MAZDA CX-5 LA2016
 マツダCX-5が5年ぶりにフルモデルチェンジを果たした。2012年にデビューした初代モデルは、SKYACTIV技術と魂動デザインを採用した、マツダの新世代商品群第1弾として登場し、これまでに世界約120カ国で140万台以上を販売するヒット作となった。

LOS ANGELES, CA - NOVEMBER 15:  The new Mazda CX-5 is seen at the Mazda design event on November 15, 2016 in Los Angeles, California.  (Photo by Victor Decolongon/Getty Images for Mazda Motor Co.) LOS ANGELES, CA - NOVEMBER 15:  The new Mazda CX-5 is seen at the Mazda design event on November 15, 2016 in Los Angeles, California.  (Photo by Victor Decolongon/Getty Images for Mazda Motor Co.)
 今回ロサンゼルス・オートショーでワールドプレミアとなったニューCX-5は、成功作の2代目として、再びユーザーに選ばれるモデルとなるため、マツダの技術とデザインの全てが投入され、磨き上げられたという。果たして開発陣はどんな思いを持ってこのミッドサイズSUVを開発したのか。主査の児玉眞也氏とチーフデザイナーの諌山慎一氏に、ロサンゼルスでインタビューすることができた。


 主査の児玉眞也氏は、新型CX-5について次のように語ってくれた。

編集部:「新型は大ヒットモデルの2代目ですが、児玉さんは主査としてどんなクルマに仕上げたいと考えていたのでしょうか?」

LOS ANGELES, CA - NOVEMBER 16:  Akira Marumoto, Executive Vice President of Mazda, speaks onstage at the Mazda press conference event at the L.A. Auto Show on November 16, 2016 in Los Angeles, California.  (Photo by Victor Decolongon/Getty Images for Mazda Motor Co.) *** Local Caption *** Akira Marumoto
児玉眞也:「大きく2つあります。ひとつは2012年から買って頂いたお客様の成長に合わせてCX-5も進化したものにするというもの。もうひとつはビジネス的に成功した初代の勢いを継続するというものです。キーワードとしては"走る喜びの深化"を目指しました。ドライバーの走る喜びだけを高めるのではなく、全ての乗員が走る喜びを感じられるクルマにする。そこにチャレンジしました。」

編:「初代モデルから大きく変わった点はどこでしょうか?」

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児玉:「静粛性、特にロードノイズですね。そこはかなりテコ入れしました。新型では大きくジャンプアップしています。基本品質を高めなければ、ずっと選び続けられるプレミアムな存在にはなれません。新型CX-5では、とにかく徹底的に実際の使用状況で良さが感じられることを目指しました。従来モデルと比較すると全てが1クラス、2クラス進化しています。」

編:「ホイールベースが初代と同じですが、プラットフォームはキャリーオーバーと考えて良いのでしょうか?」

null LOS ANGELES, CA - NOVEMBER 16:  The Mazda SKYACTIV Technology display is seen on the Mazda showroom floor at the L.A. Auto Show on November 16, 2016 in Los Angeles, California.  (Photo by Victor Decolongon/Getty Images for Mazda Motor Co.)
児玉:「キャリーオーバーと言えばそうですが、部品レベルでは、ほぼ全て新しくなっています。トレッドも広がっていますし、鋼板の厚さも変わっています。フェイスリフトではできないレベルで進化しています。また、エンジン制御もソフトを徹底的に見直して、より静かに、より低燃費になっています。」

編:「ターゲットカスタマーにはどんな人達を想定していますか?」

LOS ANGELES, CA - NOVEMBER 15:  The new Mazda CX-5 is seen at the Mazda design event on November 15, 2016 in Los Angeles, California.  (Photo by Victor Decolongon/Getty Images for Mazda Motor Co.)
児玉:「40代の子育て世代ですが、チャレンジ精神を持った、精神的にも肉体的にも若い人に向けて、こちらから能動的に表現しました。CX-9からスタートしたのですが、今回CX-5の開発にあたり、基本的な質感に関して10のタスクを設定しました。例えばドアが閉まる音、特にリアドアの音をしっかり作り込んでいます。ドアを開けた時のピラー形状にも気を配りました。このあたりは、長く乗れば乗るほど、手になじむ感覚に繋がると考えています。」

編:「新型の走りはどのように進化したのでしょうか?」

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児玉:「一言で言うと"すっきり"です。軽いだけではなく、手応えとのバランスが取れている感じを目指しました。Gベクタリング・コントロールの効果も大きく、無駄な修正操舵が大幅に減っています。直進安定性が抜群に高いので、長距離移動時の疲労度が格段に違います。ベンチマークはありません。マツダらしい走りを目指しました。マツダが持っている技術を全て盛り込み、いいクルマになっていると自負しています。」

編:「読者へメッセージをお願いします。」

MAZDA CX-5 LA2016
児玉:「先入観なしに乗ってみてください。マツダらしい乗り味、全てが調律された乗り味を感じて頂けると思います。そして開発陣全員が同じ方向を向いて開発した事を理解して頂けると思います。」

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MAZDA CX-5 LA2016
 続いてチーフデザイナーの諌山慎一氏にも話を聞いた。

