『セグメントの概念を超える』なんてことを、近年の自動車業界ではよく耳にする。だけど、それはぶっちゃけ、輸入車だけのオハナシなんではないかと、常日頃思っている私だ。

 特にコンパクトカーにおいては、その傾向が顕著な気がする。

 私は輸入コンパクトカーが大好きで、自身の愛車もソレを敢えて選んでいるのだけれど、なぜ輸入車なのか。なぜ国産コンパクトを選ばないのか。それを問われたら、明確に答えることができる。
 『コンパクトなのにラグジュアリー』という選択肢が、国産車ラインナップにおいてはイマイチ薄いからである。

 や、わかってる。わかってます。

 欧州ラグジュアリーカーメーカーの出すソレと、お求めやすい価格を全面に押し出す国産メーカーが作るコンパクトのソレが、明確に市場(というか購買層)を分けているってこと、アタマの中では重々承知。
 だけど、ここまで輸入コンパクトが売れている今、もうちょっとアッパーな価格帯で、もうちょっとイイモノ感のあるクルマが国産から出て来てもいいんじゃないの? というのは、ただの無い物ねだりなんだろうか。
 某国産メーカーの販売店社長に、その理由を聞いたことがある。すると、まだ若くしていくつもの販売店を抱えるその方は言った。
 「僕もそう思います。でも、小さいクルマは安くないと売れない、という考え方が、まだメーカーに根強く残ってるみたいなんです。」

 もったいね〜〜〜〜!!

 あ、ついクチ悪くリアクションしちゃったけど(失礼♡)、だけど、なにも原価を割ってまで良いもの作れとは言ってないんだからさ、せっかくあるコンパクトカーという商材を、もっと振り幅広く設定すればいいのに、と思ってしまう。
 商用車やレンタカーにも使えるような素の廉価グレードから、毎日ドアを開けるたびに心が華やぐような、ちょっといいグレードまで。
 高くてもいいから、毎日触れて乗るものには、ちゃんと投資をしたいって考える人は、今とても多いと感じている。


 さて、ここで話が本題に斬り込む。前置き長くてごめんください。
マツダ・デミオがマイナーチェンジを受けて登場だ。

 や、ええやん!

 ドアを開けてすぐに感じられる"上質感"は、長ったらしく前置きで述べた、かねてより心の中でくすぶっていた疑問を、払しょくしてくれるにふさわしい出来。だからホントびっくりしちゃったのだ。


 まず、外観の変更はほぼない。わずかにフォグランプ周辺に手が入ったのみに留まった。しかし、劇的ビフォー・アフターは内装なんである。
 その理由はズバリ、「話題のための変更ではなく、お客様への満足度のため」。
まあ、百聞は一見にしかずというから、是非写真をとくとご覧頂きたい。ね、綺麗でしょう!


 今回、試乗車として我々に用意されていたのは、ガソリンモデルが「13S Touring L Package」、ディーゼルモデルが「XD Touring」。前者のL Packageにはクロスブラック・白レザー内装が、後者には黒のファブリック内装が用意されていて、その質感がどちらも甲乙付け難いほど、なかなかに素敵なのだ。ステッチはそれぞれのベース色に合わせて変えられている。
 さらに言うならシートとしての設計力も高い。座り心地というか、据わり心地というか。国産コンパクト車で感じがちな「ペラっと感」がないのだ。

MAZDA DEMIO
 運転席に座って気付くのは、エアコンなどの操作系の美しさだ。シンプルで分かりやすい操作感にイマドキっぽいフォント。それに、エアコンの送風口のリングも凝った色使いが珍しい。この辺見ると、どうもアウディあたりをベンチマークしてそうな感じ。お洒落なのだ。


 メータークラスター内部のメーターリングもシンプルになって、これもデザインのみならず、運転中の視認性の向上にも役立つ。


 ステアリングもエアバッグの小型化によって、形状の変更が叶ったという。握り心地はもとより、自然と3時−9時の位置で握れるように設計されている。


 さらに、今回は展示を拝見させていただくに留まったが、特別仕様車「テイラード・ブラウン」もお披露目された。


 このスエード調内装がもう!もう!めっちゃいい!ちょっと変わったキルティングのステッチは、リズミカルで印象的なのに飽きがこないし、全体的にシックでユニセックスなのにエレガント。これこれ、こういうの欲しかったのよね!という女性は多いのではないかな。


