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いま日本には、アマチュアドライバーが参加できる耐久レースが沢山ある。その中でも最も大きな規模を誇るのは、軽自動車を対象とした「K4GP」、ノンライセンスレースである「アイドラーズ12時間耐久レース」、そして「もてぎENJOY耐久レース」の3つだと言われている。
さらにその中でも、JAF格式によってより安全性を高めた「もてぎENJOY耐久レース」(通称"JOY耐")に、ボクは今回とっても面白いチームで参戦した。
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そのチームとは「TOKYO NEXT SPEED」(以下TN-S)。第一線で活躍するモータージャーナリスト・石井昌道をリーダーに、同じく若手ジャーナリストである橋本洋平、そして女性モータージャーナリストである まるも亜希子の3人がプロデュースするレーシングチームだ。
そして今年はこのTN-Sが、なんとモータージャーナリストの中からドライバーを募集。JOY耐の公式練習の場を使って、オーディションを行なったのである!

その目的は明確化されていないが、ずばり「モータージャーナリストの運転技術向上」だろう。実際いまのニッポンのモータージャーナリスト界は、運転レベルの格差が激しい。もちろんジャーナリストは全員がレーシングドライバーではないから、極論すればクルマを速く走らせる必要はない。しかしクルマやタイヤの構造と特性を理解し、これを評論するうえで、クルマをきちんと走らせる技量は、絶対に必要だとはボクも常々思っていた。
そしてこれを育み、磨き続けるために、TN-Sは長年ホンダと共に続けてきた「JOY耐」の場を活用したのだ。

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ちなみにリーダーである石井は、「今回うまく行ったら、2台体制も視野に入れて、もっとモータースポーツとジャーナリストの関係を深めて行きたい」と語っていた。
この「今回うまく行ったら」が、ある意味ポイントだったのだけれど(笑)。

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そこで第1回目のオーディションに選抜されたのが、このオートブログでも起稿する島下泰久、若手として活躍する山本シンヤ、そしてわたくし山田弘樹だった。ちなみにこの3人はいずれも"走り好き"として知られ、それぞれのレース活動やレース経験をベースに、そのレポートを構築している者たちだ。
いわばある意味「普段は偉そうなこと言ってる3人」が、その実力をレースで晒すこととなったのだが......。

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レース車両は、最新型のホンダ・フィットRS(型式GK5)。これはワンメイクレースとしても開催される「Fit 1.5チャレンジカップ」の車両そのもので、その内装はロールケージが張り巡らされたレーシングトリムとなっており、レースに必要のないものは全て取り払われている。いわゆる"N1"マシンだ。
そしてこの走りは、予想以上に気持ち良く、難しいものだった。
1.5リッターの直列4気筒・自然吸気エンジンが発するパワーはたったの132ps/155Nm。しかしレース専用車両という性格からエキゾーストがストレートタイプとなっており、まずその吹け上がりがスカッーン!と心地よい。テッパン剥き出しの車内には澄んだホンダサウンドが"ビーン!"と響く。直噴ターボばかりになった現代で、これほど刺激的な自然吸気エンジンの醍醐味を、しかも小型車で味わえるのはホンダならではだ。
トランスミッションは6MT。クラッチの操作感は軽く、6500rpm+αまで回転を引っ張ってシフトアップすると、次のギアへスコーン!とノブが吸い込まれて行く。シフトダウンは、当然ヒール&トゥを使う。
その車重はロールケージを装着しながら1010kgと、ノーマルから50kgも軽量化されており、これにADVAN A050を履かせたフットワークは、極めて俊敏。コーナリングスピードはかなりの速さで、コース上にいてもこのFitが、乗り手によってはシビックやインテグラといった格上を食ってしまう高い戦闘力を持っていることがわかった。

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そんなFitでオーディションをした結果、今回は3人とも「オマケ付き」で合格となった。ホントは一発の速さが石井・橋本に遠く及ばなかったのだが「決勝は燃費しばりの走行がメインになるから、まっいいでしょ」となったのだ。
そして今回は、その中でもとりあえず一番タイムが出ていた山田が、橋本と予選をアタックすることになった。なっ...なんでオレが!? なんでもJOY耐は、A/Bドラの合算タイムが順位になるというのにっ!
そしてそこには、もうひとつ重要な役割が課せられていた。JOY耐はその参加台数が90台!という大所帯の耐久レース。ペースカー先導となるローリングスタートでは、二組に分かれてレースをスタートする。
だからレースを狙うなら、A組に入ることが絶対条件だったのだ。B組になってしまうとスタートが大幅に遅れるため、それだけで1分以上のロスになってしまうのである。

