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限界性能が飛びぬけて高いわけではないのだが、スキルに頼ることなくイージーに取り出すことが出来る。19インチというフロントホイール径が神経質さを潜ませ、ライダー主体でライディングに夢中になれるスタイルだ。

やっぱりオンロードも楽しいぞ!

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すっかりその走りを堪能して、スタート地点のバーに戻る。
開発陣の一人が「どうだった?」と話かけてくる。その顔は自信に満ち溢れていて、答えは言わなくってもわかるがな! といった雰囲気だ。
もちろん土で汚れた僕の顔が満足そうに見えたからかもしれない。
右手の親指を突き上げて「グレイト!」と応える。
それは、エキサイティングだったダート。そして、オンロードでの走りに対してのものだけではなかった。
なにかに特化した性能ではなく、汎用性の高いマシンに仕上がっていたこと。そして、カッコ良く楽しい、というシンプルながら、もっとも大切な要素をしっかり感じさせてくれたことに対してだ。
いわゆる、スタンダードなマシンではないものの、DUCATI スクランブラーの新顔、「Desert Sled」はそれら全てを含めて、トータルで魅力的に仕上がっていたのだ。

鈴木大五郎●DAIGORO SUZUKIーーーーーーーー
海外レース参戦の経験をひっさげ、国内2輪レースのJSB1000、鈴鹿8耐などのレース活動の他、二輪雑誌等でインプレッションを執筆するモーターサイクルジャーナリスト。また、自身で「BKライディングスクール」を主催するなど多方面で活躍。最近の楽しみはNHK趣味の園芸を録画して残さず観るという薔薇オタク。

■Ducati Scrambler 公式サイト
http://scramblerducati.com/jp
■Ducati 公式サイト
http://www.ducati.co.jp/


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