VW、2019年にLNG貨物船による自動車の海上輸送を開始
大切な人を怒らせてしまって、まずい状況に陥ったことは誰でもあるだろう。例えば、家族が録画していた番組を勝手に消去したとか、自分のせいで飼い犬が逃げてしまったとか、親戚の集まりで悪酔いしたとか。いくら謝っても、相手は怒り心頭である。となると当然、その後しばらくは正反対の行動を取って、日常にバランスを取り戻そうとする。これは現在のフォルクスワーゲン(VW)がやっていることで、その相手が"全世界"というだけだ。

VWのディーゼル排出ガス不正問題が明らかになったあと、電気自動車の開発、販売店と顧客への賠償金支払い等が報道され、同社はほぼ毎月のイベントのように謝罪を行っていた。だが、信頼回復を狙ったVWの最新の取り組みは、これまでとは全く異なる。同社は自動車の運搬方法をエコ化しようとしているのだ。よりクリーンな出荷方法を模索する試みは今回が初めてではないが、我々が知る限り、自動車メーカー主導によるものはこれが初だろう。

VWは2019年以降、英国の自動車船運航船社Siem Car Carriers(SCC)の液化天然ガス(LNG)エンジンで駆動する貨物船2隻を、欧州と北米間における自動車の海上輸送に使用するという。新たなLNG船は、大西洋横断貨物船として現在VWが専用する重油船9隻のうちの2隻に取って代わるものだ。LNGを燃料に使う自動車は、主に輸送業などの企業が多くの台数をまとめて導入しているが、海洋産業ではLNGの有用性は非常に大きい。VWによれば、LNG船はそれぞれ最大でCO2(二酸化炭素)25%、NOx(窒素酸化物)30%、粒子状物質60%、硫黄酸化物100%を削減するという。実に目覚ましい数値だが、これらはVWのカーボンフットプリントにどれほど影響を及ぼすだろうか? まあ、それほど多くはないはずだ。

2隻の貨物船は各4,500台の自動車を積載可能で、VWは昨年、グループ全体で60万6,084台を北米市場で販売した。これはLNG船が米国、カナダ、メキシコで昨年売り上げた自動車を輸送するには、年間134往復が必要であることを意味する。欧州からニューヨーク市までの航海は、船員の上陸期間、メンテナンスや修理の時間、および天候による遅れを差し引いて、約10日の日数を要すると考えると、新たに利用する2隻のLNG船だけでVWグループが北米で販売する1年分の台数を輸送するとしたら7年以上かかる計算になる。

この取り組みはVWにとって全くの無駄なアピールというわけではないが、同社が世界から信頼を取り戻すには、まだ長い道のりが待っている。


By Brandon Turkus
翻訳:日本映像翻訳アカデミー