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10月のパリ・モーターショーでメルセデス・ベンツの高性能モデル開発部門であるメルセデスAMG「GT ロードスター」を発表した際、Autoblogでは同社のコンバーチブル部門が難問を抱えているとお伝えした。ドロップトップが増え続け、自社ブランドを共食いしかねない事態となっているのだ。ただ、ダイムラーAGのチーフ・デザイン・オフィサーで米国南カリフォルニア在住のゴードン・ワグナー氏は、この件について問題はないと言う。理想的な構造を持つそれぞれのコンバーチブルは本質的にどんな問題でも解決してしまうらしい。「悪は当然、善の敵である」と、ニーチェの格言のような言葉をユーモアたっぷりに同氏は語る。

同社は現在開催中のLAオートショーで、さらなる高級コンバーチブル「メルセデス・マイバッハ S 650 カブリオレ」を発表した。メルセデスにはすでに24万7,900ドル(約2,750万円)という価格で現行ラインアップの頂点に位置する「メルセデスAMG S 65カブリオレ」があるが、マイバッハ S 650はさらにその上を行く。



発表直前にビバリーヒルズにあるワグナー氏の私邸で行われたAutoblogによる単独インタビューにおいて、同氏は次のように語った。「メルセデスAMGは我々のパフォーマンス・ブランドですから、文字通りパフォーマンスが全てです。もちろん、マイバッハもパワフルですが、その特徴は何と言っても豪華の極みということであり、むしろそちらに重点を置いています。個人的にそのインテリアは"自動車のオートクチュール"であると考えていますので、細部にも気を配りました。エクステリアは壮麗さを前面に押し出し、クロームを多く使用することで、よりリッチに仕上げました。そうすることで、ブランド・イメージが揺るぎのないものになるよう努めたのです。Sクラスは世界最高のクルマです。しかし、我々は常にさらに上のクルマを作り上げることができると確信しています。それはSカブリオレについても同じです」。

なぜメルセデス・ベンツは、フラッグシップのフラグシップが必要なのか? おそらくそれは、高級車という山に登り頂上に到達してしまった顧客が、さらに高い山へ登ることを求めるからだろう。メルセデスのようなリッチでゴージャスな伝統を持つ自動車ブランドでも、ラインアップに磨きをかけ、ブランドモットーの対象である顧客が求める「さらに上」を作り出す。最善か無か、それが文字通り同社の座右の銘なのだ。



「カブリオレのルーフ下にあるウッドやレザーなど全てのディテールにおいて、より素晴らしいものを作り出すことが我々の使命です。超高級なディテールこそが、高級車を超高級車たらしめるのです。そこで重要なのは、伝統にとらわれたラグジュアリー・デザインではなく、モダンなラグジュアリー・デザインを生み出すことです。伝統的な高級車の市場は確かに存在しますが、我々は常にモダンな高級車としてメルセデス、とりわけマイバッハを販売したいのです。それが発表の場所に、ここビバリーヒルズを選んだ理由です。このメルセデス・マイバッハ S 650 カブリオレはより上品な美しさを備え、"ホット&クール"という我々の理念と一致する実にホットでクールなクルマです。それこそ、我々が定義する超高級なのです」。



この超高級コンバーチブルは、ふんだんに使われたクロームと、専用のトラベルバッグを備え、そして"天才"を定義する言葉のようだが、9割のパーフォレーテッドレザーと、1割のインスピレーションから成るインテリアが特徴だ。だが、それ以上にセールスポイントとなるのは、"エクスクルーシブ"であることだ。S 650は標準の「Sクラス カブリオレ」と同じプラットフォームをベースにしている。しかし、このコンバーチブルは僅か300台の限定生産(うち75台が米国で販売される)になる予定で、1台ずつその希少性の証となるシリアル・ナンバーが刻まれたブランドCEOの署名入りプレートが装着される。この象徴主義的なインテリアに加え、エクステリアのトランクリッドやフェンダーに装着された威厳あるMを重ねたデザインのエンブレムは、これを所有する人物が富裕で、目利きであり、少なくとも金に糸目を付けない経済力の持ち主であることを、事情通の人々に見せつけることができるはずだ。

こうした特徴の全てが、「自動車の贅沢さというものに限界はあるのだろうか」という問題を我々に提起する。つまり、ある時点で価値が付加されることは止まるのか、それとも、かつてオランダで起きたバブル経済「チューリップ・バブル」や、相手を出し抜くゼロサム・ゲームのように、ただ意味もなくエスカレートしていくのだろうか、という問題だ。おそらくワグナー氏なら「いや、限界はない」と答えるだろう。



By Brett Berk
翻訳:日本映像翻訳アカデミー