ジャガー、60年ぶりに再生産された幻のスポーツカー「XKSS」をLAオートショーで公開
Related Gallery:Jaguar XKSS

今年の春、ジャガーが幻のクラシックカー「XKSS」を再生産すると発表したことを覚えているだろうか? 英国コベントリーの自動車メーカーは冗談を言ったわけではなかった。なぜなら今、米国ロサンゼルスに居る我々の前には、"新車のXKSS"が置かれているからだ。

本来であれば、このクルマは60年ほど前に製造されるはずだった。以前の記事でも触れたとおり、ジャガーは全部で25台のXKSSを生産する予定だったのだが、16台まで完成させたところで作業を行っていたブラウンズ・レーン工場が火災に見舞われ、残る9台が消失してしまったのだ。その幻となった9台を甦らせ、当初の生産計画を完遂しようというのである。



同車についてあまりご存じでないという方のために、XKSSの背景について簡単にご説明しよう。まず、「Dタイプ」として知られるジャガーのファクトリーレーサーがあった。1955年から3年連続でル・マン優勝を飾ったクルマだ。1956年にはいくつかのプライベート・チームがDタイプで参戦し、スコットランドのエキュリー・エコッスが優勝を果たしたが、ジャガーのワークス・チームはアクシデントや不調に見舞われ、1957年以降のレース参戦を取りやめてしまう。そのため、ブラウンズ・レーン工場には使用されなかったDタイプのシャシーが25台分残されていた。これを見た創業者サー・ウィリアム・ライオンズは、これらのシャシーを使って公道仕様のスポーツカーを製作するように命じる。それが、XKSSというわけだ。だが、ル・マンを制覇した車体には、フロントガラスや助手席側のドアなどを加えただけで大きく変更されることはなかった。つまり、控えめに言っても、公道には過ぎたポテンシャルを持つクルマだったのだ。



XKSSは、スタイリッシュかつ大胆でスピードを愛するエンスージアストたちを魅了してきた。スティーブ・マックイーンもそうした人物の1人であり、彼の所有したXKSSはロサンゼルスのピーターソン自動車博物館に展示されている(上の写真)。ジャガーが再生産したKXSSを同地で披露することになったのも偶然ではないはずだ。

2016 World Endurance ChampionshipRound Five, 6 Hours of Mexico5th - 7th April 2016Mexico City, MexicoPhoto: Nick Dungan / Drew Gibson Photography2016 World Endurance ChampionshipRound Five, 6 Hours of Mexico5th - 7th April 2016Mexico City, MexicoPhoto: Nick Dungan / Drew Gibson Photography2016 World Endurance ChampionshipRound Five, 6 Hours of Mexico5th - 7th April 2016Mexico City, MexicoPhoto: Nick Dungan / Drew Gibson Photography2016 World Endurance ChampionshipRound Five, 6 Hours of Mexico5th - 7th April 2016Mexico City, MexicoPhoto: Nick Dungan / Drew Gibson Photography

今回新たに製造されたXKSSは、基本的にはオリジナルのデザインを忠実に再現している。ボディはオリジナルと同じ型を元に手作業で仕立てられ、素材にはマグネシウム合金を使用。マグネシウムは非常に軽量で、燃えやすいと誤解されることが多い金属だ。実際には、削りかすのように細かい破片になった場合は燃えやすいが、自動車のボディに使われる場合は、心配になるほど発火しやすいわけではない。鋼管チューブをブロンズ溶接で結合するシャシーの製作工程もオリジナルと同様だ。

ただし、現代の安全性に見合うよう若干の改良も施されている。燃料タンクは、エタノール混合ガソリンといった現代の燃料を入れることを考慮し、耐久性の強い素材に変えられた。3.4リッターの直列6気筒エンジンはオリジナルと同じものだが、当時の中古を再利用するのではなく、シリンダーブロックとヘッドは新たに鋳造されたという。これにウェーバー製DC03トリプル・キャブレターが装着され、最高出力262hpを発揮する。手を加える必要はまったくないし、速さも申し分ないはずだ。



インテリアも非常に美しい仕上がりだ。高品質な素材を使って、XKSSが生産された唯一の年である1957年のクラシックなデザインが再現されている。スミス製の計器類と真鍮製のノブがダッシュボードを飾り、ステアリングホイールの木材やシートのレザーもオリジナルと同じ種類のものが使われている。



息を呑むほど素晴らしく、その魅力に圧倒される。製造はすべて手作業で行われるため、ジャガーによれば1台あたり1万人時を要するという。価格は約100万ポンド(約1億3,700万円)。それでもジャガーはおそらく儲からないだろう。だが、少なくとも買い手の心配をする必要はない。数か月前に、すでに全車が売約済みだからだ。


By Alex Kierstein
翻訳:日本映像翻訳アカデミー