TESLA Model X
現代に新しく登場する電気自動車には、サプライズとエンターテインメントが必要だ。っとテスラ社を創設したイーロン・マスクが言ったわけではない。すみません、コレはアタシの感想。しかも決してラスベガスみたいなキラキラ&娯楽感覚で「モデルX」を取り上げたいワケでは100%ありません。

TESLA Model X
テスラにとって3台目の電気自動車となる「モデルX」と、それ以前のスポーツモデルのロードスター、セダンの「モデルS」に対面するたびに、少々疑ってかかるワタシがニヤニヤしながら「なるほど」と思わず呟くような魅力を各モデルが持ち合わせているのだ。それは新たなモデルが登場するたびEVとしての動力と走行性能、航続距離、さらにはEVによるEVのためのEVらしいコミュニケーション術(技術)に驚かされ、お仕事ながらメチャメチャ楽しんでいる自分がいたのだ。


「モデルX」はプラットフォームや基本的なパワーソースは「モデルS」と共用。そのドライブフィールを紹介する前にこのクルマの"ドア"を開けておきたいと思う。「モデルX」はボンネット以外の開閉が電動化されている。フロントドアは手動も可能だけど、キーを持って近づけば自動的にドアが開き、運転席に乗り込みブレーキペダルを踏めば、自動的にドアが閉まる。そんな時代がやって来たのか...と思うのはまだ早い。



後席用の左右ドアはテスラが"ファルコンウイング ドア"と呼ぶ上下開閉ドアが採用されているのだ。これ、かなり大きなドアだ。それが電動開閉する姿はかなり新鮮。開閉時間は調節も可能だが、例えばこのときはドアが開くのに約10秒、閉まるのに8秒+αで開閉し、それは決して早くも遅くもない大きなドアが、優雅に開閉するという印象だった。ちなみにこのドア、人間の肩と肘の関節のように2軸のヒンジが動き、左右30cmほどあればいいという、狭いスペースでの開閉を可能にしている。万一に備え、「モデルX」にはこのドアの開閉のために3つのセンサーが追加され、障害物を感知できるようにしているそうだ。

TESLA Model X TESLA Model X
最大7人分、3列のシートを持つリヤ席へのアクセスも、2列目シートのスライド機構を含め、きちんと考えられていた。例えば3列目シートをラゲッジスペースとするため電動格納する場合、スマートにソレが行えるように2列目シートも同時にアジャストしてくれる。またAWD(4WD)モデルはデュアルモーターを採用するため、エンジンを駆動力に使うモデルと違って、トランスファーケースやディファレンシャルを必要としない。そのおかげでフラットなフロアを、嬉しいことに3列+荷物で最大限活用できる。さらに、雨の日の乗降にはこのドアが屋根になり、リヤ席まわりからフロント席へと行き来するのも、横開きドアに比べ、導線がスマートになっている。電動化によりイージーになった開閉と人と荷物のアクセスが、乗車風景すらも変えることになっているのではないかしら。

TESLA Model X
ボディサイズは「モデルS」ベースと言いつつ高さはもちろん全長も全幅も幾分か大きい、全長5037mm×全幅2070mm×全高1680mm。欧米プレミアムブランドの3列シートを持つ大型SUVサイズ級。そんなボディに採用されたデザインもユニーク。

TESLA Model X
LEDライトを左右それぞれに14個採用するヘッドライトは見た目小さく、一般的にはライトと共にブランドの顔を印象づけるグリルがない。エンジンがないから性能上は必要ないのだ。その上、テスラの"T"はボンネット下の薄く口をあけたスペースに控えめに納められ、結果的にボディそのもののボリューム感が強調されている。実はこれが最新のテスラ顔ではあるのだけれど(最近「モデルS」もフェイスリフトして同様の顔に)内燃機関を持つクルマを見慣れているせいか、コレがEVであるテスラらしい新しさなのだと言えそう。


空力も十分にデザインされたボディは、外観を流れる空気を整流する効果を発揮する。例えば、フロントバンパー下に設けられた開口部は、タイヤホイールまわりに発生しがちな乱流を抑え、風をキレイに流してくれる。

TESLA Model X
またハイパフォーマンスグレード(車名の最初に"P"がつく)には、可変式のリヤウイングが、それ以外のモデルにも固定式のウイングが装備される。


インテリアに目を向ければ、「モデルS」でも採用される17インチのタッチスクリーンがダッシュボード中央に大きく構える。ソレが司る様々なシステムをタブレット端末のごとく扱うのがテスラ流。「モデルX」でもいろんな機能のON/OFFや、装備の細かな設定や変更、有料装備の追加、さらに車両情報のやりとりや性能に関するアップデートまでをこのパネル上で通信機能を使って行う。だから走行性能は常に最新の状態を保つことが可能。「モデルX」の登場で、ますます電動化や自動化、ネットワーク化の進む"テスラらしさ"を体験することができるはず。柔軟な発想をカタチにする行動力と実行力、それにスピード感にはちょっと敬服する。

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SUVである「モデルX」は着座位置が高め。加えて、このクルマのフロントシートに座ったときの、頭上にまで延びたブロントウインドウがつくる視界と景色も独特。しかもその風景を、静かに滑らかに流していく動力が、EVである点も内燃機関がつくりだす世界観とはまた違う。


「モデルX」には4種類のバッテリーを搭載可能とする5つのバージョンが選べる。それらのシステム出力は422~539ps、モータートルクは441~967Nm、0-100m加速は6.2~3.1秒であり、航続距離は355~542Km。繰り返しになるが、駆動はAWD(4WD)であり、前後にセットされたデュアルモーターによってモータートルクを4つのタイヤを介して路面に伝える。今回は90KWhのバッテリーを搭載し、モーター出力がフロント263ps/リヤ510ps、トータル出力/トルクが471ps/830Nm、0-100mは3.9秒、一回の充電で走れる航続距離が最大467kmというスペックの「P90D」(1381万1000円)を箱根~東京間で試乗させていただいた。


