アバンギャルドぶりで名を馳せた往年の名車のネーミングを引用して、当初はシトロエンの上級モデルラインとしてスタートしたDSは、今やPSAグループ内に於ける独立したプレミアムブランドとして存在感を着々と積み増しているところだ。キーワードはパリ。DSはフランスのブランドではなく、パリのブランドだと標榜しているところが興味を惹く。単なるラグジュアリーではなく、洒落ていて、情熱を掻き立て、ロマンチックで......。指向しているのは、そんなプレミアムなのだ。
そんなDSのラインナップ3モデルの最新型に、一気に試乗する機会があった。さて、ブランドのコンセプトはそのクルマに、どんな風に表現されているだろうか。

DS DS3 DS4 DS5 DS DS3 DS4 DS5
プレミアムコンパクトカー、DS3の最新アップデートではフロントフェイスが新しくなっている。大型のフロントグリルの周囲をぐるりと囲み、そこからヘッドライト下まで翼を伸ばした"DSウイング"と呼ばれるクロームの装飾、LEDとキセノンランプで構成されたDS LEDビジョンから成る新しい顔は、従来からの飛び切りお洒落なイメージを崩さず、見事に一段上のラグジュアリー感を醸し出しているように映る。

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ブラックアウトされたピラーにより浮き上がったように見えるルーフ、シャークフィンのような形状に見えるBピラー、そして3D効果が与えられた見るほどに引き込まれるLEDテールランプといったデザイン要素は踏襲。キャラクターは、更に引き立てられている。


試乗したのはDS3カブリオ。MINIコンバーチブルなどのライバルに乗車定員4名が多い中、貴重な5人乗りのコンパクト・オープンは、更にリアウインドウの周囲がキャンバスのルーフと同じ柄で彩られるようになったのも変更のポイントだ。


ルーフフレームが残るタイプのオープンは、十分な開放感を味わえる一方で、適度な囲まれ感のおかげで周囲の目線があまり気にならない。つまり街中だろうとオープンエアでのドライブを思い切り満喫できるのが嬉しい。


ボディは物凄く剛性感があるというわけではないが、やはりしなやかな味付けのサスペンションとのバランスはよく取れている。コシのあるストロークのおかげで姿勢のコントロールが容易で、ハンドリングも思いのまま。飛ばさなくても充実感はたっぷりだ。


6速ATと組み合わされた直列3気筒1.2ℓターボ エンジンは、全域でしっかりと力が漲り、小気味良い走りが可能だ。今やMINIも3気筒ターボエンジンを積んでいるが、それらしい音や振動は、こちらの方が小さく感じられる。

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見るからにお洒落で、走りがとにかく気持ち良く、充実した時間を過ごすことができる。しかも、あらゆる要素がフツウではなく、このクルマ独自の味わいを持っているのが、DS3カブリオである。全部で55パターンにも達するボディ色とルーフの組み合わせ、豊富なオプションで自分だけの1台を仕上げるのも楽しそうだ。

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市場規模の大きな、いわゆる欧州Cセグメントに属しながらも、DSが手がけるとクルマはやはり、非常に個性的になる。DS4は5ドアハッチバックでありながらルーフ後端をかなり寝かせ、リアのドアノブはピラーに隠してクーペライクに演出。それでいてサイズの大きなタイヤ、高い車高などによってクロスオーバー的な雰囲気も醸し出した、独創的な存在に仕上げられている。


こちらもフロントフェイスを刷新したDS4の仲間として新たに設定されたDS4クロスバックは、そんなDS4に更に余裕ある地上高、樹脂製のフェンダーアーチ、ルーフレールなどを追加して、SUV風味強めに仕立てたモデル。元々のフォルムの独特さを一層強調する個性際立つ1台だ。


強い印象をもたらすのは外観だけじゃない。ドアを開けると、時計のストラップをモチーフにしたデザインのクラブレザーシートが出迎えてくれる。揃えられた色味が、ハバナと呼ばれるブラウン、クリオロと呼ばれるより濃い目のブラウンの2色というのもさすが。この上質感、堪らない。


室内の素晴らしい開放感も美点だ。着座位置が高く、見晴らしがいいのに加えて、通常よりもはるかに上方までガラスにしたパノラミックフロントウインドウが、陽光を余さず室内に取り入れてくれる。但し、後席は形状から見ても解るようにサイドウインドウがハメ殺しになっているから、逆に閉塞感を覚える人も居るかもしれないけれど...。