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これには焦った。ボクは練習走行から伸び悩み、タイムも想定から1秒半以上遅かったからだ。だからと言って予選になって、急にタイムが上がるなんてことはない。
実際ニュータイヤを履いた予選も、目標タイムを上回ることはできなかった。
ただこんなときも拾う神はいるもので、辛くも43位で予選をA組として通過することができた。

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こうして始まった7時間の耐久レース。作戦はエースである橋本がスタートを担当し、間で残りのメンバーが燃費走行を行う。そして最後に再び橋本が全開アタックをするという図式だった。JOY耐はアマチュアでも安全に給油ができるようにと、ガソリンスタンドで給油をしなくてはならない。その所用時間は10分と決まっており、これを計算してレースを組み立てる必要があるのだ。ちなみにFit RSは先代(EB8)よりもパワーが向上した"走り志向"で、ギア比もショートだから燃費に厳しい。
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そして、何があるかわからないのがレース。
​​​​​見事なスタートを決めた橋本は序盤で20位台にジャンプアップし快走を続けたが、3コーナーの進入でブレーキングミスしたマシンに速突されてしまったのだ。マシンは幸い操作系に異常は見られず、24周目には6位にまで上り詰めたのだが......。

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ここで29号車、TN-S 無限FIT RSにはドライブスルーペナルティの裁定が下されてしまった。レーシングアクシデントはむしろぶつけてきた側に非があるはず!と一時ピットは騒然としたのだが、原因はなんとスタート時に橋本がコントロールライン前で他車を抜いてしまったことに対するものだった(汗。
こうした小さなミスや、給油所のトラフィックにつかまって、29号車はなかなか順位を伸ばせなかった。それでも石井以下、"燃費担当"3名のがんばりで、35位で最終スティントの橋本へバトンを渡すことに。ここから橋本もがんばりを見せたが、最後の追い打ちが待っていた。
今度はピット滞在時間が短すぎ、またしてもペナルティを喰らってしまったのだ!


まさに"泣きっ面に蜂"状態でゴールを目指した29号車だったが、それでも7時間を走りきったときの爽快さは格別だった。結果は総合17位、クラス5位だった。

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優勝したのは、♯53 ガレージFK☆SPM☆ヴィッツ(古賀健二/小形憲正/金子 匠/中村一徳 組)だった。
ちなみに"燃費走り"とはいっても、それはゆっくり走ることではない。むしろ進入スピードが低くなる分、ブレーキングポイントはアタック時よりもずっと奥になる。なおかつアクセルを踏み込めない分、コーナリングのボトムスピードを落とさない走りが求められる。
そんな状況でも車重の軽いFit RSは十分な働きをしてくれた。ボクにとってはむしろこのときのオーバーステア感覚がマッチしていて、燃費を稼いだ上で想定タイムを上回ることができたから、ホッと胸をなで下ろした感じだ。

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それにしても、ローパワーなマシンでタイムを出すというのは、本当に難しい。普段スーパースポーツや最先端のクルマたちばかりを相手に評論・評価をしている山田・山本・島下の3人が、今回Fit RSの「少しのロスも許されない走り」に、大きな衝撃を受けていたのは明らかだった。
しかし!だからこそ、来年もこのJOY耐にTOKYO NEXT SPEEDの一員として参加したいと強く感じた。まさに石井センパイの狙いはドンピシャだったわけだが、「今回うまく行ったら」という条件を考えると、来年はどうなるのだろう?


ともあれこのホロ苦い経験を経て、ボクたちの原稿は、さらにシャープさを増してゆくはずである。だから今後の起稿にも、どうか注目していて欲しい。
ニッポンのモータージャーナリストたちは、がんばってます!

■ 山田弘樹
http://jp.autoblog.com/bloggers/kouki-yamada/
■ 島下泰久
http://jp.autoblog.com/bloggers/yasuhisa-shimashita/
■ホンダ 公式サイト
http://www.honda.co.jp