Nissan GT-R 2016
ゴツくてガッチリ、質実剛健。いかにも男性的なメカメカしい外観。それはチャラい気持ちで「ちょっとカッチョいいから乗ってみようかな、あははん」なんて浮ついた気分を、見た目からしてバッサリと排除しているようだ。乗り手側のほうに武士道がごとき走りへの誠実な向上心がないと、サイドシルさえも跨がせていただけないような。
そう言う意味では私にとって、あらゆるスーパースポーツカーのどれよりも敷居の高いクルマであった、日産の「GT-R」。

Nissan GT-R 2016
もちろん2007年の発売開始当時には、きっちり試乗をさせていただいている。話題のモデルでもあったし、あらゆる意味で鳴り物入りであったことは、読者諸兄の記憶にも鮮烈だったはずだ。果たしてそれは、冒頭で述べたような印象をまったくもって裏切らない、おそろしくスパルタンなシロモノだった。走りへの飽くなき探求、エンジニアの執念すらステアリングの向こうに垣間見えるような。だからこそ、「じゃ、ちょっとコンビニ行くのに使います!」なんていうアシ車とはほど遠い場所に燦然とポジショニングしていたように感じている。

Nissan GT-R 2016 Nissan GT-R 2016
そのGT—Rが10年の時を経て、発売以来最大となる大幅なマイナーチェンジを受けて登場した。
「...って言ってもGT-Rでしょ...」
正直、あんまり食指が動かなかったのは事実だ。個人的に私はクルマに多様性を求めるタイプ。いくらサーキットで最速を記録しようが、街乗りで疲れちゃうのは困るのだ。そりゃ仕事としては乗りますけども、でも、まあ"欲しい"っていう衝動と乖離しすぎているってなると、ねぇ。なんて、まあそんな感じでテンション低く試乗会場に向かったわけだ。

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しかし、しかしである。
この2017年モデルときたらもんのすごく、楽しかった。そして良かった!
先に結論書いちゃってゴメンナサイ、でも本当にこのGT-Rは、歴代で初めて是非女性にも乗って欲しくなるくらい、エレガントな仕上がりに生まれ変わっていたのだもの!

Nissan GT-R 2016 Nissan GT-R 2016
変更箇所はエクステリアデザイン、インテリア、走行性能のブラッシュアップなど多岐にわたるのだが、一見した外観の印象よりもビビっと心に響いたのはインテリアデザインの美しさだ。
今回のモデルチェンジでは、メーカーオプションで「ファッショナブルインテリア」なるレザーバージョン内装が用意された。

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ネーミングのセンスはともかくとして(失礼)、ナカミのゴージャスなことといったら!
インパネには贅沢にナッパレザーの一枚革をあしらい、また、コンソール、ステアリング、ドアパネルに至るまで、ドライバーとパッセンジャーの手に触れるすべての部分を同じくやわらかなレザーで包んだ。私に用意された試乗車は「タン」という、暖かみのある茶カラー。これが抜群にステキだった。

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そう、これこそが高級車の証、ラグジュアリースポーツカーの神髄だとおもう。や、確かにこれまでのモデルもすごかった。まるで宇宙でも目指すのかと疑いたくなるくらいにみっちりと並んだスイッチ類に、走り以外すべての装飾(=ムダ)を削ぎ落としたレーシングカーライクでイカツい内装。スゴかったんだけども、それらはちょっと販売価格を考慮するとあまりに値段とそぐわないんじゃないかと思わせる部分でもあったように感じる。

Nissan GT-R 2016
その男臭さがGT—Rの良さでもあったのかもしれないけど、やっぱり大枚叩いて買う、という表現が大袈裟ではないプライスタグなんだから、内装もそれなりに洗練されていて欲しいと思う女の欲的に、今回のレザー内装の採用を大いに歓迎したい。その証拠に、もう、シートに身を埋めただけで「いやん♡」と身をよじってしまったのだもの。

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これなら、ちょっとキメたエレガントなスーツでだって脚を揃えて乗り込みたくなっちゃうじゃないの。むしろ外観が(変更を受けたとはいえ)スパルタンなままだから、余計にこのクルマに乗るときに鼻が高い。こんなマッチョなクルマを転がしてるんやで私が、とイバリ度ハンパない感じ。で、いざ乗り込んだらこのシックでノーブルな内装だもの。自ずと女子力も上がってしまいそうだ。都内ハイソホテルも堂々と乗り込める品格がただよう。

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センターコンソールに無数に存在していたスイッチ類も、欧州勢がこぞってそうであるように、時代のトレンドに合わせてか随分シンプルに集約されてスッキリした。視覚のみならず、直感的に操作出来るようなユーザビリティーの向上にも繋がっている。