 美しきインテリアデザイナーの木村幸奈氏自身が、そうだったんだという。自分が欲しいもの、自分の本当に持ちたいものを考えた結果だというのだ。

MAZDA DEMIO
 「さらに言うなら、私は"ファブリック"という素材に無限の可能性を感じていて。クルマはどうして廉価グレードがファブリック、高級グレードが革、と決まっているんだろうと不思議に思っていたんです」との言葉通り、通常ラインナップされるモデルにおいても、ファブリックがかなり凝った仕上がりなのでそちらも是非注目してほしい。

MAZDA DEMIO
 さて、このように随所に欧州っぽさが光る仕上がりだが、走りの方も期待して正解だ。特にクルマ好き!走り好き!という人にはキュンと来る出来になっている。

 試乗はまず1.5Lのディーゼルエンジンからだったのだが、そもそもこのセグメントでディーゼルエンジンの選択肢があるということだけでも嬉しいじゃないの、と改めて感じる。
 アクセルペダルとブレーキペダルはカッチリ踏み応えある重厚さで、踏み込みに対してのレスポンスはかなり正確だ。
 低いところからしっかりとトルクが生まれ、低速から滑り出すような加速を感じることが出来るあたりはさすがの成熟。遮音、制振ともに良好で、高回転域に入ってもやかましさを感じることはない。


 1.3Lのガソリンエンジンも成熟が進み、コチラもものすごく好印象。人によっては軽量からもたらされるこの軽快なフィールを好む人も多いだろう。ガソリンエンジンならではの高回転域の伸びが爽快だった。


 どちらにせよ、なによりも感じが良かったのはブレーキのタッチで、カクっとしすぎることも効かない感じもなく、ちょうどいい塩梅なのが嬉しい。
 贅沢をいえばこのペダル類のカッチリした感じに合わせて、ステアフィールももうちょっと固めてもいいんじゃないかなと感じた。切りはじめだけややルーズな印象を受けた。


 サスペンションのほうもコンパクトカーにありがちなジタバタ感がなく、しっとりとロールを生かすようなストロークを見せる。特にリアの収まりがとってもシックで、路面の継ぎ目なんかを越えたときに後ろがキュっと収まる感じ、共振ナシにバタつきをいなす作り込みは好感触だ。


 とはいえ、全体的なアシ回りの印象はかなり硬め。かっちりしてる、というほどではないんだけど、やっぱり硬い。トラックの作った轍なんかが目立つ荒れた一般道では振動が気になる。でも、それがクルマ好きをキュンとさせるんじゃないかな、とも感じた。乗り出しはその硬さに少し不安を感じたのだが、距離を乗るほどにじんわりといい感じに思えてきたからだ。
 そう言う意味ではちっとも優しい味付けではないんだけれど、だからこそ、走りを求める人にも響くクルマだと思う。


 どちらのエンジンを選んでも、小型車ならではの軽量ボディに元気のいいエンジンを組み合わせて、操縦を存分に楽しめる仕上がりになっている。
 個人的にはやっぱりアクセルレスポンスに独特の楽しさのあるディーゼルエンジンがオススメだけど、ガソリンもパッケージとしてかなりの完成度を誇るので、価格でやや悩んでいる人は販売価格の安いガソリンモデルを選んだって全然悪くない。安心して欲しい。

MAZDA DEMIO
 今回、安全モノにもかなりのアップグレードがなされている。

 「アクティブ・ドライビング・ディスプレイ」と名付けられたヘッドアップディスプレイだが、フルカラーで視認性が高いのに加え、ディスプレイ角度や彩度などの調整幅が広がった。家族や恋人と共有しても、しっかりそれぞれにアジャストさせることが出来る。


 また、中高速走行時の衝突被害を軽減するスマート・ブレーキ・サポートや、30km/h〜100km/hのあいだで自動追従するレーダークルーズコントロール、後後退時に衝突被害を軽減する機能なども搭載し、オプションに設定している。

 さらに、これは全マツダ車のいいね!ポイントなのだが、ETC車載機がサンバイザーの中にスマートに隠されているのだ。
 グローブボックスの中に装備されることが多いけど、そうしたらグローブボックス自体の収納量が狭まって、車検証が入らない!なんてことありません?これって心遣いだと思う。

MAZDA DEMIO
 マツダの国内販売の約4割を占めるというこのデミオ、このマイチェンでさらに新たなファンを獲得しそうだ。国産コンパクトはちょっと、なんて敬遠してた丸の内あたりのキャリア女性にも、ほんと似合うと思う。

■マツダ 公式サイト
http://www.mazda.co.jp/


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