【東京オートサロン2017】車重725kgに250馬力! スパルタンな英国製軽量スポーツカー「ゼノス E10」

Related Gallery:Tokyo Auto Salon 2017 Zenos Cars

先日、倒産が報道じられた英国のゼノス・カーズだが、今年の東京オートサロンでは、日本への輸入を手掛けるグループMのブースに、軽量スポーツカー「ゼノス E10」とその高性能版「ゼノス E10S」が展示されていた。

ゼノス・カーズは、かつてケータハムで最高経営責任者だったアンサー・アリ氏が、最高執行責任者のマーク・エドワーズ氏と共同で設立したスポーツカー・メーカー。ロータスでゼネラル・マネージャーを務めていたアリ氏は、2005年に投資家グループと共にケータハムを創業者一族から買収。CEOとして「セブン」の継続生産と発展に寄与したが、同社が2011年にマレーシア人の実業家であるトニー・フェルナンデス氏の手に渡ると退社し、新たに独自のスポーツカーを製造するためにゼノス・カーズを興した。一方のエドワーズ氏は1994年にエンジニアとしてロータス・カーズに入社、2002年までにグループ・ロータスの重役の地位にまで登り詰めた人物だ。



接着アルミニウム製のバスタブ型シャシーが特徴的な現在のロータスと、昔ながらの鋼管フレーム構造を持つケータハムという、2つの英国製軽量スポーツカーについて熟知するアリ氏とエドワーズ氏だが、ゼノス・カーズが採用したシャシーはそのどちらとも異なる。E10では押出成型によるアルミニウムで組まれたメインフレームが骨格となり、そこにアルミのハニカム材をリサイクルされたドライカーボンで挟んだコンポジット製のキャビンが載る。ブースにはこのシャシーから切り取った素材の一部が展示されていたが、持ってみると軽さがよく分かるだけでなく、強靱さも想像できる。さらに乗員の安全のために、このシャシーにはスチール製のサイド・インパクト・バーとロールオーバー・バーが備わる。




もう1つ、このE10の車体で特徴的なのは、ビルシュタイン製ダンパーとアイバッハ製スプリングをインボードに縦置きしたプッシュロッド式フロント・サスペンションだ。まるで純レーシングカーみたいだが、その開発はカナダのマルチマチック社(最近では新型「フォード GT」の製造を担当することで話題に)が手掛けたという。サスペンションのチューニングやタイヤについては、オーナーの希望に合わせて様々なオプションが用意される。




全長3,800mm × 全幅1,870mm × 全高1,130mmという短くてワイドで低いボディのミドシップに搭載されているのは、フォード製直列4気筒直噴エンジン。標準仕様のE10では2.0リッターの排気量から最高出力200bhp/6,800と最大トルク210Nm/6,100rpmを発生。E10Sはこれにターボチャージャーとインタークーラーが備わり、250bhp/7,000rpmと400Nm/2,500rpmに引き上げられる。車両重量はわずか700kg(E10Sは725kg)というのだから、好きな人にはたまらないはず。



その代わり、快適装備は皆無に等しい。エアコンやオーディオはもちろん、ドアもルーフもサイド・ウィンドウもなく、パワーステアリングもABSもトラクション・コントロールもエアバッグも装備されない。つまり、モダンなルックスに拘わらず、ケータハムに乗るのと同等の覚悟が求められる。ウインドスクリーン(フロントガラス)とワイパーさえもオプションという扱いだ。出先で雨に降られた時のために、頭上を覆うだけの簡素な幌(「ゲットホーム・ウェザーフード」という)も、一応オプションで用意されている。ダッシュボードには2基の液晶ディスプレイが備わるが、これはもちろんナビゲーションやインフォテインメントのためではなく、速度や回転数、さらにストップ・ウォッチやギアのポジションなどの情報を表示する。



コンポジット製の型に薄いパッドを張っただけのシートや、メッシュを通して見えるエキゾースト周りなど、"目でも分かる軽さ"にはある種の艶めかしささえも感じる。しかし、あと150kg重くてもいいから、せめてきちんと雨風を防げる装備やエアコンが付けられたら...なんてことを、特に倒産の話を聞いた後では思ってしまうのだが、それは2人の創業者が作りたかったモノではないのだろう。



日本ではようやく2016年後半から販売が始まり、現在までにごく数台が納車されたという。消費税込み価格は、E10が699万8,400円、E10Sは818万6,400円(ちなみにウインドスクリーンとワイパーはセットで49万4,700円)。金額だけを見れば、ロータス「エリーゼ」の高性能版やケータハムのミドル・レンジ、さらにはアルファ ロメオ「4C」とかポルシェ「718ボクスター」あたりにも近いが、これらのクルマと比較して購入する人は少ないだろう。英国にある本社の動向が気掛かりだが、この手のメーカーでは新たなオーナーが現れて復活するケースもある。ゼノスの設計思想に惚れ込んだピュアリストのためにも、何とかこのユニークなスポーツカーの製造を継続してほしいもの。