Honda NSX
 今年一番の、過激マシンの誕生である。
 ホンダのフラックジップスポーツ、いや、日本に現存する超本格的ミッドシップスーパーマシンがついに誕生したのだ。
 外観を眺めるだけで、ただならぬオーラに身構えることだろう。低くワイドなボディシルエットてからして、こいつが超絶の高性能を得ていることは誰もが想像するに違いない。このマシンを見て鈍感でいられるわけはない。

Honda NSX
 搭載するエンジンはV型6気筒3.5リッターDOHCツインターボ。Vバンクは75°だ。潤滑形式はドライサンプ。なかなか華やかな文言がならぶ。それだけで最大出力507ps/6500rpm〜7500rpm、最大トルク550Nm/2000rpm〜6000rpmを絞り出す。

 それでいて、さらには3つの電気モーターを搭載する。48psモーターはエンジンに直結され、そのままミッションを経由して後輪に伝達される。もう二基はフロント左右に組み合わせられる。プラス37ps。新型NSXは、ホンダの伝家の宝刀「SH-AWD」とハイブリッドを合体させたミッドシップスポーツなのである。ミッションはデュアルクラッチの9速MTである。

Honda NSX
 このマシンの華やかな機構を紹介していたら、いくらページがあってもたりないだろう。足回りは電子制御磁性流液式のダンパーを採用し、減衰力はモードによって切り替えられるように設定されているし、オプションながらカーボンブレーキも選択可能だ。

 ボディはアルミ材を主体にした軽量素材で固められ、サウンドチューニングも行き届いている。これでもほんのわずかなのだ。つまり、2016年の今、考えられるすべての機能を押し込んだと言っていい。したがって広報資料は、数十ベージもの分厚さになっていた。
 『さて、走ろう。』

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 エンジン始動からして勇ましい。EVモードではもちろん無音だが、エンジンに火が入れば背後から勇ましい低音が響く。エンジンから足回りから、アルミはミッションやアクセルワークや、そんなすべての統合アジャストが可能な「スポーツ+」モード以上に設定すれば、さらに音量が高まってドライバーをその気にさせるのだ。

Honda NSX
 走行中も、ゴロゴロと勇ましく吠える。だが、遠くの山々に響くような抜けるソプラノではなく、猛犬が喉を鳴らすような低回転サウンドに終始する。アクセルのオンオフでは吸気音がするし、ターボ過給を逃すようなブローオフ音も響く。

Honda NSX
 ちなみに、設定は通常走行の「スポーツ」を基本に、攻撃的な「スポーツ+」とサーキット専用の「トラック」が加わり、一方で住宅街や深夜の帰宅などを想定した「クワイエット」が選べる。すべての機能がダイヤル操作ひとつで設定できるのだ。


 エンジンはもちろん強烈だ。圧倒的な加速力に右足が緩みかける。ただし、手を焼くような獰猛な感覚ではない。レスポンスに優れたツインターボとはいえ、機構的な反応の遅れがないわけではない。それを瞬時に最大トルクに到達するモーターアシストが加わり、ターホラグとの隙間を埋めてくれている。だから、アクセルペダルに乗せた足に力を込めた瞬間に、背中が押されるのだ。


 ただし、モーターの存在を意識するのはその瞬間だけで、加速中のほとんどはエンジンに依存しているように感じる。ハイブリットとはいうものの、主体はエンジンなのだ。

Honda NSX
 先代のNSXのように、8500romまでバチンと弾けるわけではない。低回転域のトルクも充実しているから、強烈な谷や山があるわけでもない。エンジンの魅力という点では先代が勝るが、一方で現代的に、扱いやすい出力特性だと言える。それでいてハイブリッド感が薄いのは嬉しかった。


 ミッションも電光石火である。デュアルクラッチ式だからレスポンスも遅れなどあるわけはないのだが、それでも吹け上がりやクラッチミードに曖昧なラバー感があった。あえて現代風にトゲやアクを取り除いたのかもしれない。この辺りは寂しい。


 操縦性も刺激的である。AWDだと言っても、それが生かされているのは直進の安定性のみ。後輪が駆動の主体だから、自然なスポーツドライビングが堪能できた。横置きミッドシッフの先代のような、リアがめくれるような不安感はない。安心して攻められる。


 フロントに仕込んだモーターはトルクベクタリンク的な機能をもつ。コーナーに差し掛かると、外輪に強い駆動力を配分して旋回性を高める。同時に、内輪にマイナスの駆動力を与えてノーズを引き込むなどの制御をするのだ。ミッドシップにありがちなフロントの荷重不足からくるアンダーステアもない。むしろグイグイとノーズが引き込まれる感覚は新鮮だ。


 新型NSXは、先代のような、カミソリの刃を伝っているような緊張感はないし、それだけに穏やかな気持ちで走ることができる。ただし、試乗日はあいにくのウエット。タイヤがスキッドするような攻め方をすると、低温ウエットグリップの低いタイヤは簡単に空転をする。コーナリングでそれが発生すると、フロントのトルクベクタリングとのバランスが悪く、コントロールに手こずるのだ。穏やかなドライブができるのが新型NSXの魅力だが、時には牙を向くことを覚悟しておいたほうが良さそうだ。


 生みの親は日本のホンダだが、育ての親は開発責任者はアメリカ人であり、開発の主体も生産もアメリカである。それゆえ、フェラーリやランボルギーニをライバルにするというよりも、コルベットやバイパーと対峙するのが似合うような、大陸的な裏の性格もうっすらと見えたような気がした。


 価格は2370万円。魅力的な数字である。

■ホンダ 公式サイト
http://www.honda.co.jp