Audi Qシリーズの中核を担う、Q5が第2世代へと突入。これを生産工場であるメキシコの、ロス・カボス近郊でテストドライブしてきた。

Audi Q5
この手のクルマがフルモデルチェンジを遂げる場合、大概にしてその図体はひとまわり以上でかくなり、路線はさらにプレミアムな方向へと向かうもの。しかし新型Q5の進化は、そんなバカでもわかる内容ではなく、もっとインテリジェンスに富んでいた。
そのシャシー構造は、アウディのモジュラーシステムである「MLB」を採用。先代はA4やA5といった、同ランクのセダンやクーペと多くを共用していたが、今回からはSUVシリーズ寄りの構造が採られたという。どこをどのように使うのかは不明だが、ようするにQ5のモジュールパーツをベースに(もしくは共用して)、次期マカンが作られるということだろう。


スリーサイズは全長×全幅×全高が4663×1893×1659mmで、ホイルベースは2819mm(2.0TSFI)。ちなみに先代(日本では現行だが)は4630×1900×1660mmで、ホイルベースは2810mm。そのサイズアップは33mmの全長と9mmのホイルベースに当てられ、むしろ全幅などは7mm狭くなっている。
「兄貴分であるQ7がサイズアップしなかったから、Q5も大幅なサイズアップは見送ったんだ」と話してくれたのはAudiの技術者。さらには一番軽いモデルで比べると、90kgのダイエットが図られた。2.0TSFIの車重は1795kgで、先代モデルは1880kg(18インチ装着車)だから、それでも85kgも軽い。これぞ正常"進化"である。


エンジンは全部で5種類。そしてうち4種類はディーゼルターボというから驚きだ。
ガソリンエンジンは2リッターのTSFI(252ps)のみ。対してTDIは2リッターの直列4気筒ターボが150hp/163hp/190hpと3種類あり、最もハイパワー&ハイトルクなモデルが3リッターV6ツインターボ(286hp/620Nm)となる。
Audi Q5
今回試乗したのは、一番最初の日本導入モデルとなるであろう2.0TSFIと、本国でも発売前の3.0TDI。まずはガソリンモデルの印象からお伝えしよう。

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2.0TSFIのトピックは、何と言っても4WDの進化だろう。
「ultraテクノロジー」と銘打たれた新しいクワトロシステムは、センターデフとリアデフにそれぞれクラッチを持ち、クルマ側が4輪の駆動を適宜先読みして調整するシステム。
その主たる目的は環境性能で、早い話がセンターデフのクラッチを切り離すことによって、縦置きのクワトロでもFWD化が可能となった。その燃費改善率はおよそ60%。FWDモデルを基準としたとき、従来型クワトロの燃費は+0.5ℓ/100kmだったが、ultra化によってこれが+0.2ℓ/100kmになったという。


クワトロの美点といえば常時4WDであること。オンロードではそのトルク配分をリア寄りに設定し、異様に高い直進安定性を誇りながらも曲がりやすい4WDであることが自慢だった。そしていざ低μ路に差し掛かれば、抜群のトラクション性能を発揮する。
そのコンセプト、どこへ行っちゃったんだよ? と思わなくもなかったが、Audiとしても次世代を生き残るために環境性能を高めることは必須なのだろう。


今回アウディは特別にタブレッドでその走行状況を可視化してくれたのだが、そのグラフを見ると、走行の84%をFWDで走っていた。残りの16%は、発進加速やコーナリングで敢えて強くアクセルを踏み込んだときだった。


だが、こだわりまくればその走行フィールに、若干の不安定さを感じたのも事実。彼らを擁護するならば、普通に走る分にはまったく問題はない。ただかつてアウディが持っていた、鉄壁のスタビリティ感がやや足りないと感じたのは、そのほとんどをFWDで走っていたからだと思う。オプション装備となるエアサスの乗り心地も見事だったが、そのバウンスをリアからのトラクションで、ビシッと支えきる感触がない。ダイナミックモードを選べば4WD化のしきい値は狭まるというが、直進時はやはりFWDがメインである。
252ps/370Nmのパワー&トルクを発揮するTSFIと、7速Sトロニックの名コンビにいまひとつキレ味を感じなかったのも、やはりそれが原因だと思う。本当にこれは贅沢な話であって、料理でいえば「出汁」の取り方に文句を付けているようなものなのだが。
ちなみにこのultraクワトロは400Nmのトルクまで耐えうる仕様だから、後述する3.0TDIには装備できない。またスタンダードグレードである150hpのTDIにはオプション装備となる。


もちろんクワトロの性能は、いつも通りの素晴らしさだった。
エアサスを選んだ場合、今回からドライブセレクトには「allroad」(車高+25mm)と「Lift/offroad」(車高+40mm)が加わり、全部で7種類の設定となる。これを体験するべくコースには悪路も設定されていたのだが、Q5は隣接する海岸の砂浜に平然と降り立ち(もちろん許可は取っている)、スタックなしにこれを脱出することができた。またコース中盤では未舗装の荒れ地を60kmほど走ったが、かなりの勢いで飛ばしても、オーバーステアの"オ"の字も出さず走破してしまった。


我々日本人の場合、深雪地域を除けばSUVといえどアーバンユースがほとんどだが、世界的に見ればQ5のマーケットはロシアや南アメリカをも含んでおり、こうした地域は、普通に今回のような路面がある。だからこそ必然の性能として、Q5はエアサスを装備してその走りにオフロード性能を組み込んだのである。


そしてV6直噴ターボを搭載する3.0TDIだが、これは芳醇な乗り味だった。
レブリミットは5500rpmと、ディーゼルらしい低めな設定だが、1500ー3000rpmで発揮される620Nmのトルクと、8速のギアを持ってすれば、頭打ち感などまるでない。踏み始めから圧倒的な押し出しをもって加速し、超高速域までこの加速感が続く。その走りには、最上級グレードとしての品格と贅沢さが見事に表現されていた。


また前述の通り、クワトロは常時4WDだから直進安定性も高かった。なおかつロングストロークのサスペンションが、重たいはずのノーズを見事に抑えて、スィートにコーナーを旋回させてくれる。今回試乗車には装着されていなかったが、これでスポーツディファレンシャルを組み込めば所作は完璧だろう。そういう意味では、3.0TDIの方がエアサスの乗り味は合っている。
VWのディーゼル問題では色々あったが、ぜひとも日本導入を果たして欲しいモデルである。


まとめると二代目となったAudi Q5は、磨き上げたオフロード性能を軸に、かなりソフト路線を強調したモデルとなった。これはAudiシリーズ全体に言えることだが、鍛え上げられた細身の体に、素肌でワイシャツを着たジェイソン・ステイサムのようなガッシリ系から一転して、鍛え上げつつも当たりの柔らかい、マット・デイモンのような包容力を身につけたとでもいおうか。
ただ今回は、コンベンショナルな油圧ダンパー&スプリングを試すことはできなかったから、その全てを語ったとは言いがたい(こちらは従来通りの、ソリッドな乗り味を示すかもしれないからだ)。


センターコンソールがシステム化され物の置き場もなくなった、など少し小言もあるけれど、最小限のサイズ拡張で従来よりも10ℓ増えたトランク容量(通常時550ℓ、リアシートを動かせば660ℓ、これを倒せば1550ℓ!)や、Wifi機能を有するAudiコネクト、接触型充電パネルなど現代のニーズにもきっちり抑えている。


そんなQ5をアクティブに転がせば、そりゃあカッコいい。
日本導入は、2017年の中頃を目指すとのことである。

■アウディ 公式サイト
http://www.audi.co.jp/