運転席に座りシートポジションを合わせると、シートスライド量に合わせて(=体格を読み)、万一の衝突に備え、多くの人が忘れがちなヘッドレストの高さ調整まで同時に行ってくれたのが素晴らしい。そのうちシートベルトまでオートで締めてくれるんじゃないだろうか...(笑)。シートベルトと言えば、2列目の3つのシートは各シートにベルトが内臓されているから、アレンジも快適さもしっかりと保てる。
テスラの場合、「モデルX」に限らず動力を始動するためのボタンなどはない。クルマに乗り込みシフトレバーを"D"に入れたらあとはアクセルを踏み込むだけ。


ボディの重量はかなり重いはずだ。が、アクセルペダルを踏み込む量によって、モーター駆動が実にリニアかつスムーズな走行をしてくれるので、強く深く踏み込めば「よくもこの巨体を...!」とある意味期待どおりのダッシュをしてくれるし、低~高速にいたる速度域で、一定走行もしくは微妙な速度コントロールをする場合にも思い通りの加減ができる。


3列シートを持つプレミアムブランド系SUVと並ぶボディサイズは、私の体型、もしくは私が一人で使う用としてはハッキリ言って大きい。狭い路地などでは物理的な大きさを感じることもある。が、それ以外の走行シーンにおいて、大きさがジャマになるような感覚はなかった。それにはやはり、ドライバーのハンドル操作に応じて、ボディやサスペンションが一体感のある動きをしてくれる車体づくりも効いている。もっと言えば、コーナーでよく曲がるのだ! バッテリーを床下に置くことで、全高の高さのわりに低重心を実現していることも、その要因のひとつだ。箱根ではワインディングも走り、そこにはアップ&ダウンを含むところもあったけれど、大きさも重さもジャマにならないガッシリ&ドッシリとした「モデルX」がしっかりと路面を捉え、走る安定感とともに楽しさすらも感じられる。ちなみに乗り心地も極めて申し分なし。


それにはEVならではの動力性能と、回生ブレーキシステムの存在も大きい。センターパネル上ではステアリングを"コンフォート"、"標準"、"スポーツ"から選択でき、回生の強弱が選べる。回生量は走りながらエネルギーマネージメントを行う目的で選ぶこともあるだろうけれど、走行モードの変化はドライブフィールも変えてくれるスイッチとなる。ワインディングでは回生モード"強"を選ぶと、コーナーの手前でアクセルを緩めるだけでエネルギー回生とともに大きな減速が得られる。アクセルの緩め方次第でMT車で例える2速や3速ほどのエンジンブレーキ、いや、ときには1速にも近いそれが得られるため、サーキット走行のようなガンガン攻める走り方ではなく、極めて軽快かつスムーズに走っていると、アクセルを緩めて減速し、再びアクセルを踏み込んで加速を繰り返す"1ペダル"ドライビングが可能になる。これに慣れるとたちまちクセになり、ますます運転が楽しくなる。


高速道路ではオートパイロット(運転支援)機能も試してみた。「モデルX」にはフロントウインドウ上部のカメラとボディ前後に6つの超音波センサー、それにフロントのナンバー裏にレーダーが備わっている。車間や速度をセットすると、前車に対する追従走行やオートクルーズが可能。前車を捉えながらの加減速コントロールの制御はますます洗練度を増した印象がある。また左右の車線を認識し、逸脱しそうになるとステアリング修正も入る。ただし手放しはNG。アラートでダメ出しをされ、それを無視しているとシステムはたちまち解除となる。


さらに最新のテスラにはオートパイロット作動中、方向指示器を出すと、ハンドル操作をせずに車線変更が行える機能も追加されている。その車線変更はときどき自分の感覚と少々タイミングがズレることがある。もちろん過信は禁物だが、渋滞の多い週末や長距離ドライブの際に、これらの機能が疲労軽減に繋がり、ひいては予防安全に繋がるのは間違いなし。

ハードウエアは、全モデルに標準装備され安全機能のほか、有料オプションの便利機能などにも活用されるそうだ。テスラは通信機能によって装備の追加や走行性能を係るシステムのアップデートが可能。電子デバイスは進化が早い。一台のモデルを手に入れたあと、その進化する性能をアップデートすることで常に最新の状態が保てるというのもテスラらしさと言えそう。

TESLA Model X
個人的に気に入った点をあと少し加えると、高いUV機能を持つガラスエリアと病院並のクリーンさを保つ室内のエアコンディショニングが、女性としてはかなり好感度が高い。


それにUSBは5ヵ所(ラゲッジには12Vもあり)。3列それぞれのシートにはドリンクホルダーの用意もある。


というわけで、随所にクオリティの高さと目配り、気配りが感じられる「モデルX」。いまどきの都会派SUVとしてのユーティリティにも隙がなく完成度がかなり高い。単に航続距離やパフォーマンスに優れ、ユニークなデザインを持つだけではない。EVの新しさをアチコチ、ソコここで、サプライズとエンターテインメント的な動作と効果で感じさせるところは見事と言いたい。ファルコンウイングドアの開閉に始まる電動化の進化、機会があればぜひ直に体験してみてほしいと思う「モデルX」なのだった。

価格は、895~1611万2000円(税込)。

■テスラジャパン 公式サイト
https://www.tesla.com/jp/modelx