背が高い分、ロールを抑えるべくサスペンションは適度に引き締められているが、おかげで走りには良い意味でのしっかり感があり、速度の高い領域まで気持ち良くクルージングを楽しめる。一方、うねりなどを通過する時には、入力をしなやかに受け止める懐深さもあり、やはり質の高さを実感する。


パワートレインは1.6ℓターボエンジンと6速ATの組み合わせ。実用域の力感は十分で、しかも回せば結構スポーティな秀作だ。ちなみにラインナップには現在、BlueHDiと呼ばれるクリーンディーゼルも追加されている。クルマとのマッチングは更に良さそうだ。


単に上質なだけではなく、他では味わえない圧倒的な個性を備える。DS4クロスバック、そしてDS4は、このサイズにしてDSブランドの目指すプレミアム観を存分に味わわせてくれるクルマと言える。自分を強く主張できる1台。すっかり気に入ってしまった。

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最後に対面したのは、DSブランドのフラッグシップであるDS5だ。実はこのクルマ、登場したのは4年前になるのだが、どうだろうこのアバンギャルドさは。クーペか、シューティングブレークか。何とも形容し難い、この存在感はまるで色褪せることを知らない。あるいは、すでに時間など超越してしまっているとも言えるかもしれない、まさに1955年に登場したシトロエンDSのように。


DS5も他のモデルと同じように、お色直しとしてDS LEDビジョン、DSウイングを新たに採用した。元々備わるボンネットフード左右のサーベル状の装飾と、これがよくマッチしている。


こちらも大胆なインテリアの意匠は、デビュー時とほとんど変わっていない。しかしながらクラブレザーシートの座り心地は、かつての記憶よりも柔らかくなっていて落ち着く。


乗り心地についても同様で、当初の大いに期待はずれだったゴツゴツ感じはきれいさっぱり無くなり、しっとりと心地よいタッチに仕上がっている。この快適性こそ、DSに期待されるものだろう。実際のところ、高速域ではコンプライアンスが大き過ぎて挙動の繊細さを欠く感があったりはするが、ゆったり流している時の癒やし感は、そんな不満も吹き飛ばす。


パワーが向上する一方、低回転域からの充実したトルクを誇る1.6ℓターボエンジンも、そんな走りの大きな味方と言える。また、レーン・ディパーチャー・ウォーニングの警告が、ブザーによるものではなく、シートの座面の振動で行なわれるのも気が効いている。ゆったりとした時間が流れる車内に無粋な警告音を響かせることなく、ドライバーだけは速やかに反応できるのである。


存在感はまさにアバンギャルドだが、快適性や走りの部分を見ると、ちゃんと人間の存在を大事にしているのが解るDS5。これまた往年のシトロエンDSを彷彿とさせるところで、表現方法はまったく異なるが、その哲学はしかと継承されているのだ。


改めて乗ったDSブランドの3モデルは、従来よりも走りの味の統一感が出てきて、ブランドの目指すところが明確になってきたのが、まず印象的だった。一方で、エンジンを始動するのにDS3はキーをひねり、DS4はセンターコンソールのスイッチを押す、そしてDS5はダッシュボードのボタンで......とバラバラなのは、まだ煮詰めきれていない部分として指摘しておく。改めて記しておきたいのは、それぐらいである。
今後のDSの課題は、やはり販売網だろう。プジョー・シトロエン・ジャポンによれば、当面は、専売となるDSストアを何店舗か展開し、店舗内店舗となるDSサロンを充実させていく方針だという。ブランドの世界をクリアに提示するには、店舗は重要。クルマは確実に魅力を増してきているだけに、ここにも大いに期待したい。

■DS 公式サイト
http://www.dsautomobiles.jp

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■島下泰久著
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 私ひとりで書いたものとしては2冊めの間違いだらけのクルマ選びが、いよいよ発売になります。

 今や、新車の評価だけならAutoblogなどのwebでも読めますが、それらに横串を通して見たり俯瞰で眺めたり別の角度から検証したり......という場面では、書籍にはまだまだ力がある。書いていて、改めてそう実感した今回でした。

 そのクルマの良し悪しに留まらず、世の中での存在意義や、誰にとってベストチョイスとなり得るのかという話。あるいは明日のあのクルマはどうなるのか、未来のクルマ社会はどうなるのか、といったことまで含めて「クルマを語る」ことにも、これまで以上に力を入れています。

 良いクルマを買いたい人、これからのクルマがどうなるかを知りたい人、冬休みが暇な人......皆さんに、手にとっていただければ嬉しいです。よろしくお願いします。

モータージャーナリスト 島下泰久