GOODYEAR Vector 4Seasons Hybrid
オールシーズンタイヤってご存じだろうか? その名の通り、「全ての季節で履ける全天候型タイヤ」のことである。日本でこれのなじみが薄いのは、北米のように寒暖差の激しい区間を同じ季節に行き来する必要がなく、冬期は曇り空から突然雪が降り出すようなヨーロッパほど気候の変化が激しくないから。つまり冬場だけスタッドレスタイヤを使えば、あとはよりグリップの高い夏タイヤを履いていればよいのである。


しかしグッドイヤーは日本で、今後このシェアが拡大すると考え、自社のオールシーズンタイヤである「Vector 4Seasons Hybrid」(以下ベクター)を積極展開する。具体的にはそのサイズを従来の23サイズから、倍近い44サイズまで拡大することを今年の夏に発表した。
それはなぜかといえば、ここ数年で大幅に性能が向上したオールシーズンタイヤの特性が、降雪量の少ない地域の生活にフィットすると考えたからである。

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積雪量の少ない地域に住む人ならば、誰でも一度は思ったことがあるだろう。「年にたった1回か2回の雪しか降らないのに、スタッドレスタイヤに履き替えるのは面倒くさい」と。また経済状況が厳しい昨今では、活躍回数の少ないスタッドレスタイヤを買うことすら、大きな出費だと。
だけれどもしこれがタイヤ1setで乗り切れたら、遙かに楽ちんで経済的ですよ、というわけだ。

果たしてそんな、うまい話ってあるのだろうか?

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だからこそベクターの性能を知ってもらおうと、日本グッドイヤーは富士スピードウェイのショートコースで試乗会を開催した。その"夏性能"をメインにウェット旋回特性、コースの一部に人工雪を敷き詰めて雪上性能をも確認できる機会を作ったのである。

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結論から言うと、その試乗時間はかなり短く、内容もより一般ユーザーレベルの先導車付き走行だったため、きちんとした性能を把握するには少々企画倒れだった。
しかしボクは今年初旬に行われたグッドイヤーの雪上試乗会、その他にもドライ路面での試乗、なおかつオフロード走行と、ベクターをかなりのシチュエーションで試すことができているから、それをも加味して、その印象と特性をお伝えしようと思う。

GOODYEAR Vector 4Seasons Hybrid
まずベクターで特徴的なのは、そのトレッドパターンだ。中央部分には雪上/氷上用の細かなサイプが刻まれ、その外側にはやや細目の排水溝。トレッド全体は、V字の太い排水溝がガッツリと刻まれている。そして両サイドには大きめのブロックが仕込まれ、ドライ路面で高いグリップを発揮するようにデザインされている。
使われているのは「全天候型コンパウンド」。夏から冬まで全ての温度に適応できる幅広いレンジを狙っており、夏タイヤよりは若干柔らかく、スタッドレスタイヤよりは硬めのゴム質だという。


こうした構造を持つことから、ベクターはフツーに走ると、フツーにいい。
ゴムの適度な剛性に対してケースも最適化されているのだろう、ドライ路面ではかなり乗り心地がよいのである。重量級サルーンなどに履かせた場合は、直進時にステアリングが若干ふらふらと定まらない場合もあるが(まさにスタッドレスパターンの部分がムービングしているのだろう)、これがプジョー208やトヨタ・プリウスといった中軽量級車両になると、ほとんど違和感がない。
またステアリングを切り込んだときの手応えはほどよくしっかりしており、スポーツタイヤのようなアジリティこそ求められないものの、その素直な旋回性能には十分合格点をあげられる。スポーツモデルより少し下のサスペンション剛性を持つクルマには、その周波数が合うのだと思う。

GOODYEAR Vector 4Seasons Hybrid
雪上性能はというと、これもなかなかの食い具合だった。スタッドレスに比べ硬めのコンパウンドが雪を堀り、掻き出してくれるのだろう。アクセルを踏み込めばきっちりトラクションをかけてくれるし、滑ってからのコントロール性も高かった。


あまり雪が深いとスタックしてしまうし、氷上に水が浮いたような路面では、サイプの少なさから吸水性が追いつかない。だが、そうした場面はスタッドレスですら気を抜けないのだから、路面を気にして慎重に走れば、都市部近郊や積雪量の少ない地域でベクターはかなり活躍できるのではないか? と感じた。まだまだフールプルーフとは言いがたく、状況を見極める最後の注意を怠ってはいけないが、かなりのお役立ちアイテムにはなってくれそうだ。
またスタッドレスは吸水性に重きを置くため、排水性やウェットブレーキングが夏タイヤに比べ弱い場合が多いけれど、その太い溝を見てもわかるとおり、ベクターはウェット性能が夏タイヤレベルだった。


オフロードでは、ぬかるんだ坂道やモーグル、バンクをしっかりと駆け抜けた。Vシェイプの太い排水溝が土に食い込み、トレッド中央のソフトパターンが、岩場や砂利を包むようにグリップするのだろう。
条件が厳しくなるとさすがにオフロードタイヤには適わないが、FWDの2008で、しかもビギナーであるボクが安心して走ることができたのだから、その能力はそつなく高いと言えるはずだ。


以上のような特性をまとめると、「Vector 4Seasons Hybrid」は全ての領域で70~80点くらいを取るタイヤだ。だからドライ路面でのハンドリング性能やレスポンスに重きを置く、スポーツカーユーザーには積極的にはお勧めしない。また積雪にしても泥道にしても、前述した通り"厳しい条件下"では、専用タイヤのようにはグリップしない。


これをして「中途半端なタイヤ」ということも可能だ。しかし「ハイアベレージなタイヤ」と採ることもできる。あとはアナタにフィーリングが合うかと、その使い方次第である。
ボクのお勧めは、普段の生活アシにしているコンパクトカーや商用車。経済性や利便性を最優先するクルマたちには、相性がよいタイヤだと思えた。

■日本グッドイヤー 公式サイト
http://www.goodyear.co.jp/index.php