2016 MV AGUSTA BRUTALE 800
MV AGUSTAといえば、バイク乗りならいちどは乗ってみたいと思うイタリアの名門。バイク界のフェラーリといったイメージで、「さぞかしお高いのでしょうね? 自分には関係ないなぁ......」と思う人もいるかもしれない。しかし、今回試乗した2016年のNEWモデル『BRUTALE 800(ブルターレ800)』は150万円を切る価格で登場。走る宝石と例えられるMV AGUSTAがグッと身近になって、いまMV AGUSTAユーザーを着実に増やしているのだ。

2016 MV AGUSTA BRUTALE 800
2016 MV AGUSTA BRUTALE 800 2016 MV AGUSTA BRUTALE 800
イタリアンの熱き血が通っているかのような赤いトラスフレームに、逆回転クランクシャフトを採用するトリプルエンジンを搭載。五感を刺激するセクシーなボディは獰猛なクラウチングスタイルで、今にも獲物に飛びかかりそうな攻撃的なスタイル。数ヶ月前、バイク専門誌のインプレッション企画にて公道で試乗させていただいたが、今回改めて富士スピードウェイ(FSW)での試乗となった。

2016 MV AGUSTA BRUTALE 800
街なかでは低中回転域をメインにし、キビキビ走った好印象が記憶に新しかったが、ここFSWでは高回転域での気持ちがいい伸びが何よりもたまらない。さすがは国際格式のレーシングコースとあって約1.5kmのメインストレートではトップエンドまで使い切る楽しさがあり、3気筒エンジンならではの軽やかな吹け上がりを存分に味わえた。

エキゾーストノートが6000回転を過ぎた頃から甲高く唸り、それを全身で感じるだけで愉悦に浸る想い。3本のマフラーが奏でる官能的な響きは、なんと美しいことか、まるで管楽器の音色のようでさえある。そう考えると、右手のアクセル操作に鋭く反応するエンジンは音を生み出す音源であり、乗り手はライディングを楽しむと同時に、楽器を演奏するかのような楽しさを満喫できる。そのスロットルレスポンスは打てば響くもので、加速感は痛快でさえあり、とてもエキサイティングだ。

2016 MV AGUSTA BRUTALE 800
しかし、際立つのは扱いやすさ。イタリアンスポーツらしい軽やかな走行フィールがあり、狙ったラインを外さないクセのないハンドリングで、コーナーではグイグイ曲がってくれる。30分の走行を2本おこなったが、あいにくの雨でコースは1本目が完全なウェット、2本目は雨が上がってハーフウェットとなったものの臆することなくサーキット走行が楽しめた。

2016 MV AGUSTA BRUTALE 800 2016 MV AGUSTA BRUTALE 800
得意なのはタイトコーナーで、車体剛性が低中速コーナーに合っている。スーパースポーツのような硬さがなく、トラディショナルなネイキッドモデルのような頼りなさもない。攻め込むとステアリングヘッドまわりに程良いたわみが発生し、これが旋回性と接地感を巧みに生み出している。

ハンドルに手を添えるだけで、ナチュラルに思い通りのフットワークを見せ、アクセルを開けやすいエンジンともよくマッチしている。ストリートやワインディングでストレスなく走りが楽しめ、メインステージが日常のなかにあるのがブルターレ800だ。F4シリーズでは持て余すことが多いし、F3のように目を三角にして乗る必要もない。兄貴分たちにはない、気軽に乗れる楽しさがあり、それが大きな魅力となっている。

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マルゾッキ製の43mm径倒立式フロントフォークやザックス製リアショックはいずれもフルアジャスタブル式で、ブレンボのラジアルマウントキャリパーや320mmフローティングディスクなど足まわりも充実。路面追従性の良い前後サスペンションはライダーへのインフォメーションが多く、操作に対する反応が従順で忠実だから前後タイヤのグリップ状態も把握しやすい。「大丈夫かな?」という不安要素が少なく、濡れた路面でも肩の力を抜いてリラックスしていられる。

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そして公道では、エンジンマネージメントがとてもありがたかったのを走りながら思い出した。「ノーマル」「スポーツ」「レイン」「カスタム」にエンジンマップを切り替えることができ、これに8段階調節のトラクションコントロールシステムが組み合わさる。レーシングトラックではスポーツモードのままでいいが、ノーマルもアクセルが開けやすくて今回のようなウェット路面だと恩恵を感じた。試しにレインも使ってみたが、これはスロットルレスポンスが穏やかになりすぎてしまい、言うまでもなく公道でこそ威力を発揮する。

2016 MV AGUSTA BRUTALE 800 2016 MV AGUSTA BRUTALE 800
ブルターレ800は廉価版として決してチープにつくられたものではなく、名門ブランドらしい高性能と、美意識と機能を巧みに融合した一目でMV AGUSTAと分かるデザインを持ち合わせた贅沢な1台となっていることが乗り込むほどに分かった。

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じつは今回のテストライドはMV AGUSTA JAPANが主催する『MOTO GENERATIONS in FUJISPEEDWAY 2016』(10月9日開催)にておこなうことができた。このイベントは毎年恒例となっていて、今年はあいにくの雨にも関わらず136台ものMV AGUSTAオーナーが参加している。

2016 MV AGUSTA BRUTALE 800 2016 MV AGUSTA BRUTALE 800
ランチ会場やピットではオーナー同士で情報交換できるし、同じブランドを愛するライダーたちがこうした体験を共有するって格別なはず。なるほどMV AGUSTA、ユーザーを増やしている理由はこういったところにもあるように思う。

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話は少し逸れるが、モノをひとりで所有するのではなく、誰かと共有するシェアリングサービスなるものが広がっているという。カーシェアは少し前から話題になっていて「将来、新車が売れなくなってしまうのでは......。」などと不安視する声も聞こえてくるほど定着してきた感もあるが、実際のところはわからない。ただ、駐車場やガソリンスタンドなどで広告を目にすることも増えたし、参入する企業が多いということは利用者も増えているのかもしれない。

2016 MV AGUSTA BRUTALE 800
モノを持たない方がスマートとされる時代に逆行した考えなのかもしれないけれど、子どもの頃からなんでも集めたがる収集癖のある自分は「イイナ」って思ったモノはとにかく欲しくなってしまう。だからボクの部屋には手つかずのガンプラの箱が埃を被ったまま積まれているし、80年代歌謡曲のシングルレコード盤や古い雑誌なんかが狭い部屋を占領し、妻からは断捨離を命じられている。


しかし"持つことの歓び"というものがあるとボクは思う。

特にモーターサイクルというホビーの世界には、強烈なほどにそれがあるはずで、MV AGUSTAはその筆頭ブランドのうちのひとつだろう。もちろんオートバイなんだから、走ってナンボ。ガレージにおいたまま磨いて、飾っておくなんていうのでは絶対に満足できない。その点、ブルターレ800は所有欲を満たし、そして走り込んでこそ真価を発揮する正真正銘のスポーツバイク。新規ユーザー獲得のためにリーズナブルな価格を実現したが、MV AGUSTAならではのアグレシッブさや品質の高さはそのままで、今回の試乗では同ブランドの技術力と勢いを思い知らされた。

■MVアグスタ公式サイト
http://www.mv-agusta.jp/