SUZUKI SOLIO SOLIO BANDIT
 軽トールワゴンの高効率なパッケージングを継承しながら、5名乗車を可能とし、あと少しの力の余裕をプラスしたコンパクトミニバンの市場は、まさにスズキ ソリオ/ソリオ バンディット(以下ソリオ)によって切り拓かれてきた。そうは言っても、ワゴンRワイドが出た頃からすぐヒットに結びついていたわけではない。ニーズが徐々に拡大してきたのに加えて、意匠を含むクルマ自身の魅力が高まったことが相まって、ようやく先代でブレイクに至ったわけである。


 2015年8月に登場した現行モデルも販売は好調で、ペースは先代を上回っているという。個人的には、意匠のために全幅を5mm増やしたところが、コンセプトとマッチしていないと感じて気に入らないのだが、それもあって売れたならばご同慶の至りだ。

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 このソリオに新たに追加されたのがハイブリッド仕様である。従来からソリオは、減速エネルギー回生を行ない、ISGと呼ばれるスターター兼用のモーターを使って駆動アシストを行なうマイルドハイブリッドとされていたが、それとの明確な違いは電気モーターだけでの走行が可能なこと。結果、燃費はJC08モードで32.0km/Lを実現している。マイルドハイブリッド版は27.8km/Lだから、約15%の向上である。


 面白いのが、このハイブリッドシステムだ。エンジンは直列3気筒1.2L自然吸気で変更は無いのだが、トランスミッションはなんとアルトなどにも使われているシングルクラッチAMTのAGS(オート・ギア・シフト)を使う。そしてMGUと呼ばれる電気モーターは、よくあるエンジンとギアボックスの間ではなく、それらとは独立して駆動輪と連結されている。


 その効能、説明するよりも走りの印象とともに語っていった方が解りやすそう。なので、早速走り出すことにしたい。

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 スタートボタンを押すと、エンジンが必ず始動する。但し、充電量など一定条件を満たしていれば、エンジンはすぐに停止する。アクセルを踏み込むとISGによってエンジンが滑らかにかかり、MGUがアシスト。オッ! と思わず声が出るくらい、力強い上乗せ感を意識させながら加速していく。マニュアルギアボックスがベースのAGSの美点である右足とタイヤがダイレクトに繋がったような感覚に、電気モーターのブーストが加わって、結構気持ちがいい。


 続いてはシフトアップ。AGSを知る方なら変速のたびに一瞬のタイムラグが生じて首が前後に揺さぶられるのを覚悟するところだが、このハイブリッドにはそれが無い。クラッチが切れている間もMGUは繋がったまま、駆動力を供給し続けるから、変速中もほとんど失速感が無いのだ。AGSが一番苦手な、上り坂での全開加速のようなシチュエーションでも、レスポンスが緩慢になることはあるが、ギクシャクするようなことはほとんど無いなど、調律ぶりは見事。開発陣に、AGS開発の際すでに、こうしたハイブリッドが念頭にあったのかと聞いたらニヤリとしていた。まさに技アリのコンビネーションである。

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 ある程度の速度に達したところでアクセルを緩めて一定速で走らせると、エンジンが停止してMGUだけでの走行となる。但し、駆動用のリチウムイオンバッテリーは容量440Whと小さいので、40km/h一定での走行で最大3分、2km前後が電気モーターだけでの走行の限度となる。一方、エンジンで走行している時には、バックグラウンドで余力でMGUを回して発電を行なう。充電は、これと減速エネルギー回生によって行われるかたちだ。


 そして減速の際には、比較的早めにエンジンが止まる。回生ブレーキのおかげで適度な減速感が得られるのが心地よい。


 ここまでは、標準モードの走り。ステアリングコラムの右脇辺りにあるボタンを押すとエコモードに入る。エコモードでは発進がMGUのみで行われ、加速も緩やかになる。AGSのダイレクト感のおかげもあり、慣れてしまえば、普段はこれで十分だ。


 尚、今回の試乗は富士の裾野のアップダウンは多いが流れ自体は悪くない一般道で行なった。そこでの燃費は17km/L前後。平坦ならもう少し伸びるだろうと考えると、スペックの通りマイルドハイブリッド版より2割前後は良さそうという感触だった。あくまで参考ではあるが。しかし何より、燃費が良いだけではなく、新しい走りの歓びがあるのが、このハイブリッドの美点である。

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 改めて、他の部分もチェックしてみる。ボディは骨格はそれほど硬い印象ではなく路面が荒れているとバタバタと煽られる感じもあるが、全体のバランスは取れていてペースを上げても意外と悪くない。操って楽しいというものではないが、唐突な動きなどはなく、倒れそうになることもない。全体に見て、それなりによくまとまっている。


 前席は視界が良く、左右席間にも十分な距離があり、狭苦しさはない。また床がフラットなので、後席へのウォークスルーもやりやすい。後席は一番前に出した状態でも膝まわりに余裕があり、また着座位置が高いので開放感もある。リクライニングとスライドは、いずれもショルダー部分のレバーで操作可能。つまり荷室を広げたい時にも操作は簡単だ。


 不満は中央席用のヘッドレストが備わらないこと。センターアームレストが備わるように、4名乗車が基本という考えなのかもしれないが、軽自動車では5人乗れないから敢えてソリオを選ぶという人は、きっと少なくないはず。ここは要改善と言っておきたい。

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 クルマとして全体に高次元でまとまっていて、これは当然、売れるよなと改めて思う。しかも、そこにハイブリッドである。これはキラーコンテンツとなりそうな、強力な個性だ。


 トヨタ・ダイハツ・スバルから、まさにこのソリオの市場を狙ったライバルが登場したが、パッケージングには一長一短あるにしても、意外や燃費はまったくこの領域には及んでいない。軽自動車で培ったノウハウをうまく活かしているのはどちらかと言ったら、もはや説明の必要はないだろう。改めてソリオの人気、加速するのではないかと想像しているところである。

■スズキ 公式サイト
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