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Nissan GT-R 2016
さて、もちろん刷新されたのは見た目だけじゃない。
ちょっとした段差を越えるだけでもガッチガチ、とにかく剛性!とにかくコーナリングマシン!サーキット走る時はそらええけどもやな、アンタそのへん走る時は疲れてまうやないか!みたいな様相を呈していた初代に比べ、しなやかさを程よく持ち合わせた。
それはスポイルされた、というネガティブな表現が似つかわしくない進化、いや日産いうところの"深化"を存分に匂わせる熟成だ。

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今回のモデルチェンジではさらなる剛性の向上が図られているが、単に剛性をやみくもに上げるだけでなく、前後の剛性値を同じにすることにより、サスペンションの自由度を上げるという作業が行われている。これにより、タイヤのグリップ性能を向上させるという高速走行時のメリットはもちろん、今回の一般道試乗での法定速度走行でも、恩恵は充分に発揮された。

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大きなギャップはしっとりと、小さなギャップのインフォメーションはしっかりといなし、しかし路面状況を打ち消すのではなく、どちらのインフォメーションもドライバーには仔細に伝える、という具合。コレ、ちょっとメルセデスAMG GTに似た性格。ガチガチすぎないから、ドライバーの疲労度も少ない。だけどちゃんと伝わってくるから、もっとアクセルを踏みたくなる、そんな印象だ。

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ハンドリングとアクセルフィールの相性はもう、快感のひとことに尽きる。この辺はさすがGT—R、走りへの追求はお手の物だ。

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3.8リッターV6ツインターボエンジンは20psのトルク向上を得て、ほんの踏みはじめからよく出来たNAエンジンのようにグオン!と勇ましくドライバーの背中を蹴る。そのトルクを受けて加速してゆくとき、操舵に対して至極素直なステアリングフィールが、コーナーの先に鼻先を突っ込んでいくのだから気持ちよくないワケがない。スピードとペダルワーク、そしてステアリングの切れ角のバランスがもう、絶妙に"スポーツそのもの"なのだ。すべての操作感が高い次元でシンクロしているから、まさにドライバーは意のままにコーナーをクリアできるというわけ。

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さらに今回から、パドルシフトが固定式ではなく、ステアリングと一緒に回るタイプに変更された。舵をかけているときにもシフト操作が可能になったことで、さらに運転のフレキシビリティーが向上したことも歓迎したい。

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また、先述したエクステリアデザインの変化も走行性能の向上に大きく貢献している。
フロントフェイスで作った空気の流れをサイドシルスポイラーからリアに流すのは冷却のため、Cピラーを最適化したのはタービュランスを取るため、と余念がない。

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今回のモデルチェンジでは遮音材などを増やして静粛性の向上も図ったということだが、確かに室内はそれなりに静かになった。ただ、ギアが入れ替わるときのガシャン!という響きはそのままに残された。まあ、内情を聞けばここに遮音材を入れると2〜3kgの増加になるということで、その重さを嫌ったというエンジニアリング的な裏話もあるようだけど、しかしこれは個人的には萌えポイントなので問題ナシ。きっとGT-Rを愛車に選ぶ人はみんな、ここに萌えると思うんだけどな。

Nissan GT-R 2016
GT-Rといえば、誰もがそのスペックを使い切られるかどうか、ということを話題にすると思う。しかし、有り余る570psという数字よりも、スポーツカーであるからこその剣爪鋭い走りをごく低速から味わえるということに、心から感激したのが今回の試乗。
繰り返すようだがそれにこのゴージャス内装が選べるんだからもう。やってくれましたよ、日産。ブラボー。

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そうそう、そういえば今回の試乗会では"匠"と呼ばれるエンジン職人のデモンストレーションも見せていただいた。GT-Rはエンジンを手組みで仕上げる、マイスター制が採られているのは有名な話だが、なんと、彼らの手にかかればエンジンの組み方だけで5psものアップを見込めるそうだ。

Nissan GT-R 2016 Nissan GT-R 2016
私はカムシャフトのカムとバルブヘッドのクリアランスを探る、という作業を体験させていただいたのだが、そのミクロンレベルの測定を"感覚"で測定するというのを目の当たりにした。
この「口では言えないんですけど、感覚でわかるんです」という言葉の重さに、GT-Rへの誇りが集約されているのじゃないかな、と思った次第だ。

Nissan GT-R 2016
ちなみに実際にGT-R を仕上げる"匠"は5名、以降はなんと予備軍含めて3軍まで存在するという、読売ジャイアンツ並みに分厚い選手(?)層を誇る。
なんかもう、それもすごい。

■日産公式サイト
http://www.nissan.co.jp/