編:「新型CX-5をデザインするうえで目指したものは何ですか?」

LOS ANGELES, CA - NOVEMBER 16:  The new Mazda CX-5 is seen onstage at the L.A. Auto Show on November 16, 2016 in Los Angeles, California.  (Photo by Victor Decolongon/Getty Images for Mazda Motor Co.)
諌山:「"クルマに命を与える"という魂動デザインの哲学は変わりませんが、表現手法が進化しています。"CAR as ART"、クルマをアートの様に美しいものにしたいという高い目標をセットしました。その第一弾がCX-5です。従来は動きの表現でクルマを格好良く見せようとしていましたが、あくまでもクルマとしてのデザインで、アートと明文化されていませんでした。新世代商品群も一巡し、新しいCX-5を作るにあたり、次のステップを踏み出したというわけです。またCX-5には"REFINED TOUGHNESS"というキーワードがあります。洗練された力強さ、美しい強さ、それを世界的に成功したCX-5でどう表現するかがテーマでした。」

編:「具体的なデザインのポイントを教えてください。」

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諌山:「フロントマスクはより重心を低く、ワイドに見せるようにしました。そしてより彫りが深い、立体感のある造形になっています。また、前後にスピード感のある表現をしたかった。今まではリアが持ち上がった、前のめりで飛びかかるようなフォルムでしたが。今回は逆に後輪に力がかかるような造形としました。」

編:「デザインするうえで苦労したところは?」

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諌山:「このクルマはとても苦労しています。インテリアもエクステリアも、CX-5を深めていこうとしたんです。クルマとしての質感を、全ての領域において確実に一段上げる。単に目先の形を変えるのは簡単です。そうではなく、商品の魅力を確実に一段上げなければならない。だから匠の手仕事のように、造形に妥協ができないんです。シンプルだが磨き込まれた美しさ。装飾的ではないピュアな美しさ、心地よさ。SUVだからこう、ではなく、走る喜びをシンプルに表現しています。」

編:「表現のベースとなったものはありますか?」


諌山:「社内に3〜4人ほどいるトップガンのような"匠モデラー"たちが、諸元を気にせずに自由に生み出したスピードフォルムをボディサイドに盛り込んでいます。彼らはクレイモデラーやハードモデラーで、自主的に作家活動もしていると思います。今回のショーでは、うちの匠モデラーが"時の移ろい"をテーマに自主的に制作したオブジェを展示していますが、こういったものが我々のインスピレーションになります。」

編:「あのオブジェはまさに工芸とアートの境界にあるように感じました。」

LOS ANGELES, CA - NOVEMBER 16:  A general view of atmosphere of the Mazda showroom floor is seen at the L.A. Auto Show on November 16, 2016 in Los Angeles, California.  (Photo by Victor Decolongon/Getty Images for Mazda Motor Co.)
諌山:「我々のデザインは、突き詰めて突き詰めて、掘り下げていくデザインだと考えています。その意味では、工芸の世界は我々のデザインが目指すところに近いのではないかと考えています。私自身も漆をやっているのですが、工芸は研ぎ澄ます造形の考え方なんです。」

編:「インテリアについてはどうですか?」

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諌山:「センターコンソールとドアアームレストの高さを揃えて上質感を与えています。シフトなどの操作系は人間工学に基づいたレイアウトです。シートは生産現場と話し合って、これまでの限界を超えるサイズとすることが可能になりました。リアシートにはワンノッチですがリクライニング機能を持たせて、快適性を改善しています。また、インパネからリアドアまで、デザインテーマに統一感を持たせました。どこを見ても一段上がっています。水平基調のインパネには、そこを突き抜けてくるような形状のエアコンダクトを配置して"美しい強さ"を表現しています。」

編:「今回、新ボディカラーのソウルレッドクリスタルメタリックが用意されましたが、デザインとの関係を教えてください。」

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諌山:「マツダにはFFのファミリアやコスモ、ロードスターなど、レッドのイメージがあるので、コーポレートカラーをレッドにしようとしています。今回の新しいレッドは、新世代商品群から採用されているソウルレッドの深化です。造形と色は表裏一体です。我々の造形をより引き立ててくれるレッドを作りたかった。ボディの抑揚や繊細な造形を逃さず引き出してくれるレッドです。明暗のレンジがとても広く、光に敏感に反応する、明るいレッドと暗いレッド、黒に見えることもあるレッドを実現しました。開発にはかなり苦労しまして、じつは新型CX-5にはギリギリ間に合ったという状況です。今後は他のモデルにも展開します。」

編:「新型CX-5のデザインを見ると、魂動デザインの新たな展開に期待してしまいます。」

MAZDA CX-5 LA2016
諌山:「新型CX-5では、今できることを全てやりました。ですが、我々の挑戦はまだまだ続きます。美しいものを極める道に終わりはありません。」

MAZDA CX-5 LA2016
 新型CX-5の開発を率いた二人の話には、共通する部分がとても多い。それは"とにかく確実に進化させること"や"マツダらしいクルマであること"などだ。児玉氏の言葉にもあるが、新型CX-5は"全員が同じ方向を向いて開発した"クルマなのである。そしてその方向とは、"ユーザーに満足してもらいたい"という思いだ。来年2月に発売される新型CX-5は、間違いなくオーナーを魅了するはずだ。

■マツダ 公式サイト
http://www.mazda.co.jp